礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

ちゝはゝの、にはのをしへにたがふなよ。

2021-08-02 04:29:53 | コラムと名言

◎ちゝはゝの、にはのをしへにたがふなよ。

 文部省編輯局編『読書入門』の田沼書店版(一八九五)を紹介している。本日は、その八回目(最後)。本日、紹介するのは、第三十三課から第四十課まで(二十三丁表~二十六丁裏)、および、第四十課のあとにある「いろは図」(二十七丁表・裏)である。

  第三十三課
コノ コ ハオトナシイ ヨイ コ ナリ
アノ コ ハイヂ ノ ワルイ
イタヅラ モノ ナリ
アノ コ ハワルクチ ヲ
イヘドモコノ コ ハ
クチゴタヘ モ セズ

  第三十四課
うり ことば あり とも
かひ ことば を だす な
つらし とて、 うらみ
  かへす な、 われ ひと に
 むくい\/ て
    はてし なき よ ぞ

  第三十五課
コドモ ハガクカウ ノ ニハ
ニテイマ サウレン ヲ ナス
ガクモン ト ウンドウ トハ
ダイジナ モノ ナリ
コレ ヲ オコタル トキ ハ
ヨイ ヒト ニ ナラレヌ モノ ナリ

  第三十六課
すめら みくに の ものゝふ は
 いか なる こと を か つとむ べき
たゞ み に もてる まごゝろ を
 きみ と おや と に つくす まで

  第三十七課
アレアソコ ノ キ ニ
ハナ ガ サキマシタ
ウグイス モ、 ナイ テ 井マス
ソコ ニ テフ\/ モマウテ 井マス
サア\/ミンナ 一シヨ ニ
アノ ノハラ ニ デヽ アソビマセウ

  第三十八課
てふ\/ てふ\/
  な の は に とまれ
な の は に あいたら
   さくら に とまれ
  さくら の はな の
    さかゆる みよ に
   とまれ よ あそべ
     あそべ よ とまれ

  第三十九課
アノ コ ハトヽサマ ヤ ハヽサマ ノ
ヲシヘ ヲ ヨク マモリマス
アレ ハカシコイ
ヒト ニ ナリマセウ
タレ デモオヤ ノ ヲシヘ ヲ
ワスレテ ハ ナリマセヌ

  第四十課
やまと なでしこ さま\/ に
 おの が むき\/ さきぬ とも
おほし たてゝし
 ちゝ はゝ の
には の をしへ に
 たがふ な よ

  いろは図
い ろ は に ほ へ
と ち り ぬ る を
わ が よ た れ そ
つ ね な ら む う

ゐ の お く や ま
け ふ こ 江 て あ
さ き ゆ め み し
ゑ ひ も せ す ん
読書入門 終

 若干、注釈する。第三十四課「はてしなきよぞ。」の「よ」は、「世」であろう。
 第三十五課「ガクカウ」、「サウレン」は、それぞれ、「学校」、「操練」。
 第三十六課「いかなることをかつとむべき。/たゞみにもてるまごゝろを、」は、「如何なる事をか努むべき。/ただ身に持てる真心を、」の意味であろう。分ち書きがされていなければ、意味を取ることは難しい。
 第三十八課「さかゆるみよに」は、「栄ゆる御代に」の意味であろう。
 第四十課「さま\/」の「\/」は、原文では、濁点がある。「にはのおしへ」は、いわゆる「庭訓」(家庭での教育)の意味である。「おほし たてゝし」は難解。これらはおそらく、「ちゝはゝ」にかかり、「偉大であり、尊敬してきた」といった意味だろう。ただし、そうだとすると、「おほし」は、「おほき」でなくてはならない。この点、博雅の御教示を俟つ。
 いろは図「ゑひもせす」の「も」だが、なぜか、ここだけは、横棒が二本ある。
 本書『読書入門』については、少し補足したいことがあるが、明日は、いったん、話題を変える。

*このブログの人気記事 2021・8・2(8位に珍しいものが入っています)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする