いろいろな人に元気を与える歌って、あるよね。
以前、ここでは「イノキ・ボンバイエ」の曲で元気を出していたと書いたことがあった。
ほかにも、元気が出る歌の中に、この歌がある。
それは、井沢八郎が歌った、「あゝ上野駅」だ。
どこかに故郷の香りをのせて
入る列車のなつかしさ
上野は俺らの心の駅だ
くじけちゃならない 人生が
あの日ここから 始まった
地方から東京に出てきた人間にとっては、望郷の思いがありながらも、前を向いて生きていかなくちゃ、という思いが湧いてくる歌だ。
だが、田舎から都会に出た人でなくても、この歌を聴くと、元気が出るのはなぜだろう。
「くじけちゃならない 人生が」と聴くと、「そうだ。くじけてなんかいられない。とにかく生きていかなくちゃ」と勇気が出てくるのだ。
聴くたびに元気や勇気をもらってきたこの歌を、昨夜、久々に聴いた。
テレビもつまらんものしかないから、とBS1の演歌番組を見ていたら、この曲が流れてきた。
しかも、歌っていたのは女性歌手。
それは、なんと井沢八郎の娘、工藤夕貴であった。
工藤夕貴は、かつて歌も歌っていたけれど、俳優のイメージが強い。
近年では、山ガールとして登山番組で見ることの方が多い彼女が、亡き父の大ヒット曲を歌っていることにびっくりした。
そして、その歌をあまりにもうまく歌っているので、二度ビックリした。
曲間のセリフもしっかり感情を込めて言っていた。
なぜ、彼女がこの歌を?
その疑問に応えるように、その歌番組でいきさつを語ってくれていた。
歌うきっかけは、一昨年、歌を歌いたくなって、日本歌手協会に入ることになったとき、理事長の合田道人氏から、父井沢八郎の歌を歌うのがいいんじゃないかと課題曲でもらったのが「あゝ上野駅」。
そして、昨年、日本歌手協会のステージに出て歌うと、五木ひろしが思いのほか私の歌を感動してくれたのだそうだ。
五木ひろしは、「あゝ上野駅」が発売された年に上京したから思い入れもあったらしい。
彼は、「この歌は、お嬢さんが歌い継ぐべきじゃないか」と言ってくれた。
そこから、「あゝ上野駅」とカップリング曲「父さん見てますか」を発売する運びとなって今に至っているということだ。
この「父さん見てますか」は、父井沢八郎を歌った歌で、五木ひろしが作曲し、作詞は合田氏なのだそうだ。
本音を言えば、カップリング曲には申し訳ないが、彼女が歌った「あゝ上野駅」の方が、聴きごたえがあって、すばらしい。
あの「あゝ上野駅」が、こうして発売から60年たって、まさか当時の青年歌手井沢八郎の、今や50代になった娘が歌うことになるとは、驚き以外の何物でもないなあ。
でも、それに値する名曲なんだな、やっぱり。