埼玉県高校・障害児学校教職員「九条の会」

教え子をふたたび戦場に送らないために

人権が国際的な規範に

2021-07-14 23:50:44 | 意見交流

 日本国憲法の土台として最も重視されている原理は基本的人権の尊重です。国民の基本的人権は絶対不可侵なものであり、一人ひとりの個性と価値は尊重され、この人権こそが政治の上で最大限尊重される必要があるとしています。この人権を尊重するという考え方が、今日の国際社会においても大きな比重を占めるようになっています。

 2018年10月、元徴用工の日本企業への損害賠償請求を認めた韓国大法院の判決以来、日韓関係は戦後最悪と言われる状態が続いています。日本政府はこの問題は1965年の日韓請求権協定によってすべて「解決済み」であるとの立場をとっています。これに対して、韓国の司法は原告が被った苛酷な強制労働に対する損害賠償請求は、朝鮮半島に対する不法な植民地支配に直結する日本企業の反人道的不法行為による人権侵害に対する慰謝料であるとし、これは日韓請求権協定の適用対象には含まれないとしています。

 一方、2021年1月8日、ソウル中央地裁は日本政府に対して元日本軍「慰安婦」への賠償金の支払いを命ずる判決をくだしました。日本政府は、国が他国の裁判権には服さないとする国際慣習法上のルール「主権免除」から裁判自体を無視し、判決は国際法違反だとしました。しかし、韓国の司法は重大な人権侵害の場合は「主権免除」を例外的に否定して、個人の人権救済にあたるべきだとしたのです。これは「慰安婦」を強制したことは重大な人権侵害であり、被害者の人権救済は、国家主権よりも優先すべきであるとする国際的な潮流に沿うものでした。

 「慰安婦」への賠償については、4月21日に1月とは真逆の判決が出されていますが、韓国の司法は過去の植民地支配のもとでの元徴用工や「慰安婦」の被害を、人間としての尊厳を踏みにじった反人道的な人権侵害であるとして、加害者は謝罪と賠償を行ない、被害者の名誉と尊厳を回復しなければならないとしているのです。これからの日韓関係を展望するうえで、さらには植民地支配の歴史を考えるうえでも、個人が被った反人道的な人権侵害という観点はきわめて重要です。

(現日朝協会埼玉県連会長 関原正裕)