スウェーデンの今
スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員
 



今日お昼のニュースによると、ドイツの大学で一般の学生からの授業料徴収することが可能になった。スウェーデンと同じく、ドイツも1960年代終わりから、大学の授業料を廃止し、誰でも無料で大学で学べるシステムが構築してきた。今日の裁判所の判断で、授業料徴収が可能になり、ドイツはその原則を次第に放棄していくことになる。

こう書くと、えっ!? スウェーデンでは大学教育が無料なのか?といった驚きの声が上がりそうだが、まさにその通り。その辺の大学生事情を何回かに分けて書いてみたい。

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スウェーデンの大学教育について、紹介してみたい。日本の大学教育制度とは大きく異なる点が数多くあるが、まずはじめにあげたいのが授業料が無いということだ。

大学教育はスウェーデンのすべての大学のすべての学部(より正確にはプログラム。以下参照)で授業料が無い。この根拠は以下のスウェーデン政府の見解に端的に表されている。「政府の基本的見解は、高等教育は市場で取り引きされるモノやサービスというよりはむしろ、社会的権利であるべきだということだ。そのため、スウェーデンは強力な国費支出に支えられた、授業料のない大学教育システムを確立してきた。より多くの人々に大学教育の機会を与え、社会の中の一部のグループの人間だけが大学に進むという社会的格差を減らすために、各県に少なくとも一つの強力な国立大学を建設してきた。」(2004-02-28, Dagens Nyheter Debatt(意見記事)文部大臣Thomas Östros)

もちろん、無料で大学に行けるというだけで、誰もが個人の経済状態に関わらず、自由に大学に行くことを選択できるとは限らない。大学に行くということは、同時に、その間バイトでもしない限り、収入の機会を失うということでもある。生活費に困ってしまう。そのため、政府はすべての学生に対して、学生補助金制度を適用している。フルタイムの学生であれば、毎月2372クローナ(35580円)を返済義務のない学生補助金(studiebidrag)として、さらに4528クローナ(67920円)を返済義務のある学生ローン(studielån)として国から支給されている。たいていの学生がこの両方の給付を受ける(合わせて103500円)。これらは、個人の所得に関係なく、希望者すべてに支給される。支給は最大12学期間(つまり6年間)。(数字は2004年現在。学生補助金制度を管轄するCSNの資料より)

それから、若者の一人暮らしを容易にするために、政府はさらに若者向けに住宅補助金制度を設けてもいる。こちらのほうは、家賃の半額から3分の1をカバーする。個人の所得に応じて支給額が異なってくるので、アルバイトなどで所得が一定以上ある学生には支給されない。学生補助金・ローンとこのような制度のおかげで、学生が経済的に自立して、自分の道を決め、大学への進学も可能になる。

さて、学生補助金制度だが、学生側はそれを一方的に利用するだけでは済まされない。1学期間に必要単位の75%を取得しなければ、次の学期に学生補助金・ローンが支給されないのである。そのため、必死に勉強する。多くの科目では、単に教官が一方的に講義をし、最後に試験をするだけというような日本の大学とは違い、スウェーデンの大学では、講義の他に、大量の文献を与えられ、学生が積極的に議論に参加しなければならないセミナーや、グループワーク、課題提出などが頻繁にあるので、日本に比べたら学生生活はかなり忙しいのである。

それでも、必要な単位を取得できなかったらどうなるか。その場合は、次の学期は補助金やローンを受けられないので、働きながら大学に通うか、大学から一時離れて、働いてお金を貯めてから、再び復学しなければならない。知り合いの女の子は看護学科に通っていたが、いくつかの試験に合格できなかったため、今学期は実家に戻ってアルバイトをしている。スウェーデンの大学では、課題提出や試験で不合格になっても、再試験があるので、それに合格すれば単位を取得できる(もちろん評定は異なってくるけれど)。だから、日本みたいに試験で失敗したために、またもう一学期、もしくはもう一年やり直しということはない。再試験はその学期内にもあるし、その科目がその大学に存在する限り、それ以降の学期に受けることもできる。だから、その子は再試験のために、たまに大学に戻ってきて再試験を受けている。そうやって、前学期の必要取得単位の75%ハードルをクリアしてから、再び学生補助金制度を利用することも可能なのである。その子は、今はもう勉強にうんざりして大学に復学する気はないけれど、近い将来気が変わったときに、補助金が受けられるように、そうやって準備しておくのだそうだ。(それに、時間がたって内容を忘れてしまうと、一からやり直しをするのは、大変な苦労になるからだとも思う。)

(続く・・・)

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
Unknown (ai)
2005-01-31 06:10:04
授業料がタダ!これだけ聞くとすごい羨ましい☆とだけ思いますが、その裏には日本の大学とは比べ物にならないハードさがありますよね!

「再試験」があるから次に伸ばす学生が多いけれど、私のルームメイトも今回落としたらもう奨学金がもらえなくなるから大学をやめないといけない><といって必死に勉強していました。

関西外大も所定の成績が取れないと強制帰国!とゆう留学制度の規則があります。彼らもある意味、同じようなプレッシャーの中でがんばっているのですね。就活も大事だけど、こっちでの勉強もがんばっていかないと





ドイツは制度が変わるようですが、スウェーデンでは今のところ給付制度は続いていくのですか?
 
 
 
高校 (ミック)
2008-05-03 04:08:51
こんにちは
息子はスウェーデン国籍を持っていますが、スウェーデン語は出来ません。英語圏で2年高校に行っていますが、最後の3年目を止めてスウェーデンに行くなら、スウェーデン語を学びながら英語で授業があるような息子が行ける高校などはあるのでしょうか?
スウェーデン語だけの授業なら、卒業するのに長く年数がかかるでしょうから。
 
 
 
Unknown (Yoshi)
2008-05-04 21:12:30
スウェーデンにも英語での授業を基本としたインターナショナル・スクールがあるでしょう。詳しいことは分かりませんが。
 
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