今回は切ない回だったな。
当時、公式には死刑というものはなかったが、検非違使の配下の放免と呼ばれる下っ端どもが、流罪に必要な経費などをくすねるために、実際には流罪にせずに葬ってしまうようなことがあったらしい。「放免」という名なら無罪放免にでもしてくれればいいのに、その逆なのだな。放免は元々は罪人で、許されて検非違使に仕えるようになったものも多いらしい。
一方、散楽は中国より伝わり、奈良時代は大事にされていたが、平安時代になるとなぜか疎まれていたという。その後、能や人形浄瑠璃などに発展していく、日本の古典芸能のルーツである。ちょうど最近渡来人に関わる本を読んだのだが、散楽を日本に伝えたのは渡来人であり、そこから能に発展させた世阿弥もまた渡来人をルーツに持つ人だったのだ。現在は逆に、そのルーツである散楽を復活させようという動きもあるようだね。今年の大河は、今日本古来のものという思われているものの原初的な形に近いものを紹介し、更にそれは大陸から来たものであることを示唆させる、とてもスケールの大きい大河なのだ。
平安時代は散楽が疎んじられていた・・というか格の低いものと考えられていたのだから、演じていた者たちは虐げられた、社会の下層の者たち・・盗賊でもしなければ生きていけなかったのかも。彼らを助けようとして助けられなかった道長は号泣する。特に、非凡な才能を買っていたと考えられる直秀・・このドラマのオリジナルキャラではあるが、彼の死が、道長の人格形成にドラマ上どういう影響を与えていくのかは興味のあるところである。尚、散楽の者らが殺された鳥辺野なるところは、将来道長も荼毘に付されるところであり、源氏物語の中でも、桐壺更衣、葵上、夕顔らが葬られている。今回のシーンはそこの伏線だろうか。
尚、下層民のジェノサイドのことなど知ったこっちゃない、道長以外の右大臣家。晴明も加担し、古典の教科書に必ず載っている大鏡のあのシーンへと陰謀が突き進んでいく。