Sbagliando si impara. (間違うことで人は学ぶ。)

イタリア語の勉強に、nonna ひとりでフィレンツェへ。自分のための記録。

久々のblogは直近読んだ本から

2023年08月26日 | 読書
「この希有な旅人のことを、どうしても書きたい」
  『深夜特急』の沢木耕太郎が激しく共鳴し描く、大型ノンフィクション
第二次大戦末期、中国大陸の奥深くまで「密偵」として潜入した日本人がいた。
彼、西川一三の旅も長かったが、その彼を描こうとする私の旅も長かった。彼に
会ったのを発端とし、書き上がったときを終結とすれば、発端から終結まで二十五年
かかったことになる。 (帯から)

 
西川一三を書く。
しかし、その彼が自らの旅について記した『秘境西域八年の潜行』という書物が
ありながら、あえて彼の旅を描こうとするのはなぜなのか。
 私は、何度も、そう自問した。
 そして、やがて、こう思うようになった。私が描きたいのは、西川一三の旅その
ものではなく、その旅をした西川一三という希有な旅人なのだ、と。
                              (「あとがき」より)
     

「西川一三」は満州から出発。移動は基本的に徒歩、最後にインドに入ってからは
やっと鉄道や車も利用出来ましたがーー。
行程はほぼ上図の赤線になりますが、様々な事情から零下の積雪地帯、砂塵の砂漠等
あちこちで行きつ戻りつを繰り返す過酷な旅を敢行することになります
密偵という業務を超えて、西川自身に比類ない冒険心があったことに注目、感動した
冒険作家、沢木耕太郎が渾身の熱量を注いで書き上げた作品となっていました。

☆☆☆  ☆☆☆ ☆☆☆  ☆☆☆    

「70歳からの軽やかな暮らし」 石黒智子
  木漏れ日のように  ささやかな幸せを大切に
    何気ない日常を続けるための合い言葉は「こまめ」「こぎれい」「こざっぱり」
 石黒さんの70代はなんだか楽しそう!!  (帯より)

石黒さんが「亀の子スポンジ」のパッケージのデザインしたとは知りませんでした!
しかもデザイン大賞まで貰っているとは。 
「亀の子スポンジ」は私も使ってますョ~。
スポンジながら思いのほか丈夫で、いろいろ種類も増えました!

題名から想像していた内容とは少し違いましたが、彼女が使う生活雑貨等もたくさん
紹介されていて楽しく気楽に読めました。
要するに、持ち物すべて必要数を絞り、例えばボールの代わりに深皿を利用するなど、
とにかくシンプルに、シンプルに生活をするということが書かれていたと思います。
一番、へ~ぇと思ったのが、エアコンなしの生活!
神奈川県在住のようですが、、、今年の夏はどうだったのでしょうか?(2023/4初発行)
ゆったりと軽やかで素敵な生活を真似て見たい~~♡           

「よその島」井上荒野

2023年05月22日 | 読書
  日常がサスペンスに変わる__  
  「殺人者」の存在を知ったから
    この島で、過去と現実は溶け合い、やがて謎が解けたとき、
    景色はがらりと反転する。

離れ島へ移住を決めた芳郎と蕗子、そして夫妻の友人・野呂。
人生の終盤で実現した共同生活の滑り出しは順調に見えるが、三人はそれぞれ不穏な
秘密を抱えており・・・・・。
おいそれとは帰れないこの場所で、彼らは何を目にし、何を知るのか___。
  長く年月を共にしても、一緒には辿り着けない場所がある。
  人は、自分にだって嘘を吐くのだから。          (帯より)
   

      

夫の不倫相手を殺した妻と夫の関係に違和感がいっぱい。
その上に夫婦の共通の友人や住み込みで働く子連れの若い女性が加わり、謎で溢れそうな
ストーリー。
関係が絡み、憶測も膨らみ、理解の程を修正しながら読んでも謎だらけ。
三人の主の登場人物自身も自ら色々と憶測し、自身の不安を煽る。
過去に飛び、現在と交差し何が何やら、どこまでが現実で真実か、読者もその渦の中へ。

