礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

池はどんな名で呼ばれてきたか

2024-04-28 00:59:02 | コラムと名言

◎池はどんな名で呼ばれてきたか

 末永雅雄『池の文化』(創元社、1947)を紹介している。
 このあとは、しばらく、第二章「池の景観」の第二節「池の名と伝説」を紹介してゆきたい。この節は、かなり長いので、ところどころ割愛しながら紹介することになるだろう。
 なお、{  }は、割り注を示す。

       二 池 の 名 と 伝 説

 池の名と伝説はある場合には一連を成すこともあつて、その名から池の築造成因を察知することが出来、また伝説がその池の推移や歴史事実を物語ることも尠くない。単なる水に対する或は他の環境より来る恐怖的伝説や、架空的な池の主などを取扱つた伝説なども池の名とまた相応ずることにもなる。先づ池の名はどんな風に呼び慣はされてゐるかを見たのち伝説を説くことゝする。名を分類してみると次の様に大別することが出来る。
一、地名を冠する名  狭山池 恵曇【ゑども】池 久米田池
一、地形地質から  谷山池 原池 石池
一、池の形から  桝池 鏡池 双池 細池 長池 竿池 鎌池(これらは池の平面から)
         大池 小池 摺鉢池 池皿(池の大小、岸高、水深などから)
一、位置から  上池 下池 中池 高池 奥池 前ケ池 東池 西池 
一、水質から  鏡池 清澄池 血ノ池 青池 みとり池 渋池 大浪池 
一、地質や泥から  みどろ(深泥、水泥)池 水なしの池 湧玉池(?)
一、築造年代から  天正池 大正池 明治池 新池 今池 
一、附近の地物や建築、伝説から  宮ノ池 墓辺池 明法寺池 寺池
                 親王池 盾列池 猿沢池 大館池
一、築造者から  大師池 清意坊池 坊ケ池 韓人池 唐人池
一、祭神などから  弁天池
一、池中に遺物埋没を伝へ、或は予想して  剣池 宝池 黄金池(?)
一、水中及附近の生物から  蓮池 菰池 菅池 椎井池 あしまの池 貝池 鶴亀池
一、信仰的に  神霊池 明星池 星ケ池 すがたの池 
一、池の主から  おたねが池 鬼ケ池 
一、池の性能的に  益田池 萬農池 
 右のうち最も多いのは地名をとつたものである。しかし古典にその名があつても今日その所在の知れない池もある。つぎは地形と池の形、位置などから名づけたのが相当にある。信仰や池中に遺宝が埋没してあると云ふ様な事柄やまた池に棲息する魚類を取扱つたのは非常に少い。これは後に記す今昔物語に満濃池が徒ら〈イタズラ〉な魚穫の為に荒廃の原因がつくられた話しがあつて後人を戒めてゐるが、池を大切に守つてゆくために自然とさうした方面の名や伝説が淘汰せられた結果ではないかと思ふ。延暦十九年〔800〕の太政官符に、国を益す道は務めて農に勤むるにあり、池を築くことは、もとより田に灌ぐためであるにも拘らず漁を好む猾民〈カツミン〉にしてほしいまゝに池水を排して、遂に池の水を涸渇せしむるものあるを停めてゐるのも注意されなけれはならぬ。これは単にこの時に限らずいつの世でも同様であるが、さうした意識のもとに池の名にも影響があるのではないかと考へる。古墳には金鶏や金瓦が埋められてあると云ふ伝説はあるが、池にはさうした意味の話しを持たなかつたのかも知れぬ。つぎに伝説を尋ねてみよう。尤もこれらの池の名と全然無関係のものもある。しかしまた池の名を伝説が物語るものも尠くないし、その伝説の在り方によつて池がいかに取扱はれたかを知ることにもなると思ふ。{但し本項に関する限り資料価値は史実でなく伝説を主とするから事項、地名等の点について異動があるかも知れぬそれは諒されたい。}

*このブログの人気記事 2024・4・28(8位の石原莞爾、9位の川内康範は、ともに久しぶり)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« かたわらの神社は池の信仰を... | トップ | 旅僧は久米田池へ何用かと尋... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

コラムと名言」カテゴリの最新記事