礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

映画『終身犯』とウィルソン大統領夫人イーディス・ウィルソン

2012-06-28 05:00:23 | 日記

◎映画『終身犯』とウィルソン大統領夫人イーディス・ウィルソン

 映画『終身犯』は、獄中で鳥の研究を続けるロバート・ストラウドという囚人の話で、実話に基いているという。
 彼は、一度、絞首刑の刑が確定していたが、その後、ウィルソン大統領の恩赦によって、終身刑に減刑された。
 この映画には、ロバートの母・エリザベスが、ウィルソン大統領夫人のイーディス・ウィルソンに面会し、息子の恩赦を迫る場面がある。結果的に恩赦が実現したところをみると、夫人はエリザベスの請願を大統領に取り次いだのであろう。
 ところで、ウィキペディアによれば、アメリカの第二八代大統領(任期一九一三~一九二一)は、その在任中の一九一九年一〇月二日に、脳梗塞を発症し、一命は取りとめたものの、左半身不随、左側視野欠損、言語障害という重い後遺症が残ったという。
 映画では、大統領夫人は、エリザベスに対し、「夫は重篤の病気です」と発言していた。すなわち、エリザベスが、大統領夫人に面会したのは、一九一九年一〇月二日以降だったことになる。
 なお、同じくウィキペディアによれば、病に倒れたウィルソン大統領は、大統領としての執務をおこなうことが不可能となったが、主治医と大統領夫人はこの事実を秘匿し、以後国政の決裁は夫人のイーディスが夫の名でおこなったという。ということは、エリザベス・ストラウドに面会した大統領夫人は、エリザベスの請願を大統領に「取り次いだ」のではなく、大統領に代わって、「みずからが恩赦の決裁をおこなった」と考えるべきであろう。
 映画によると、ロバート・ストラウドの死刑が確定したのは、一九一六年六月二八日のことであった。裁判長は、「被告をレベンワース刑務所に引き渡し、一九一八年一一月八日まで独房にて拘置した後、同日、絞首刑に処すものとする」と述べている。一九一八年一一月八日という絞首刑執行日は、ウィルソン大統領が脳梗塞を発症した日より一年近く前である。エリザベス・ストラウドが大統領夫人に面会したとき、夫人が「夫は重篤の病気です」と言っていた。このとき、絞首刑の執行は「延期」の状態になっていたということか。このあたりは、映画を見ただけでは理解しにくく、いずれ調べてみたいと思っている。

6月28日に関わりがある映画

◎『終身犯』(1962、アメリカ)

 映画『終身犯』の主人公ロバート・ストラウドの死刑が確定したのは、一九一六年六月二八日のことだった。ジョン・フランケンハイマー監督の『終身犯』は、一九六二年の作品。主演はバート・ランカスター(ロバート・ストラウド)。ほかに、セルマ・リッター(ロバートの母エリザベス)、エドモンド・オブライエン(映画の原作『アルカトラズの鳥男』を書いたトム・ギャディスの役)などが出演している。考えさせられることの多い名作である。

今日の名言 2012・6・28

◎死刑は平和を願う者の敵、大統領のご心労の原因です

 映画『終身犯』の中で、死刑囚の母親が、大統領夫人に向かって投げた言葉。恩赦を願っての言葉だが、「涙の助命嘆願」でないところが、いかにもアメリカ映画らしかった。大統領夫人は当初、「大統領が減刑するとお考えですか?」と冷たかったが、母親のこの言葉にやや動揺したかのような表情を見せる。

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