青い乳母車、双子の子ども、赤いパラソル、幻想か夢か、遠い過去か現実か、私の頭の中も
霞んでいく。

最後まで読むと悲しくも優しい現実が見えて来た。
いつか、何が事実で何が事実ではないのか見失っていくことに誰しもが気付く。

現実の「離れ島」ではなく、「よその島」に住んでいるのは、、、
「よその島」、、やさしい、救われる言葉に感じた。


「透明な螺旋」

2023年04月04日 | 読書
「ガリレオの愛と哀しみ  
  愛する人を守ることは罪なのか。シリーズ最大の秘密が明かされる。
 房総沖で男性の遺体が見つかった。失踪した恋人の行方をたどると、関係者として
 天才物理学者の名が。草薙は、横須賀の両親のもとに滞在する湯川学を訪ねる。」
                                 (帯より) 
     
秋田県のある小さい村から、高校を卒業した女性が千葉の紡績工場へ就職し
「矢野弘司」と偶然出会うことから始まった.
裕福ではなかったが幸せだった中、出産間近で弘司が脳出血で死亡。
彼女は働いていた紡績工場の近くの児童養護施設の門に、手作り人形とともに置いた。 

小説の中にはその女性の名前は書かれていない。
ただ、「彼女」とだけ書かれてストーリーは始まった。

時は経ち、そこからミステリーが始まる。
登場人物の誰が「彼女」なのか?
真実は、また本当の血の繋がりは必要か? 
寂しい不幸な女性たちが生きるためには、過去はいらない。
今を生きていることが一番大事で、生きているそのものが真実ではないでしょうか。

でも、最後まで真実を読み取る事が出来ず、過去は大事ではないと
言いながらも、、、あ~~~! 真実が、関係性が~、知りたい!!!       

「老害の人」

2023年02月21日 | 読書
「昔話に説教、趣味の講釈、病気自慢に孫自慢。そうかと思えば、無気力、
そしてクレーマー。」  
  双六やカルタの製作販売会社・雀躍堂の前社長・戸山福太郎は、娘婿に社長を譲って
  からも現役に固執して出勤し、誰彼かまわず捕まえては同じ手柄話をくり返す。
  かれの仲間も老害の人ばかり。素人俳句に下手な絵をそえた句集を配る吉田夫妻に、
  「死にたい死にたい」と言い続ける春子など、”老害五重奏”は絶好調。
  「もうやめてよッ」福太郎の娘・明代はある日、たまりかねて腹の中をぶちまけた。
  (本の帯より)
        

ただの「老害の人」ではありません。「老人が老人のために、老人を励まして生きる気力
を与える老人になる」という決心のもと活動を計画する後期高齢者85歳の福太郎さん。
この人が☟福太郎さん! 周囲の人にとっては、最強の「老害の人」。
    

家族たちに老害カルテットと呼ばれている、「昔の自慢話パート」の福太郎、
「病気自慢パート」の竹下勇三76歳、「体力自慢パート」90歳の吉田武、
夫のパートに和音を重ねる吉田の妻桃子「趣味自慢」87歳。
でも、憎めない元気な後期高齢者たちなんです。

そこに、食欲なくてすぐ死ぬのと言っては完食する、かまってほしい春子が加わって、
老害クインテットに。  
最終的には、縁あって知り合った公民館館長の名刺を持つ村井サキ79歳が「クレーマー
パート」で参加。めでたく老害六重奏(セクステット)に。(←勝手に命名しました)  
この楽しいアンサンブルに、私も「お節介パート」でぜひ参加させて欲しい~(^^)/
と思うほど、老害どころか前向きな模範的老人にエールを送りたい~~♡

何でも個性、個性という世の中なら「老害も個性だ」と福太郎さん! 正論です✨ 
空気感染はコロナだけでなく、ジジババも感染すると強気のサキさんは、「教育」では
なく「今日行く」、「教養」ではなく「今日用」と。知らなかった!!
老害六重奏役目が人を生かすと「老人による老人のための再生復活プロジェクト」
を立ち上げ、準備を進めますが2度の緊急事態宣言に・・・。

もとに戻ってただの老害の人になるのかと心配しましたが、コンマスの福太郎さんは
違いました!
「老人が、老人のために老後を尽くすという姿勢こそ、高齢化社会の新しい生き方」と。

おかしいだけでなくテンポ良いストリーで、大笑いしながら読みました。
後期高齢者になるのも面白いものかもと楽しみになりました(^_-)~*

「老害は若い人には迷惑で、老人には生きてる証。
世の中で、一番つまらないのは『毒にも薬にもならない人間』だと娘婿純市に教えられた。
老害は、若い人には毒だけれども老人には薬。老害は毒にも薬にもなってる
一挙両得。」と 福太郎! ご立派!

