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SFマガジン2009年8月号


SFマガジン2009年8月号№641      早川書房

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評価に値する作品なし

 今号はチャイナ・ミエヴィル特集。ミエヴィルの「ペルディード・ストリート・ステーション」の刊行にあわせた特集企画。ようは「ペルディード・ストリート・ステーション」を売りたいがための特集だといえる。この作品は面白そうだから、小生は読むつもりでいるが、いわばSFマガジンをPR誌がわりに使っているわけ。この号はミエヴィルの短編以外は連載が6本。
 先月号は「スター・トレック」特集だった。単行本のPR企画と、単行本のストック用の雑誌と成り果ててしまったのかSFマガジン。今号などはミエヴィルに興味がなくて、連載を読まない読者は、まったく読む所のない号であった。
 SFマガジンは、SF者という、読まなくても必ず買う固定読者がついているのであろう。雑誌が売れないと、いいつつもSFマガジンはある程度の売上げのある雑誌ではないだろうか。しかし、こんな読者をないがしろにするような企画を立てているようでは、そのうち見放されるぞ。きっと叱りおく。
 早川書房内でSFマガジン編集部がどういう位置付けにあるのか知らないが、SFマガジンは単行本のちょうちん持ちをするだけの雑誌ではないだろう。日本で唯一のSF専門誌との自覚をしっかり持って、SFマガジン編集部独自に企画を立て、新たなSFの読者を掘り起こすぐらいのことをして欲しい。
 と、文句をいいつつも、ミエヴィルの短編3編を読んだ。
 このうち「鏡」について言及する。導入部は面白かった。途中からはぜんぜんダメ。小生は上方落語が好きでよく聞く。古典となった落語には現代人にはわからない言葉が出てくる。「いかき」「へっつい」「いかけや」「だいしょや」「てんご」桂米朝師匠のような名人上手でも、これらのわからない言葉の出てくる落語を演じられる場合は、まくらで判りやすく、かつ自然に解説をしてくださる。だから本編の落語が楽しめる。で「鏡」だが、「パチョーグ」「イマーゴ」という言葉がでてくるが、よく判らなかった。不親切。小生のごときアホな読者でもわかりやすいように気を配るのが作者と翻訳者の仕事だろ。米朝師匠でさえそれをやっている。まことに失礼ながら、ミエヴィルと訳者の田中一江さんは、米朝師匠ほど名人上手ではないだろう。もうすこし親切な創作と翻訳をするべきである。

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