スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

火山灰の続報・その3

2010-04-19 05:56:17 | コラム
日曜日はスウェーデンとノルウェー両国の北部で飛行禁止令が解除された。しかし、スウェーデン北部の空港といえばどこも地方空港であり、ストックホルム間を行き来する定期便しかないため、ストックホルムの空港が閉鎖されている限りは、離着陸する飛行機は全くなかった。日曜日朝8時以降、離着陸が可能となったキルナ空港も、アメリカから企業の自家用ジェットが一機降りただけだった。小さな空港だけに、大型機の着陸は難しい。


アメリカを出発しキルナの空港に降り立った自家用ジェット


アイスランド航空は、アイスランドで立ち往生している乗客のために航空機を5機運行し、ノルウェーのトロンハイム空港へ降り立った。

日曜日の晩からは、ノルウェーの首都オスロの空港の使用再開が検討され始めた。ちょうど同じ頃、スウェーデン航空庁はストックホルムの空港の使用を翌朝、つまり月曜日の朝に許可するかもしれない、と発表した。火山灰が南に向かい始めたためだ。

この情報に驚いたのは、スカンディナヴィア航空(SAS)月曜日のフライトはほぼすべてキャンセルと発表していたものの、航空庁の発表を受けて、アメリカ発ストックホルム行き2便を運行できるかもしれない、と考え始めた。それから、アメリカ発コペンハーゲン行き2便の運行も検討し始めた。ただし、デンマークは月曜日も飛行禁止が解除される見込みなしだったため、ストックホルムに降ろすのだという。

でも、もしストックホルム上空に火山灰が滞留し、空港への離陸許可が下りなければ? その時は、オスロの空港に降ろせばいいという。でも、もしオスロも無理なら? 残念ながらその先の解決策があったのかどうかは分からない。同じ頃、気象庁は火山灰の一群がオスロ上空に向かいつつあることを告げていた・・・! オスロが無理なら、皆でパラシュートをつけて飛び降りるのだろうか? いや、そんなことをするくらいなら、もちろん火山灰の中を飛んで強制的に着陸するだろう。

アメリカ発のSAS機は予定通り離陸した。目指すはストックホルム。一度、飛び立ったら容易には引き返せない! 大きな賭けだ。同じ頃、ストックホルムの空港では、アメリカ行きの乗客に召集がかけられていた。アメリカから来た航空機を折り返して使用するから、チケットを持っている者は翌日早朝までに空港に来い! と。もし、ストックホルムの空港に着陸できず、オスロ着になった場合は、乗客を急遽バスでオスロまで運んでそこからアメリカに飛ばす。そういう手はずとなった。

さて、月曜日の朝、どうなることかと心配されたが、ストックホルムの空港には予定通り使用許可がおり、アメリカから来たSAS機は無事着陸。そして、折り返しアメリカへと飛び立った。しかし、ストックホルムの空港では、それ以外には国内便が数便飛んだり、旅行企画会社のチャーター機の数機がポルトガルやスペイン、ギリシャで立ち往生していた旅行客をストックホルムに運んだくらいで、目立った動きはなかった。スカンディナヴィア航空はデンマークのコペンハーゲンがハブとなっており、その空港が使えない間は、大部分の路線が止まったままなのだ。離着陸数は通常の5%に留まった。日中は、マルメを除くほとんどの空港で飛行禁止が解除された。


アメリカから飛んできたSAS機が無事着陸

これに関連して、スウェーデンの自動車メーカーであるボルボサーブは、部品在庫が枯渇してきた。一部を国外からの空輸に頼っているためだ。例えば、日本からオートマのギアボックスが届かないのだという。サーブの担当者は「マニュアル車の生産を一時的に増やす。つまり、アメリカ市場向けではなく、ヨーロッパ市場向けの車に重点を移すということ」と答えていた。

それから、ヨーテボリでは「サイエンス・フェスティバル」が今週開催され、昨年のノーベル経済学賞受賞者であるエリノア・オストロムが来る予定だった。ここヨーテボリ大学経済学部でも講演予定だったのだが、あいにくキャンセル。残念だが、仕方がない。

これを書いているのは、月曜日午後8時半だが、現時点で再びヨーテボリを含むスウェーデン南部で飛行禁止令が発令され、空港が閉鎖された。他のヨーロッパ諸国も、ノルウェーや東欧の一部・南欧を除けば、主要国でほとんど飛行禁止だ。

明るいニュースもある。火山からの噴煙の量が減っていること。これまでは、マグマが氷河から解け出した水に触れ、火口付近で水蒸気による爆発を繰り返していた。そのために、激しい噴煙が空中の高いところまで吹き上げられていた。しかし、氷河や水分はほぼなくなり、現在は空中からマグマが目視できる状況らしい。そのため、噴煙は次第に減っていくものと見られている。

それから、スウェーデンでは水曜日に激しい雨になる見込みで、それによって噴煙が地上に落ち、上空が澄んでくるという。


フランクフルト国際空港の付近の住人が道路標識に貼り付けたジョーク。「火山よ、ありがとう!」 ここ数日は、静かに暮らせているという(笑)。

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4 コメント

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Unknown (H.Usui)
2010-04-20 23:58:20
珍しい飛行機を有難う。3発のビジネスジェットはDassaultFalcon900しかありませんが、これは窓が13ある900EXは特注品スウェーデン籍ですからどこの金持ちか会社でしょうか。
東洋経済は明日買いに行きます。
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Unknown (Yoshi)
2010-04-21 06:54:38
すごい。
まさか、飛行機の機種についてのコメントが来るとは思いませんでした。この飛行機は、ヨーテボリに拠点をおくある企業の所有するビジネスジェットだとのことです。どこの企業かは知りませんが。
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Unknown (Yoshi)
2010-04-21 08:31:44
Blue Chip Jet IIという、VolvoとEricssonが共同出資して設立したビジネス客向けの航空会社だそうです。拠点はヨーテボリです。

http://www.e24.se/business/konsumentvaror/volvo-bestallde-lyxflygplan-for-850-miljoner_1263823.e24
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Unknown (Moder)
2010-04-21 12:18:26
Flightradar24.com というサイトで確かめると、まだ北欧周辺は航空機の姿がほとんどありませんね。
(このサイトはスウェーデン製?)
運行再開されても平常に戻るのには時間がかかりそうですね。成田や関空でも空港内で寝泊まりを余儀なくされた旅行客が相当数いたようです。予約客に対する航空会社や空港側の対応を調べて公表したらおもしろいでしょうね。フライト選びに役に立つと思うのですが(笑)
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