Sbagliando si impara. (間違うことで人は学ぶ。)

イタリア語の勉強に、nonna ひとりでフィレンツェへ。自分のための記録。

「占(うら)」 木内昇

2022年10月09日 | 読書
ー 好きな男の心が知りたくて占いジプシーを止められない翻訳家。
適当に答えた恋愛相談で人気の「千里眼」になってしまったカフェーの会計係。
 ご近所の家庭事情を双六盤に仕立てて我が家の幸せをかみしめる主婦・・・・・ 
人が占いの果てに見つけるもの、それは自分自身かもしれない。ー
                            (帯より)

      


女性を主人公にした7つの短編集からなっています

「時追町の卜い家」
好きな人の気持ちが知りたくて、納得のいく答えを求め、占い師を訪ね歩く女性の
話し。。あなたの歩む道は、あなたが選ぶしかないと言われた主人公。
さて、選ぶことが出来たのか? 選んだのでしょうか。

「山伏村の千里眼」
カフェーのレジ係の仙子の千里眼が評判になり、多くの人の悩みを聞くうちに彼女自身
の気が滅入ることが増えていく。 以前の自分のように、いるのにいない人として、誰に
も見咎められず、誰からも崇められない元の生活に戻れるのでしょうか。
 
 執着を持つから、人は不幸になる。くだらない執着を手放せば、誰しも幸せになれる。
 女たちは、真実を知りたいのではなく、自ら望む答えを聞きたいだけなのではないか、
という考えに仙子は行き着いた。 その通り!!  占いとはそんなもの!

時には諦めること、手放すことで気持ちを収めることが出来ると私も思っています。

「頓田町の聞奇館」
翻訳家に英語を教わりに行った友枝は、仏壇に飾られた翻訳家の祖父の若い頃の写真に
魅了され、口寄せ師にこの写真の男性を呼び出して貰うことに。
呼び出された男性は友枝の理想通りの人だったのでしょうか、、、

この英語の先生である翻訳家は「時追町の卜い家」の主人公では? 繋がってる~~♡

「深山町の双六堂」
自分のよすがとなるべき場所をはっきりと信じることができないで、他の家と比べて
一喜一憂することで生きる実感を得ている主婦たち。

身近にどこにでもある、ある意味恐いお話しでもありましたが、他人を妬むわけでもなく
ただ自分の安心感をほんの少し得たいだけで、読んでいて救われました。

「宵待祠の喰い師」
主人公綾子は男尊女卑の時代に薬剤師として働き、女であり、優秀でもあることで男たち
に煙たがれていた。
そんな中、大工頭の父が急死し、家業を引き継ぐことになり、「家も人も大事に残す」と
いう仕事上での父の理念に囚われ、問題従業員に悩むことに。
そこで美貌の青年の喰い師に、問題従業員への憤りをすべて出し尽くします。

「人が人に対して憤りを感じるとき、個々が大切にしているものの相違が原因となっている
ことがおおかたなのだ」と言われ、父の理念をそのまま受け継ぐことで綾子はいらぬ苦しみ
を生んでいたことに気づいたのです。

最後に綾子と腹に据えかねる大問題人物との会話に、すっきり!!! 私もストレス解消!

「鷺行町の朝生屋」 
鷺行町の朝生屋の画家朝生が描いた遺影は、写真以上にその人の生きた姿を写していた
がために、あっちに渡らないで、画をまとって魂が生き直すことで起こる切なくも怖ろ
しい怪談話し。

「北聖町の読心術」 
好きな人の元婚約者のことで、疑心暗鬼になって深みにはまり、自分で勝手に不安を作り
出して、突然相手にすべてをぶつけて、破局した不幸上手な主人公。
相手の過去に囚われることは、まったく意味がないのに、現実ではない妄想に振り回され
た哀れな話。 初めて、しかも素敵な人と相思相愛になれたのに自分に自信がなかった
ために、起こった悲劇でもあったと思います。 
この物語に「山伏村の千里眼」の主人公が最後の最後に絡んで来てました。

相手を信頼し、自分をしっかり持っていれば幸せにいられることや、過去にいつまでも
拘っていたなら前にも進めない、そして時には自然の成り行きに任せることも必要な事
などを教えられました。  

木内昇さんの小説 は優しさを感じる文章で書かれ、最後には心地よくさせてくれます。



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