Sbagliando si impara. (間違うことで人は学ぶ。)

イタリア語の勉強に、nonna ひとりでフィレンツェへ。自分のための記録。

「老害の人」

2023年02月21日 | 読書
「昔話に説教、趣味の講釈、病気自慢に孫自慢。そうかと思えば、無気力、
そしてクレーマー。」  
  双六やカルタの製作販売会社・雀躍堂の前社長・戸山福太郎は、娘婿に社長を譲って
  からも現役に固執して出勤し、誰彼かまわず捕まえては同じ手柄話をくり返す。
  かれの仲間も老害の人ばかり。素人俳句に下手な絵をそえた句集を配る吉田夫妻に、
  「死にたい死にたい」と言い続ける春子など、”老害五重奏”は絶好調。
  「もうやめてよッ」福太郎の娘・明代はある日、たまりかねて腹の中をぶちまけた。
  (本の帯より)
        

ただの「老害の人」ではありません。「老人が老人のために、老人を励まして生きる気力
を与える老人になる」という決心のもと活動を計画する後期高齢者85歳の福太郎さん。
この人が☟福太郎さん! 周囲の人にとっては、最強の「老害の人」。
    

家族たちに老害カルテットと呼ばれている、「昔の自慢話パート」の福太郎、
「病気自慢パート」の竹下勇三76歳、「体力自慢パート」90歳の吉田武、
夫のパートに和音を重ねる吉田の妻桃子「趣味自慢」87歳。
でも、憎めない元気な後期高齢者たちなんです。

そこに、食欲なくてすぐ死ぬのと言っては完食する、かまってほしい春子が加わって、
老害クインテットに。  
最終的には、縁あって知り合った公民館館長の名刺を持つ村井サキ79歳が「クレーマー
パート」で参加。めでたく老害六重奏(セクステット)に。(←勝手に命名しました)  
この楽しいアンサンブルに、私も「お節介パート」でぜひ参加させて欲しい~(^^)/
と思うほど、老害どころか前向きな模範的老人にエールを送りたい~~♡

何でも個性、個性という世の中なら「老害も個性だ」と福太郎さん! 正論です✨ 
空気感染はコロナだけでなく、ジジババも感染すると強気のサキさんは、「教育」では
なく「今日行く」、「教養」ではなく「今日用」と。知らなかった!!
老害六重奏役目が人を生かすと「老人による老人のための再生復活プロジェクト」
を立ち上げ、準備を進めますが2度の緊急事態宣言に・・・。

もとに戻ってただの老害の人になるのかと心配しましたが、コンマスの福太郎さんは
違いました!
「老人が、老人のために老後を尽くすという姿勢こそ、高齢化社会の新しい生き方」と。

おかしいだけでなくテンポ良いストリーで、大笑いしながら読みました。
後期高齢者になるのも面白いものかもと楽しみになりました(^_-)~*

「老害は若い人には迷惑で、老人には生きてる証。
世の中で、一番つまらないのは『毒にも薬にもならない人間』だと娘婿純市に教えられた。
老害は、若い人には毒だけれども老人には薬。老害は毒にも薬にもなってる
一挙両得。」と 福太郎! ご立派!

「『老人が若い者に遠慮することはねえンだよ』福太郎はそう思い、会心の笑みを浮かべて
風呂場のドアを開けた。」

今から、テレビドラマ化の終わりのシーンがはっきりと目の前に浮かびます。
ベストラスト!! ヨッ! 脚本家内館牧子!!!

「太陽諸島」多和田葉子

2023年02月06日 | 読書
「地球にちりばめられて」「星に仄めかされて」に続いての第3弾を、多和田さんは
どのように物語を展開し、はたまた転回していくのか。期待を持って読みました。
       

「響きあう言葉とともに 地球を旅する仲間たちの行方はーーー。
 国境を越えて人と人をつなぐ、新しい時代の神話
  ヨーロッパで移民として生きるため、自家製の言語(パンカス)をつくりだした
  Hirukoは、消えてしまった故郷の島国を探して、仲間たちと共に船の旅に出る。
  一行を乗せた船はコペンハーゲンからバルト海を東へ進むが、沿岸の港町では
  次々と謎めいた人物が乗り込んできてーーー。」  (本の帯より)

国籍、人種、性別、言語の異なる6人がコペンハーゲンを出港し、バルト海を東へ移動します。
都市の名前を載せた地図は、方向音痴である私の手助けになりました。
      
Hirukoの生まれ育った島が本当に消えてしまったのかどうかを確かめる旅でしたが、
途中で目的さえもあやふやに。

佐渡島、長崎、新潟、福井、シガ、出島等々の地名は出てくるが、
「日本」という国名は第3弾でも出てこない。
「日本」ではない? やはり、私の推測間違いなのか、何か意図でもあるのか。
そういえば、「海にいるから、国境はない」。「たとえ、国がなくなっても町はなく
ならない」と。  「日本」という国はひょっとして、、😔 

海の上という国境のない船上で、異文化や言語の議論が交わされる中でも、多和田さん
の「言葉遊び」が飛び交う。出た~~♡って感じでワクワク。
でも、今回は正当な「ことばあそび」が多かったように思ったのですが・・・。
「5 7 5」でHirukoはお喋りしますが、相手は気付いたかどうか。

また、物語の中ではたくさんの言語が飛び交います。
自然に発生したHirukoの手作り言語「パンスカ語」、「デンマーク語」、「独語」、
「仏語」、「英語」、「日本語」が感情によって入れ替わり、言語によって1人の
人間の思考にも影響を与えていることが面白いところでした。

ポーランドで生まれた「エスペラント語」の話しもありました。
世界共通語として作られた人工語として、一時日本でも騒がれました。
この人工語も生きた人間に使われることで変化してきたと、議論されていました。
どのように変化したのか興味深い話しで、調べて見たくなりました。
でも、そもそもエスペラント語を学んでない!

「『くに』に帰りたいのではなく、一体どうなったのかが知りたいだけ。
漢字の国がいつの間にかひらがなの『くに』になっていた。みんなといっしょに、あの
くにを訪れた時、あのくには懐かしさの中に失われたものではなく、計り知れない未知に
変貌しているだろう。」

「計り知れない未知に変貌」なんて、どう解釈したら良いのでしょう。
放射能汚染水を海に捨てる話しも語られており、
社会問題、環境問題を物語風にサラッと語っているだけに、余計に心がざわつきます。

「ディナーには参加する。それまで邪魔するな。ドアをノックするなよ。」
Susanooの台詞、どこかで耳にしたような。 Susanooが絡む神話「天岩屋戸」??

サンクトペテルブルク、都市と結婚するはずだったのに上陸できなかった女性「プリンス・
ベーニュ(櫛)」は、「クシナダヒメ」だったとか、彼女が一緒だと安全だとか、昔々の
神話的な話しがひょっこり出て来て、油断してるとストーリーが読めない!
クシナダヒメはどうやらSusanooの婚約者でもあるようで、八岐大蛇の神話の登場人物と
重なります~。

「家になる,わたし自身が、家になる」とHirukoは宣います

『明日のことが分からなくても、わたしたちはまだこのまま一緒に旅を続けていくことが
できそうだった。』

何も分からないままに、何事も解決せず、あやふやなままに第3弾も終わり、まだまだ、
多和田さんは、たどり着く保証もないHirukoの「くに」に6人を旅立たせたのでした♡