「『老人が若い者に遠慮することはねえンだよ』福太郎はそう思い、会心の笑みを浮かべて
風呂場のドアを開けた。」

今から、テレビドラマ化の終わりのシーンがはっきりと目の前に浮かびます。
ベストラスト!! ヨッ! 脚本家内館牧子!!!

「太陽諸島」多和田葉子

2023年02月06日 | 読書
「地球にちりばめられて」「星に仄めかされて」に続いての第3弾を、多和田さんは
どのように物語を展開し、はたまた転回していくのか。期待を持って読みました。
       

「響きあう言葉とともに 地球を旅する仲間たちの行方はーーー。
 国境を越えて人と人をつなぐ、新しい時代の神話
  ヨーロッパで移民として生きるため、自家製の言語(パンカス)をつくりだした
  Hirukoは、消えてしまった故郷の島国を探して、仲間たちと共に船の旅に出る。
  一行を乗せた船はコペンハーゲンからバルト海を東へ進むが、沿岸の港町では
  次々と謎めいた人物が乗り込んできてーーー。」  (本の帯より)

国籍、人種、性別、言語の異なる6人がコペンハーゲンを出港し、バルト海を東へ移動します。
都市の名前を載せた地図は、方向音痴である私の手助けになりました。
      
Hirukoの生まれ育った島が本当に消えてしまったのかどうかを確かめる旅でしたが、
途中で目的さえもあやふやに。

佐渡島、長崎、新潟、福井、シガ、出島等々の地名は出てくるが、
「日本」という国名は第3弾でも出てこない。
「日本」ではない? やはり、私の推測間違いなのか、何か意図でもあるのか。
そういえば、「海にいるから、国境はない」。「たとえ、国がなくなっても町はなく
ならない」と。  「日本」という国はひょっとして、、😔 

海の上という国境のない船上で、異文化や言語の議論が交わされる中でも、多和田さん
の「言葉遊び」が飛び交う。出た~~♡って感じでワクワク。
でも、今回は正当な「ことばあそび」が多かったように思ったのですが・・・。
「5 7 5」でHirukoはお喋りしますが、相手は気付いたかどうか。

また、物語の中ではたくさんの言語が飛び交います。
自然に発生したHirukoの手作り言語「パンスカ語」、「デンマーク語」、「独語」、
「仏語」、「英語」、「日本語」が感情によって入れ替わり、言語によって1人の
人間の思考にも影響を与えていることが面白いところでした。

ポーランドで生まれた「エスペラント語」の話しもありました。
世界共通語として作られた人工語として、一時日本でも騒がれました。
この人工語も生きた人間に使われることで変化してきたと、議論されていました。
どのように変化したのか興味深い話しで、調べて見たくなりました。
でも、そもそもエスペラント語を学んでない!

「『くに』に帰りたいのではなく、一体どうなったのかが知りたいだけ。
漢字の国がいつの間にかひらがなの『くに』になっていた。みんなといっしょに、あの
くにを訪れた時、あのくには懐かしさの中に失われたものではなく、計り知れない未知に
変貌しているだろう。」

「計り知れない未知に変貌」なんて、どう解釈したら良いのでしょう。
放射能汚染水を海に捨てる話しも語られており、
社会問題、環境問題を物語風にサラッと語っているだけに、余計に心がざわつきます。

「ディナーには参加する。それまで邪魔するな。ドアをノックするなよ。」
Susanooの台詞、どこかで耳にしたような。 Susanooが絡む神話「天岩屋戸」??

サンクトペテルブルク、都市と結婚するはずだったのに上陸できなかった女性「プリンス・
ベーニュ(櫛)」は、「クシナダヒメ」だったとか、彼女が一緒だと安全だとか、昔々の
神話的な話しがひょっこり出て来て、油断してるとストーリーが読めない!
クシナダヒメはどうやらSusanooの婚約者でもあるようで、八岐大蛇の神話の登場人物と
重なります~。

「家になる,わたし自身が、家になる」とHirukoは宣います

『明日のことが分からなくても、わたしたちはまだこのまま一緒に旅を続けていくことが
できそうだった。』

何も分からないままに、何事も解決せず、あやふやなままに第3弾も終わり、まだまだ、
多和田さんは、たどり着く保証もないHirukoの「くに」に6人を旅立たせたのでした♡