ON  MY  WAY

60代を迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされ生きる日々を綴ります(コメント表示承認制です)

娘よ(8)

2013-08-02 22:39:37 | 生き方
8月2日。
午後から休みを取った。
午後からの面会可能時間に行くためだ。

娘のいる集中治療室に行くと、なんと娘が車椅子に座らされているところだった。
初めて車椅子に乗せたのだと言う看護師が続けていわく、
「そうだ、お父さん。車椅子を押してください。」
…ということで、フロア通路の数メートルを車椅子に乗せて娘と歩いた。
看護師さんは、キャスター付きのもので娘につながった点滴等や酸素ボンベを積んで一緒に歩く。
看護師さんは、外の景色を見せたかったようなのだが、車椅子から見る風景は低すぎて、高いマンションの一部とかつてNTTの電波塔だった部分しか見えない。
娘は、それよりも通路周辺のものの方が目に珍しいらしい。時にはきょろきょろと時にはぼうっとした目で見ていた。
娘がベッドを離れたのは、何週間ぶりだろう。7月は、上~中旬、ずっと昏睡状態にさせられていたのだから…。
最近は、目は覚めているのだが、手は手袋や手首のベルトで自由な動きができないでいる。
目が覚めているがゆえに、自分が自由がきかない状態にいるとわかることは、きっとつらいのではないか、と考えてしまう。
そんなこの頃だから、ベッドを離れて、車椅子に乗せてもらったというのは、うれしいことだった。
この後、ベッドに戻ると、リハビリ専門の方が来室して、ベッド上で、寄り添って娘を座らせてくれた。
そのベッド上での会話。
「あら、座るの上手だね。背中がピシッと伸びていていいわ。」
「そうだよな。もともとスポーツは得意だもんな。」
「あらそう。ねえ、何が得意なの。」
(口先で)「スポ、スポ、スポ…。」
「何が得意?」
(私に聞こえない小さな声で)「マラソン。」
これを聞き取ってくれた。
「へえー。そういえば、そんな脚しているよね。」
私はそこで帰ることにした。

夜7時、今度は妻とともに病室を訪ねると、娘は、車椅子に乗ったことは覚えているようだが、景色を見ようとしたことはもう忘れてしまっていた。

それでも、ベッドを離れた瞬間があったことに、少し希望が抱けた8月の2日目であった。
コメント (2)
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八月の空へ翔べ

2013-08-01 22:36:15 | うた
草原の白い柵に 少女の君が寄り掛かってた
新鮮な風を集めて 深く吸い込む思い出遠く
八月の空はどこまでも 続いた青い空
自然を愛する気持ちさえ 忘れていたようだ
僕は今 あの時の君に口づけた 一人の少年


今日は、午前も午後も出張だった。
午前の用務を済ませてから、コンビニで昼食を調達。
午後の出張に行く前に、エアコンのきいた車内でそれをいただいた。
NHKラジオをつけていたら、急にこの歌が流れてきた。
NSPの「八月の空へ翔べ」だ。

「八月の空へ翔べ」。
天野滋作詞、平賀和人作曲。
この曲が出たのは、1978年。
私はまだ学生だった。
この歌は、結構好きな曲だった。
いかにも空を気持ちよく翔ぶという、感じの曲だった。
繰り返し聞いたものだ。
アルバムタイトルであり、LPのB面1曲目の開放的な感じが好きだった。
「うわあ~!!!」という声を車内で叫びながら、懐かしい曲に聞き入った。
(知らない方は、YOU TUBEなどでお聴きください。)

そうか、今日から、八月なのだ。
当たり前のことに気付いた。
毎日毎日、仕事に行き、娘の心配をして夜には病院を訪ねる。そんな日の繰り返し。
毎日が、そして1週間があっという間に過ぎていく。その積み重ねでひと月の流れも早い。

今夜も、集中治療室を訪ねると、娘は、目を開けていた。…というより、しっかりわれわれ夫婦を認識していたように見えた。
相変わらず、のどに痰が詰まっているようで、咳き込んでいたけれども。
口からはっきりした声は出ないのだが、今日は少し伝えようとしていた姿があった。
言葉を口にしていたのだが、音がよく聞き取れない。口先だけを動かして、もれるような声で「120…」「となり…」などの言葉が聞き取れた。
天井を見ながらの「120…」は意味不明だったが、「となり…」は、隣に人がいるのがこわい、というようなものだったか?確かに、カーテンの向こうに男性入院患者がいるらしい。
言っている内容は、中身のよくわからないものだったとしても、言葉として聞けるものがあったことだけでもうれしく感じた。

冒頭の歌が流れたのも、今日から八月、という意味が込められていたのだろう。
「翔ぶ」くらいに、気持ちよく病状も回復するといいなあ。そうであってほしいなあ。

八月の空へ翔べ!
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