◎映画『南の島に雪が降る』(1961)を観た
八月上旬の猛暑のなか、DVDで東宝映画『南の島に雪が降る』(1961)を鑑賞した。なかなかの秀作だった。映画の舞台が熱帯のジャングルということもあって、観ている間、日本の猛暑を忘れた。
ニューギニアのマノクワリで孤立した部隊が、演劇分隊を立ち上げ、兵士たちのために、芝居を上演するという話である。敵機の来襲はあるが、戦闘場面はない。いわゆる戦争映画とは性格を異にする。しかし、戦争というものの愚かさに鋭く迫った映画であり、上質な反戦映画と位置づけられよう。
主演は、加東大介(1911~1975)。演劇分隊のまとめ役・加東軍曹(本人)を演じている。このほかに、志村喬、三橋達也、森繁久彌、有島一郎、フランキー堺といった芸達者が登場する。
観ていて、最も注目したのは、伴淳三郎(1908~1981)の演技であった。本当に、この人の演技はすばらしかった。もうひとり挙げるとすれば、西村晃(1923~1997)である。特に、劇中劇「関の弥太っぺ」の母親役がよかったと思う。
一方で、明らかに、映画の雰囲気をコワしている役者がいた。たとえば、桂小金治、三木のり平、そして渥美清。あまりに個性的というか、アクが強すぎて、役者が場面から浮き上がっていた。小林桂樹にも、少し、そういうところが感じられた。
ずっと以前に、映画の原作・加東大介著『南の島に雪が降る』(文藝春秋新社、1961)を読んだことがある。原作と映画とでは、どちらが傑作かというのは難しい質問だが、私としては原作のほうに軍配を上げたい。