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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

IR事件は面倒くさい事件になる(佐藤優)

2020-01-22 00:54:57 | コラムと名言

◎IR事件は面倒くさい事件になる(佐藤優)

 昨日は、ニッポン放送の「ザ・フォーカス」、昨年一二月二六日放送の内容を紹介した。「元外務省主任分析官・作家」の佐藤優氏へのインタビューである。本日は、その続き。なお、この放送の内容は、二八日に、インターネット上に配信されている。以下、引用。

東京地検特捜部の本気度~広がる捜査範囲
森田〔耕次解説委員〕) そして、拘置所に帰っていくわけですね。この事件はかなり拡大して、白須賀〔貴樹〕衆議院議員と宮城の勝沼前衆議院議員に加えて、パチンコチェーンの本社も家宅捜索ということで、東京地検特捜部も本気モードということでよろしいでしょうか。
佐藤) 本気モードです。国会議員を捕まえるのは10年やっていないわけですし、贈収賄は16年ぶりですからね。これでこけたら組織の沽券に関わります。それから、警察官は正義感が強いですから、背後には「桜を見る会」や閣僚が2人も辞任したことで、野党のだらしなさや権力の緩みに危機感を感じたからでしょう。
森田) かつての巨悪に立ち向かう地検特捜部のような。
佐藤) 彼らの世界ではそうなのですよ。拍手喝采が欲しいですから、いろいろと情報をリークして。今回、逮捕状が請求されているという情報が、朝日新聞だけに逮捕される前の朝に出ているでしょう。あれはとてもヤバイ話ですよ。もしそれで逃げてしまったらどうしますか? 国家公務員法違反の情報漏えいがどこかで起きているわけでしょう。だから、筋に関しては検察筋と書かないですよね。関係者だったら弁護側かどうかわかりませんから。これは少し変なのですよ。秋元〔司〕さんを擁護するわけではないですが、報道先行のやり方は鈴木宗男事件のころに戻ったような感じですね。小沢〔一郎〕事件や石川〔知裕〕事件のときは、その辺りが非常に慎重でした。村木厚子さんの事件もありましたので、慎重になっていたのがいまはリーク先行になっています。
森田) かつてのゼネコン汚職のときに近い感じになっていますね。
佐藤) 特に朝日新聞の報道が先行しているのが非常に気になります。
森田) 安倍政権はこのIRを成長戦略の柱に据えているところもあります。
佐藤) ですから、権力内部での闘争になってくる可能性もありますよ。
森田) 中国企業がバックにいるということも、アメリカのカジノ会社と中国のカジノ会社の関係も含めると、いろいろな裏を考えてしまいますよね。
佐藤) これは掘っていくとかなり面倒くさい事件になるから、検察としてもどこかのところで歩留まりをつけなければいけなくなると思います。
森田) そして、パチンコチェーンの本社の家宅捜索というのも、これからどう広がっていくのか見通せないところがあります。
年末年始にかけて集中的な取り調べが行われる
佐藤) ですから検察としては千客万来路線で、「秋元さん、1人じゃ寂しいだろう。たくさん来るからな。部屋も空けてあるからな」という感じだと思いますよ。
森田) 〔鈴木〕宗男さんのときの佐藤〔優〕さんみたいな感じですか。
佐藤) 私の場合は逆で、私のような小物を捕まえてから親へ手を伸ばしていきました。ただ、鈴木〔宗男〕さん以外の国会議員には伸びませんでしたからね。それこそ、松岡利勝さんなどいろいろな名前は出ていたのですがね。1人だと「個人の逸脱」なのですよ。2人だと「組織犯罪」になります。2人にするかどうかで、政局に与える影響も大分変わってきます。
森田) 地検としてはこの年末年始でずっと取り調べを行ったり、押収した証拠物を分析したりして、寝ずの捜査をしていくのでしょうか。
佐藤) それと同時に、もうすぐお休みに入るでしょう。役所ですから差し入れもなくなって、面会もできません。そういったときに。ここでも本気度を感じますね。

 下線を引いたところが、特に要注意だと思う。
 IR事件に関して、佐藤氏は、検察側に、「野党のだらしなさや権力の緩みに危機感を感じた」、「拍手喝采が欲しい」と動機があった可能性を示唆している。この佐藤氏の観察があたっているとすれば、IR事件の捜査は、政府主導の国策捜査というよりは、検察主体の国策捜査ということになろう。
 また、佐藤氏は、このIR問題が、今後、「権力内部での闘争になってくる」可能性も示唆している。あくまでも私見だが、IR問題については、もともと政府権力の内部で「闘争」があって、その闘争が、今回の「国策捜査」と結びついた可能性も考えたい。
 森田耕次解説委員が、「アメリカのカジノ会社と中国のカジノ会社の関係」を示唆している点も重要である。おそらく森田氏は、今回の「国策捜査」が、アメリカのカジノ会社の意を汲んでいる可能性があると言いたかったのだろう。佐藤氏の「掘っていくとかなり面倒くさい事件になる」という発言も、「その可能性」を意識したものと思われる。
 秋元司衆議院議員の逮捕が年末になったのは、佐藤氏が指摘している通り、「もうすぐお休みに入る」からである。この年末年始の期間に、「一気に落とす」ことを考えたのであろう。しかし、さすがの検察も、「もうすぐお休みに入る」この時期を狙って、ゴーン被告が国外に脱出することは予想できなかったに違いない。

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コメント
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