笑わせた人。

７月から非常勤で勤務が始まったＹ医師。
淡々と仕事をしてくれるのはいいのだが、
なんといっても無表情。
週１回だけなので、まだそんなにお会いしていないが、
笑った顔を見た事が無い。

基本、別室で待機しているので（もしくは病棟で入院患者の診察）、診察が必要になった時に呼ぶのだが、
来る時は何故か、患者が出入りする診察室の入り口から…。
あまりスタッフ（看護師）と関わりたくないのか？

一回りぐらい年上のＴさんとは、なんとなく気が合い、
人見知りの私としては珍しく、心の扉の開き具合が広くなれる人だ。
そのＴさんに、
「Ｔさん。今度Ｙ先生の事、笑わせてくださいよ。」と持ちかけてみた。
Ｔさんも
「ええっ？無理だよ。せめて、クスッ、って笑わせるくらい？
そうしたら、目の前でヘマしてみる？」
とノリノリ。
私は
「いやいや、ああいうタイプの前でヘマしたら、逆に白い目で見られちゃいますよ。」
Ｔさん「そうかぁ…。」

と、２人して大盛り上がり。
密かに「Ｙ医師に笑顔を！」というプロジェクトチームが発足された。

少しして、Ｙ医師に処置の介助をして欲しいと言われ、
私は就く事になった。

患者さんは７０代くらいの女性。
メスを使って切ったりと、やや大掛かり。
それなりの時間が掛かるのは予想されていたが、
意外や意外。
Ｙ医師はその女性と話をしながら処置をしている。
まぁ。しゃべるのね。

その女性は、怪我したり嫌な事が続いているそうだ。
「細木○子でいう、大サッ界ていうの？今年はそれに入っちゃったからね。
嫌な事、ホント続くのよ…。」

すると「大サッ界」に心を惹かれたのか、
なんと、




Ｙ医師は、クスッと笑いながら、
「大サッ界ってなんですか？」
と話を広げたではないか。

てか、何？笑えるじゃん。

まぁ、私の立ち位置からは、正面から見えた訳ではないが、
確かに顔がほころんだのだ。
あぁ、Ｔさんにも見せたかったなぁ。

無表情な医師の笑顔を引き出したのは
取っ付きにくい医師に対しても物怖じしない、
70歳代の女性だったのである。
素晴らしい。

こうして、
「Ｙ医師に笑顔を！」プロジェクトは呆気なく終了したのである…。


あ、でも、Ｔさんはまだ見てないか。
来週がちょっと楽しみ。