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安重根の評価にうかがえる菅首相(自民党政権)の歴史認識とその思想

2024-08-17 09:59:50 | 菅首相

 2014年1月19日、中国黒竜江省ハルビン駅に「安重根記念館」が開館した。韓国大統領・朴槿恵氏が前年の13年6月、中国国家主席習近平氏に対し記念碑設置を要望したのに応えて作られたものだ。記念館はハルビン市政府と国鉄当局が出資し駅の貴賓室に作られた。また、暗殺現場が起きた駅ホーム上には、「安重根が伊藤博文を銃で撃ち殺した事件が発生した場所」という中国語文と事件の日付(1909年10月26日)を示したプレートが掲げられた。 

 「安重根」という人物は、韓国では神聖天皇主権大日本帝国からの侵略を排除し独立を目指した英雄的運動家と評価されており、ソウルの南山公園に「安重根義士記念館」を建設(1970年10月27日開館)ている。というのも「大韓帝国」に対し植民地化を推し進めるために「日韓議定書」(1904年)、「第1次日韓協約」(1905年)につづけて「第2次日韓協約」(1905年、外交権を接収)を押し付け、「韓国統監府」を設置し、初代統監にもなった伊藤博文を暗殺し、植民地化への動きを阻止しようしたからである。

 抵抗せず逮捕された安重根は検察官の尋問に伊藤博文銃殺に対し15の理由(伊藤博文の罪悪15か条)を答えていた。それは、

1、韓国の閔妃明成皇后(第14代国王高宗の妻)を殺害(1895年)した事。

2、大韓帝国の初代皇帝光武(高宗)皇帝を廃位させた罪。

 光武皇帝(高宗)は1907年、第2回万国平和会議に密使を送り大日本帝国政府の侵略を訴え独立回復を提訴しようとしたハーグ密使事件で退位させられた。

3、第2次日韓協約と第3次日韓協約(1907年。内政権を接収)を強制締結した罪。

4、独立を要求する無辜の大韓帝国民を虐殺した罪。

5、政権を強制的に政権を強制的に奪い、統監政治体制に変えた。

6、鉄道、鉱山産業と農地を強奪した罪。

7、日本が第一銀行貨幣を強制的に使用して、大韓帝国の経済を撹乱した罪。

8、大韓帝国軍隊を強制的に解散した罪。

9、民族教育を妨害した罪。

10、大韓帝国民の外国留学を禁止し、植民地化した罪。

11、大韓帝国の歴史を抹殺し、教科書を押収して焚焼した罪。

12、大韓帝国民が日本の保護を望んでいると世界に嘘を広めた罪。

13、現在大韓帝国政府と神聖天皇主権大日本帝国政府との間には争いが絶えないが、大韓帝国は太平無事であるかの如く天皇を騙した罪。

14、大陸侵略によって東洋平和を破壊した罪。

15、日本天皇の父太皇帝を殺害した罪。

という内容である。

 1910年2月7日から始めた関東都督府高等法院裁判は1週間後の14日、「死刑」を言い渡し、同年3月26日午前10時には絞首刑に処した。

 安重根は「伊藤殺害は韓国独立戦争の一部であり、また私が日本の法廷に立つようになったのも戦争に敗れて捕虜になったからである。私は個人の資格でこの事を決行したのではない。大韓帝国義軍参謀中将の資格で祖国の独立と東洋平和のために実行したのであるから『万国公法』によって処理すべきである」と主張した。

 しかし、事件が帝政ロシアの租借地域で起きているし、安重根は大韓帝国民であるにも関わらず、大日本帝国政府は日本刑法により裁判を行使した。また、外国人弁護団を認めず、大日本帝国政府が一方的に日本人官選弁護人を指名して裁判を進めた。さらに、被告の発言権を封鎖した状態で速決した。

 神聖天皇主権大日本帝国政府がこのように扱った安重根を、中国政府と大韓民国政府が記念館を設立して顕彰する行為に対し、首相は、官房長官時代にどのような発言主張をしていたのだろう。そこには菅氏の歴史認識や思想が明確に顕わになっている。

 2013年11月19日の記者会見では「中国・ハルビン駅で安重根が伊藤博文を暗殺した現場を示す碑を設置する動きについて、『我が国は安重根を犯罪者と韓国政府に伝えている。このような動きは日韓関係のためにはならない』と主張した。

