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安重根の評価にうかがえる菅首相(自民党政権)の歴史認識とその思想

2024-08-31 14:33:49 | 菅首相

 2014年1月19日、中国黒竜江省ハルビン駅に「安重根記念館」が開館した。韓国大統領・朴槿恵氏が前年の13年6月、中国国家主席習近平氏に対し記念碑設置を要望したのに応えて作られたものだ。記念館はハルビン市政府と国鉄当局が出資し駅の貴賓室に作られた。また、暗殺現場が起きた駅ホーム上には、「安重根が伊藤博文を銃で撃ち殺した事件が発生した場所」という中国語文と事件の日付(1909年10月26日)を示したプレートが掲げられた。 

 「安重根」という人物は、韓国では神聖天皇主権大日本帝国からの侵略を排除し独立を目指した英雄的運動家と評価されており、ソウルの南山公園に「安重根義士記念館」を建設(1970年10月27日開館)ている。というのも「大韓帝国」に対し植民地化を推し進めるために「日韓議定書」(1904年)、「第1次日韓協約」(1905年)につづけて「第2次日韓協約」(1905年、外交権を接収)を押し付け、「韓国統監府」を設置し、初代統監にもなった伊藤博文を暗殺し、植民地化への動きを阻止しようしたからである。

 抵抗せず逮捕された安重根は検察官の尋問に伊藤博文銃殺に対し15の理由(伊藤博文の罪悪15か条)を答えていた。それは、

1、韓国の閔妃明成皇后(第14代国王高宗の妻)を殺害(1895年)した事。

2、大韓帝国の初代皇帝光武(高宗)皇帝を廃位させた罪。

 光武皇帝(高宗)は1907年、第2回万国平和会議に密使を送り大日本帝国政府の侵略を訴え独立回復を提訴しようとしたハーグ密使事件で退位させられた。

3、第2次日韓協約と第3次日韓協約(1907年。内政権を接収)を強制締結した罪。

4、独立を要求する無辜の大韓帝国民を虐殺した罪。

5、政権を強制的に政権を強制的に奪い、統監政治体制に変えた。

6、鉄道、鉱山産業と農地を強奪した罪。

7、日本が第一銀行貨幣を強制的に使用して、大韓帝国の経済を撹乱した罪。

8、大韓帝国軍隊を強制的に解散した罪。

9、民族教育を妨害した罪。

10、大韓帝国民の外国留学を禁止し、植民地化した罪。

11、大韓帝国の歴史を抹殺し、教科書を押収して焚焼した罪。

12、大韓帝国民が日本の保護を望んでいると世界に嘘を広めた罪。

13、現在大韓帝国政府と神聖天皇主権大日本帝国政府との間には争いが絶えないが、大韓帝国は太平無事であるかの如く天皇を騙した罪。

14、大陸侵略によって東洋平和を破壊した罪。

15、日本天皇の父太皇帝を殺害した罪。

という内容である。

 1910年2月7日から始めた関東都督府高等法院裁判は1週間後の14日、「死刑」を言い渡し、同年3月26日午前10時には絞首刑に処した。

 安重根は「伊藤殺害は韓国独立戦争の一部であり、また私が日本の法廷に立つようになったのも戦争に敗れて捕虜になったからである。私は個人の資格でこの事を決行したのではない。大韓帝国義軍参謀中将の資格で祖国の独立と東洋平和のために実行したのであるから『万国公法』によって処理すべきである」と主張した。

 しかし、事件が帝政ロシアの租借地域で起きているし、安重根は大韓帝国民であるにも関わらず、大日本帝国政府は日本刑法により裁判を行使した。また、外国人弁護団を認めず、大日本帝国政府が一方的に日本人官選弁護人を指名して裁判を進めた。さらに、被告の発言権を封鎖した状態で速決した。

 神聖天皇主権大日本帝国政府がこのように扱った安重根を、中国政府と大韓民国政府が記念館を設立して顕彰する行為に対し、首相は、官房長官時代にどのような発言主張をしていたのだろう。そこには菅氏の歴史認識や思想が明確に顕わになっている。

 2013年11月19日の記者会見では「中国・ハルビン駅で安重根が伊藤博文を暗殺した現場を示す碑を設置する動きについて、『我が国は安重根を犯罪者と韓国政府に伝えている。このような動きは日韓関係のためにはならない』と主張した。

 これに対し趙泰英・韓国外交省報道官は同日の定例会見で「日本の帝国主義時代に伊藤博文がどんな人物だったのかを振り返れば、官房長官発言はありえない」「安重根義士は我が国の独立と東洋の平和のために命を捧げた」と非難指摘した。

 2014年2月4日には安倍自公政権は、「記念館が建設された事は遺憾」「安重根は伊藤を殺害し、死刑判決を受けた人物と承知している」とする答弁書(新党大地・鈴木貴子衆院議員の質問書へのもの)を閣議決定した。

 2014年5月9日の菅官房長官の記者会見では「前世紀の事件について、一方的な評価に基づいた主張を韓国と中国が連携して国際社会に展開するような動きは、地域社会の平和と協力の構築に資するものではない」と批判した。

(2020年10月12日投稿)

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河野外相、元徴用工問題で韓国政府に「無礼だ」:この対応は戦前の近衛文麿内閣の政府声明と同質

2024-08-31 10:23:53 | 朝鮮問題

 韓国に対して安倍自公政府が半導体材料の輸出規制に踏み切った大きな理由を、当初、「元徴用工問題の解決策が韓国政府から示されなかったから」(世耕弘成経済産業相)としたが、最近は「輸出管理の適切な運用に必要な見直し」(同)であると前言を翻している。

 2019年7月19日には、河野太郎外相が、南駐日韓国大使を外務省に呼びつけ抗議した。南氏に対する発言には「韓国が国内(大法院)の判決を理由に国際法違反の状況を放置しておく事は国際的にも許されない。」というものがあり、これは韓国政治の三権分立の原則を無視した発言である。このような発言を可能とする背景には、安倍自公政府が日本国内における司法権の独立を(三権分立の原則)をすでに形骸化させる事に成功している状況が存在するが、そのような政治体制づくりを韓国政府にも強要するものであるといえる。そして、「韓国政府が今行っている事は第2次世界大戦後の世界秩序を根底から覆すものに等しい」とみなす発言をした。このような攻撃をかける事によって、文在寅政府を瓦解させ、安倍自公政府にとって(合衆国政府にとっても)都合の良い新しい韓国政府を成立させようとしているのである。つまり、現在安倍自公政府が行っている事は文在寅政府破壊工作と考えるべきなのである。文在寅政府は安倍自公政府と米国政府にとっては極めて都合の悪い政府であるという事なのである。

 さらに、河野太郎外相は、南氏が、日韓企業が資金を出し合う韓国側の案に触れると、その言葉を遮り語気を強めて韓国側の提案はまったく受け入れられない事は以前に伝えている。それを知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だ」と、メディアの前で「侮蔑」(メディアの報道は「叱責」と表現しているがそれは実態を伝えていない)した。この「侮蔑発言」は、敗戦までの神聖天皇主権大日本帝国政府が発した傲慢な発言と同質である事も確認しておこう。その典型は、1937年8月15日に近衛文麿内閣が中華民国政府に発した政府声明「暴戻支那の膺懲(乱暴で道理をわきまえない中国をこらしめる)」というものであり、この声明は事実上、日中全面戦争の「開戦宣言」となった。

(2019年7月27日投稿)

 

 

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