礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

土佐藩の「村送票」ほか(読み方のむずかしい切手用語・その二)

2012-08-04 05:09:41 | 日記

◎土佐藩の「村送票」ほか(読み方のむずかしい切手用語・その二)

 昨日の続きである。バンビブック『切手あつめなんでも号一九五八年版』(一九五七)所収の「読み方のむずかしい切手用語」のうち、代表的なものを選んで、その意味を説明する。説明は、同じ『切手あつめなんでも号一九五八年版』所収の「切手用語辞典」より。
「円壔版」の「壔」は、原文では、土偏に寿になっている。「川支」と「消印」は、「読み方のむずかしい切手用語」には入っていなかったが加えておいた。「拇太消」は、「読み方のむずかしい切手用語」では、「拇太印」として紹介されている。

 円壔版(えんとうばん) 平らな板に製版して印刷する平面版に対し、円壔(シリンダー)の面に製版して印刷した切手のことで、日本では現行55円(マリモ)、75円(ちょう)のような多色グラビア切手が円壔版である。
 活印(かついん) 日活印(にっかついん)ともいう。郵便従業員の間で使用される言葉。日付印(にっぷいん)に同じ。
 加捺(かなつ) 手おしのはんをつかって行った加刷のこと。日本の占領地切手のマレー、蘭印(らんいん)その他にその例がある。
 川支(かわづかえ) 洪水のため郵便物の配達が遅れたことの証明として、明治初期から昭和初期までに河川大増水の場合各地で行われていた。
 官白(かんばく) 官製白はがきの略。官製はがきの料額印面に記念消印または風景印や小型特殊日付印を押したもの。これらの消印も収集の対象になる。
 消印(しょういん) 切手が一度使用されたことを示すために切手面に押す印(しるし)。これに日付印、風景印そのほか特殊消印などの別がある。一般に「けしいん」と言われているが、「しょういん」が正しい。
 墨点(すみてん) 日本手彫〈テボリ〉切手、旧小判切手、および新小判切手(1銭、2銭、5銭)にある。みほんの意味で、毛筆で菊花〈キッカ〉の御紋章の中心などに小さな点を打ったもの。
 貼用(ちょうよう) 中華民国の切手に「限〇〇貼用」(〇〇は地名、多くは省の名)と加刷されたものがある。これはこの切手はその省内に限り郵便物に貼(は)って使用できる意味である。これは通貨価値の相違などの関係でうまれた制度で、地方切手に似ているが、外国向け郵便物にも使用することができる。
 青島軍事(ちんたおぐんじ) 軍事郵便証票の一つ。旧大正毛紙〈ケガミ〉支那字入り切手3銭に、さらに軍事と加刷してあり、大正10年(1921)発行。青島で正規の軍事切手の欠乏のため局長のはからいで加刷してつくった切手。相当の珍品であるため偽造品が多いから注意を要する。
 電胎版(でんたいばん) 原版から凸凹反対のかたをとり、この面にメッキしてつくったうすい層をはがしとって、裏に地金をながしこんで版にするという方法で版をふやすやり方のこと。
 日付印(にっぷいん) 消印の一番普通なもの。局名、年月日、時刻が記されている。
 半截切手(はんせつきって) 英語ではbi-sected stamp(バイセクト切手)という。たとえば5円の切手が急になくなってこまった時に10円の切手をななめに半分に切って5円に使わせたようなものをいう。中国の福州で1903年に出した2分切手半截の1分切手が有名である。
 拇太印(ぼたいん) 日本で明治初期に使用されていた消印の一種。種々の形や記号で土地を表わしているが、土地名の頭字〈カシラジ〉1字を英語の大文字や片かなで表わしたものが多い。
 村送(むらおくり) 日本の地方切手の一つ。政府で郵便切手が発行される以前に、旧土佐藩で発行し、藩内の手紙を送るのに使用されていた。この制度を村送(そんそうとは読まない)といい、距離によって三里已下(いか)、六里已下、九里已下、十二里已下、十五里已下、十六里已上〈イジョウ〉の別があり、また公用村送、公用昼夜送があった。これらの証票を村送票という。発行は明治3年(1870)ごろであろうといわれている。使用は明治8年まで判明している。
 雪支(ゆきづかえ) 大雪のため郵便物の配達がおくれたことの証明として、明治初期に雪の多い地方で行われていた。

 とりあえず、紹介は以上にしておくが、見てわかるように、ジュニア向きとは思えない、高度な説明になっている。
 編者は、「まえがき」のところで、「日本の趣味家向きということに新味を出したというのが編者の手前みそである」と述べている。中級以上の「趣味家」を意識した自信作だったように思う。それだけに、この「編者」の名前が記されていないのが残念である。
 なお、土佐藩の「村送」の説明はややわかりにくい。つまり、種別や距離に応じて、「公用」、「三里」などと記された一種の切手(「村送票」、今日ではこれを「村送り切手」ともいうらしい)が発行されていたということである。その図像は、インターネットで見ることができるが、紛れもなく「切手」である。この「村送り切手」は、二〇一二年三月二〇日、テレビの「開運!なんでも探偵団」に登場し、使用済み二枚(「九里」と「三里」の二枚貼り)が、一四〇万円という鑑定額を付けられたという。

今日の名言 2012・8・4

◎見せかけの業績で教授になった人なんていっぱいいる

 ある大学病院関係者の言葉。昨日の毎日新聞「記者の目」欄より。元東邦大准教授の研究論文データ捏造問題を取材していた久野華代〈クノ・ハナヨ〉記者に対して、ある大学病院関係者は、「論文を書く能力がないのに名誉欲はあって、見せかけの業績で教授になった人なんていっぱいいる」と言い放ったという。戦前の長崎医科大学事件(1933)では、博士号の「売買」が、公権力の介入を招くことになった。大学関係者の自浄能力のなさは、昔も今も変わらない。再び、公権力が「大学自治」を踏みにじることになるのだろうか。

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