Yoz Art Space

エッセイ・書・写真・水彩画などのワンダーランド
更新終了となった「Yoz Home Page」の後継サイトです

一日一書 821 野ざらし紀行・芭蕉

2016-03-01 16:51:21 | 一日一書

 

芭蕉

 

「野ざらし紀行」より

 

半紙

 

 

全文は以下の通りです。

 

 

 

千里に旅立て、路粮(みちかて)をつつまず、

「三更月下無何(むか)に入(いる)」と云けむ、

むかしの人の杖にすがりて、

貞享甲子秋八月、江上(こうしょう)の破屋(はおく)をいづる程、

風の声、そぞろ寒げ也。

野ざらしを心に風のしむ身哉(かな)

秋十(あきと)とせ却(かへっ)て江戸を指(さす)故郷

 

 

「野ざらし紀行」の冒頭部。

意味は、

前途千里の遠い旅に出るのに、道中の食糧を用意することもせず、

「夜更けの月光を浴びながら自然のままの理想郷にはいる」と言った、

昔の人の言葉をたよりに、杖(つえ)にすがって、

貞享元年甲子(きのえね)の年、秋八月、隅田川(すみだがわ)のほとりのあばら家を出ようとすると、

風の響きも何となく寒々しく感じられる。


野ざらしを心に風のしむ身哉(みかな)

  (道に行き倒れて白骨を野辺にさらしてもと覚悟をきめて、旅立とうとすると、ひとしお秋風が身にしみることよ)

秋十(あきと)とせ却(かえつ)て江戸を指故郷(さすこきよう)

  (住みなれてもう十年、いま故郷へと向いながらも、かえって江戸が懐かしく、本当の故郷のように思われることだ)


 




  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする