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11月30日に開催される東京・六本木のスウェーデン大使館でのミニセミナーについては、スウェーデン大使館のホームページにも掲載されています。
<内容紹介・その1>
スウェーデン西海岸には、数世紀にわたって小規模な沿岸漁業で生計を立ててきた漁村があった。そこでは、「海が許容する以上の魚は獲らない」というのが漁民たちのルールだった。
しかし、1980年代に入ると他の漁港から大型の漁船が次々とやってきて、この漁港の沖合いで操業を始めた。最初はなす術もなく眺めていた地元の漁民も、負けじと海に繰り出し、夜も週末も関係なく漁を行うようになった……。
かつては「海の魚は尽きることがない」と考えられていた時代もあったが、1950年代に先進国が漁業を産業的に大規模に行うようになって以来、世界中の海で魚の枯渇が懸念されるようになってきた。
スウェーデンなどヨーロッパ諸国の行政機関も、漁の規制と漁船数の削減が必要だと認識するようになったが、彼らの行った政策は逆に乱獲を助長することになった。沿岸漁業を営んできた小型漁船を次々とスクラップにしていく一方で、大型漁船のさらなる近代化が推し進められている。また、がんじがらめ規制のために、スウェーデン近海だけでも毎年数千トンにおよぶ魚が陸揚げできず、海やゴミ処分場にそのまま投棄されている。
問題はヨーロッパだけに留まらない。新たな漁場を求めるヨーロッパの漁船のために、EUはアフリカなど途上国近海の漁業権を買い取り、そこで新たな乱獲が行われている。そのために生活の糧を失った地元の漁民が経済難民や海賊となることで、新たな問題が生まれている。
本書は女性ジャーナリストである著者が3年がかりでまとめたもので、スウェーデンで刊行されるやいなやベストセラーとなり、人々に衝撃を与えた。その内容は、漁業大国日本の漁業や私たちの食に対しても、大きな示唆を与えるものである。
<内容紹介・その2>
著者がこの本の中で議論しようとしているのは、本当はバルト海のタラではない。クロマグロでもウナギでも、イルカでもない。
個別の種が絶滅し、姿を消すことが問題なのではない。本当の問題は、私たちの海に生息する魚を獲り尽くすことによって、海の生態系全体が変化してしまうことなのだ。一つの種が姿を消すと、それは全体のバランスを狂わすことになる。そして、いずれは陸上の環境にも影響を与えかねない。
漁業による魚の乱獲を巡っては、めったに議論されない別の視点もある。魚は誰のものなのか? 私たちすべてのものである共有資源が、多額の公的助成金を受けた少数の漁師によって獲り尽されようとしている現状は、果たして正しいことなのだろうか? EUが私たちの税金を使って発展途上国の漁業権を買い取り、ヨーロッパの漁船が途上国の海を空っぽにしている現状は、果たしてよいのだろうか?
著者イサベラ・ロヴィーンは、まずスウェーデン近海における水産資源の乱獲の調査から始め、次第にノルウェー北部の養殖場や、ブリュッセルにおけるEU政治の裏舞台、そしてアフリカ西部の島国カーボヴェルデへと調査を拡大していく。
『沈黙の海』は、世界中の海の海面下で何が起きつつあるのかを明確に示した貴重な本である。今すぐにでも皆さんがお読みになることをお勧めしたい。
<本文より抜粋>
私が漁業について本格的に関心を持ち始めたのは、ウナギに関する情報を読んでからであった。2003年10月のある日、スウェーデン水産庁からの記者発表がたまたま職場の机の上に置かれていた。私は一度目を通すと、その文章に釘付けになってしまい、何度も何度も読み返した。そして最後には、私の読み間違いではないことが明らかになった。
そこに書かれた事実はあまりに明白だった。水産庁が伝えるところによれば、サルガッソ海からヨーロッパへ流れてくるシラスウナギ(ウナギの稚魚)の量がここ20年あまりの間に99パーセント減少したという。
そして、さらに驚くべきことがその続きに書かれていた。水産庁としてウナギ漁の禁止を発令するほどの正当な理由は見当たらない、というのである。その理由はというと、そうすればスウェーデンの漁師に大きな打撃を与えることになるから、というのが水産庁の見解であった。
では、緊急措置として何を行うのだろうか。
いや、何もしない、というのである。
<著者の紹介>
Isabella Lövin(イサベラ・ロヴィーン)
1963年生まれ。ジャーナリスト。ストックホルム在住。消費者問題や食・環境の問題を扱う雑誌のレポーターやコラムニストのほか、公共ラジオで社会問題を扱う番組の編集長を務めてきた。本書が評価されて、2007年にスウェーデン・ジャーナリスト大賞や環境ジャーナリスト賞などを受賞。2009年夏より欧州議会議員。
11月30日に開催される東京・六本木のスウェーデン大使館でのミニセミナーについては、スウェーデン大使館のホームページにも掲載されています。
<内容紹介・その1>
スウェーデン西海岸には、数世紀にわたって小規模な沿岸漁業で生計を立ててきた漁村があった。そこでは、「海が許容する以上の魚は獲らない」というのが漁民たちのルールだった。
しかし、1980年代に入ると他の漁港から大型の漁船が次々とやってきて、この漁港の沖合いで操業を始めた。最初はなす術もなく眺めていた地元の漁民も、負けじと海に繰り出し、夜も週末も関係なく漁を行うようになった……。
かつては「海の魚は尽きることがない」と考えられていた時代もあったが、1950年代に先進国が漁業を産業的に大規模に行うようになって以来、世界中の海で魚の枯渇が懸念されるようになってきた。
スウェーデンなどヨーロッパ諸国の行政機関も、漁の規制と漁船数の削減が必要だと認識するようになったが、彼らの行った政策は逆に乱獲を助長することになった。沿岸漁業を営んできた小型漁船を次々とスクラップにしていく一方で、大型漁船のさらなる近代化が推し進められている。また、がんじがらめ規制のために、スウェーデン近海だけでも毎年数千トンにおよぶ魚が陸揚げできず、海やゴミ処分場にそのまま投棄されている。
問題はヨーロッパだけに留まらない。新たな漁場を求めるヨーロッパの漁船のために、EUはアフリカなど途上国近海の漁業権を買い取り、そこで新たな乱獲が行われている。そのために生活の糧を失った地元の漁民が経済難民や海賊となることで、新たな問題が生まれている。
本書は女性ジャーナリストである著者が3年がかりでまとめたもので、スウェーデンで刊行されるやいなやベストセラーとなり、人々に衝撃を与えた。その内容は、漁業大国日本の漁業や私たちの食に対しても、大きな示唆を与えるものである。
<内容紹介・その2>
著者がこの本の中で議論しようとしているのは、本当はバルト海のタラではない。クロマグロでもウナギでも、イルカでもない。
個別の種が絶滅し、姿を消すことが問題なのではない。本当の問題は、私たちの海に生息する魚を獲り尽くすことによって、海の生態系全体が変化してしまうことなのだ。一つの種が姿を消すと、それは全体のバランスを狂わすことになる。そして、いずれは陸上の環境にも影響を与えかねない。
漁業による魚の乱獲を巡っては、めったに議論されない別の視点もある。魚は誰のものなのか? 私たちすべてのものである共有資源が、多額の公的助成金を受けた少数の漁師によって獲り尽されようとしている現状は、果たして正しいことなのだろうか? EUが私たちの税金を使って発展途上国の漁業権を買い取り、ヨーロッパの漁船が途上国の海を空っぽにしている現状は、果たしてよいのだろうか?
著者イサベラ・ロヴィーンは、まずスウェーデン近海における水産資源の乱獲の調査から始め、次第にノルウェー北部の養殖場や、ブリュッセルにおけるEU政治の裏舞台、そしてアフリカ西部の島国カーボヴェルデへと調査を拡大していく。
『沈黙の海』は、世界中の海の海面下で何が起きつつあるのかを明確に示した貴重な本である。今すぐにでも皆さんがお読みになることをお勧めしたい。
<本文より抜粋>
私が漁業について本格的に関心を持ち始めたのは、ウナギに関する情報を読んでからであった。2003年10月のある日、スウェーデン水産庁からの記者発表がたまたま職場の机の上に置かれていた。私は一度目を通すと、その文章に釘付けになってしまい、何度も何度も読み返した。そして最後には、私の読み間違いではないことが明らかになった。
そこに書かれた事実はあまりに明白だった。水産庁が伝えるところによれば、サルガッソ海からヨーロッパへ流れてくるシラスウナギ(ウナギの稚魚)の量がここ20年あまりの間に99パーセント減少したという。
そして、さらに驚くべきことがその続きに書かれていた。水産庁としてウナギ漁の禁止を発令するほどの正当な理由は見当たらない、というのである。その理由はというと、そうすればスウェーデンの漁師に大きな打撃を与えることになるから、というのが水産庁の見解であった。
では、緊急措置として何を行うのだろうか。
いや、何もしない、というのである。
<著者の紹介>
Isabella Lövin(イサベラ・ロヴィーン)
1963年生まれ。ジャーナリスト。ストックホルム在住。消費者問題や食・環境の問題を扱う雑誌のレポーターやコラムニストのほか、公共ラジオで社会問題を扱う番組の編集長を務めてきた。本書が評価されて、2007年にスウェーデン・ジャーナリスト大賞や環境ジャーナリスト賞などを受賞。2009年夏より欧州議会議員。
いつも興味深く読ませていただいてます(あんまり理解できてないことも多々ありますが・・・)
まさしく、”今”のスウェーデンを知ることができて嬉しいです。
先日のブックセミナー、おつかれさまでした。
話が理解できなかったらどうしよう、なんてちょっとドキドキしましたが、とてもわかりやすい説明で、ちょい笑いもまじえてくれて、セミナーの雰囲気もLenaさんのようにほんわかしてて安心しました。
行ってよかったです。海の生態系の異常は海に囲まれた日本では身近な問題ですし、いかに今まで自分が自然環境に対して無知で無頓着だったかわかりました。
お忙しいと思いますが、風邪とインフルエンザに気をつけて日本滞在を楽しんでくださいね。
では、長々と失礼しました
コメント用紙に、私のブログを見て知った、と書いてくださった方ですよね? ありがとうございました。お声を一言おかけくださればよかったのに・・・
>Martinさん
Visst, jag hoppas vi kan utveckla va'rt samarbete i fortsa:ttningen!
>erithacus6さん
そうですね。ありがとう
スウェーデンは日本より寒いんでしょうね。夏に行ったことありますが、今度は冬の時期に行ってみたいです
その新刊案内にあって、気になっていたこの本を、先日手に入ったので読んでみました。
激減する食用魚の理由が、温暖化や海洋汚染よりも乱獲によるもので、そのような乱獲を止められない理由が、政治と漁業者の癒着だと見抜くあたりは、とても興味深く面白かったです。
EUの特殊な事情故、日本には当てはまらないのかな?と思ったら、こうした乱獲の裏に潜む、自然を無視した経済勘定での政策決定を指摘するあたり、日本も例外ではないと思い知りますね!
刺激的で示唆に富む本を、ありがとうございました。
そして、ブログのほうにもご感想を書いていただき、本当にありがとうございました。
私自身も日本近海の状況については勉強中ですが、昔から漁業と密接なかかわりにある国であるため、かなりデリケートな問題だと感じています。
翻訳の目的は、日本の漁業を批判することではなく、読者の方に関心を持っていただいて、日本における議論を盛り上げていくための一つの契機にしたいということです。
訳者あとがきにある別ブログは現在建設中ですが、なるべく早く情報発信ができるようにしたいと思っています。