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学徒出陣をどのような経緯で決定したのか

2024-08-22 21:24:49 | アジア・太平洋戦争

 「学徒出陣」とは、神聖天皇主権大日本帝国東条英機内閣(1941.10.18~1944.7.18)が、1943年10月2日に公布、即日施行した、「在学徴集延期臨時特例」(勅令755号)に基づき、理工系・教員養成系以外の学生・生徒に兵員として戦争に参加(陸軍ー入営、海軍ー入団)させた事いう。同年10月21日には明治神宮外苑において「出陣学徒壮行会」を実施し、同年10月25日から11月5日までに臨時徴兵検査を本籍地で受けさせ、11月15日に陸軍海軍別の入営入団を本人に通知。陸軍は12月1日に部隊入営させ、海軍は12月9、10日に本籍地の所属する4つの海兵団(横須賀のち武山、呉のち大竹、佐世保のち相浦、舞鶴)に入団させた。又、「学徒出陣」の大学生には、「仮卒業の措置」をとり、「仮卒業証書」「仮修了証」を授与した。

 東条英機内閣は、1943年9月21日の定例閣議において「現情勢下に於ける国政運営要綱」を決定し、国内態勢強化方策の一つとして「一般徴集猶予を停止理工科系統の学生に対し、入営延期の制を設く」「理工科系統の学校の整備拡充を図ると共に法文科系統の大学、専門学校の統合整理を行う」「普通教育の為に必要なる教員の確保を図ると共に、其の採用に付いては広く適材を得るの措置を講ず」とした。閣議決定に対し政府は、各省にそれぞれの具体案を提出する事を求めたが、文部省は即日提出した。しかし、当時の岡部長景文部大臣菊地豊三郎文部次官はともに「記憶していない」と主張している。この事とよく似た事例としては平沼騏一郎内閣(1939.1.5~1939.8.28)の荒木貞夫文部大臣が1939年5月公布の「青少年学徒に下し賜りたる勅語」について「知らないね」と主張した事例がある。又、岡部文部大臣、菊池文部次官はともに全国の出陣学徒壮行会に集められた学生生徒の実数による記憶はない

 同年10月12日には「教育に関する戦時非常措置方策」を閣議決定し、大学や専門学校の方策として、「徴兵適齢に達していない者や入営延期措置を受ける者に対しての授業継続、理工医農学科系大学及び専門学校の整備拡充と、文科系大学及び専門学校の理科系への転換、文科系大学及び専門学校の移転整理」などを指示した。

 「在学徴集延期臨時特例」は、「兵役法第41条第4項の規定に依り当分の内在学の事由に因る徴集の延期は之を行わず」というもの。「兵役法第41条第4項の規定」とは1939年3月8日の「兵役法中改正」(法律第1号)による同第41条改正「戦時又は事変に際して特に必要ある場合に於ては勅令の定むる所に依り徴集を延期せざる事を得」をいう。

 理工医農学系学生の入営延期について、1943年11月の兵役法改正(法律110号)により、「軍事上の修学を継続せしむる必要ある時は命令の定むる所に依り其の入営を延期する事を得」と定めた。同年11月13日には、「就学継続の為の入営延期等に関する件」(陸軍省令第54号)、「昭和18年度陸軍省令第54号第1条、第2条第3項及び第10条の規定に基づき入営(召集)を延期すべき学校及び入営(召集)を延期すべき期間」(陸軍省告示第54号)を出した。

 入営延期措置を受けた教育機関年齢については、「陸軍省令第54号」と「陸軍省告示第54号」により定めた。教育機関では、大学は、文理科大学、医科大学、工業大学。学部は、工学部、理学部、理工学部、医学部、農学部。各高等学校高等科の理科、理医工系大学の予科、専門学校、高等師範学校、師範学校、各種教員養成学校。しかし、1945年2月8日の陸軍省令第54号改正(陸軍省令第6号)により、理工農学部、医学専門学校、高等師範学校理科のみに限定した。徴兵延期年齢については、1939年3月8日の「兵役法中改正」(法律第1号)と「兵役法施行令中改正」(勅令第75号)により、延期最高年齢をこれまでの27歳を26歳に引き下げ、中学校・高等学校・専門学校・大学などの学校種別に応じ年齢に格差を設け、又早生まれと遅生まれとの間に1年の差などを設け公平を期し、戦時又は事変に際して必要ある場合には、徴集延期期間の短縮を可能とした。1941年には延期最高年齢24歳学部25歳、早生まれは1年短くなる)とし、1943年には23歳(医学部24歳、同上)とし、1945年の「陸軍省令第6号」改正では、22歳(医学部23歳)とした。

 1944年12月24日には、「徴兵適齢臨時特例」(勅令第939号)を定め、徴兵年齢は20歳から19歳に引き下げられた。

(2023年10月24日投稿)

 

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