 これに対し趙泰英・韓国外交省報道官は同日の定例会見で「日本の帝国主義時代に伊藤博文がどんな人物だったのかを振り返れば、官房長官発言はありえない」「安重根義士は我が国の独立と東洋の平和のために命を捧げた」と非難指摘した。

 2014年2月4日には安倍自公政権は、「記念館が建設された事は遺憾」「安重根は伊藤を殺害し、死刑判決を受けた人物と承知している」とする答弁書(新党大地・鈴木貴子衆院議員の質問書へのもの)を閣議決定した。

 2014年5月9日の菅官房長官の記者会見では「前世紀の事件について、一方的な評価に基づいた主張を韓国と中国が連携して国際社会に展開するような動きは、地域社会の平和と協力の構築に資するものではない」と批判した。

(2020年10月12日投稿)

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安倍首相が、宗教法人の一つである靖国神社へ代理稲田朋美(総裁特別補佐)を遣わし玉串料を奉納

2024-08-17 08:31:22 | 宗教

 2019年8月15日、安倍首相は自民党の稲田朋美(総裁特別補佐)を代理として靖国神社へ遣わし、玉串料を奉納させた。玉串料とは、神社にお参りした際やお祓いを受けた際の謝礼として奉納した金銭の事である。どのような言い訳をしようが靖国神社は数多ある宗教法人の中の一つに過ぎないものである。そのような靖国神社に「総理大臣」の肩書を持つ人間である安倍氏が、私費であるか否か、代理を遣わしたか否かに関わらず、玉串料を奉納したという行為は、紛れもなく、憲法の「政教分離原則」に違反する行為である。第20条「信教の自由」1項には「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」、3項には「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない」と定めている。さらに、代理人の奉納行為の護衛などに国家公務員を関わらせた場合、2項の「何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない」の定めに違反しており、公務員の人権を侵害している。憲法違反行為を直ちに止めさせるべきである。

 さらに重大な放置してはならない事は、首相代理の稲田朋美氏が首相から託された言葉である。その言葉は「令和の新しい時代を迎え、改めて我が国の平和と繁栄が祖国のために命を捧げたご英霊のおかげであると感謝と敬意を表します」というものである。この認識は明らかに安倍首相の偏向した主観的なものであり、誤ったものである。日本国の今日の姿(繁栄であるか否か、平和であるか否かは一概には言えない)は戦没者(「祖国のために命を捧げた」という表現や「ご英霊」という表現は、戦没(者)の真相(情)を歪曲して独善的に讃え美化するもので、不適切)のお陰ではなく、感謝や敬意を表す事との関係はない。「英霊のおかげ」とか「感謝や敬意を表す」などの感情や行為は過去の戦争を侵略戦争とは認めず、侵略戦争を正当化する「聖戦」認識を有する人間の認識である。安倍首相が神聖天皇主権大日本帝国政府為政者の立場に立っている事を示す言葉であり、断じて認められない。神聖天皇主権大日本帝国政府によって捏造された新興宗教国家神道(幕末に生まれた他の多くの新興宗教を抑圧弾圧し統制下に収めて創生)を根拠とする靖国神社に、首相がそれへの信仰を有する事を示す「玉串料を奉納する」という行為は奇々怪々で憲法違反そのものであり主権者国民はこの行為をやめさせるべきである。その際国民は、この問題の根源元凶は天皇家の宮中神道にある事に気づき、それにどう対処すべきかにも思考を巡らせるべきである。

 安倍内閣の閣僚による敗戦(終戦という言葉は当時の陸軍大臣や為政者の価値観に基づくもので不適切)の日の参拝は、17年以降途絶えているが、超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長=尾辻秀久・元厚労相)の衆参議員は例年通り集団参拝した。それに先立って、萩生田光一幹事長代行や小泉進次郎衆院議員も参拝した。

 2018年の敗戦の日は、柴山昌彦(自民党総裁特別補佐)が代理を務め、「自民党総裁 安倍晋三」の肩書で玉串料を納めた。安倍首相からは「先人たちの御霊にしっかりとお参りして下さい」との話があったとの事。今年の言葉は昨年より首相の価値観を明確に表明していると言って良いだろう。

(2019年8月23日投稿) 

 

 

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