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スカイ・クロラ


監督 押井守
出演(声) 加瀬亮 菊地凛子 谷原章介 栗山千明

 人間が欲しくて夢見つづけた二つのもの。終わりなき平和。永遠の若さ。世界はこの二つの夢が実現していた。
 国家間の戦争は無くなった。しかし戦争は有る。それも、絶対に終わることにない戦争が。戦争は会社が営業活動として行っている。人々に平和を実感させるために、興業としての戦争がずっと続いているのだ。平和を保つための終わり無き戦争が。
 その戦争に参加している一つの空軍基地の、戦闘機パイロットたちが映画の登場人物。そのパイロットたちはキルドレ。キルドレとは永遠に大人になれない人間。肉体が大きく損壊しない限り死なない。戦死してもリセットされ再生する。
 登場するキルドレは個人によって違う。リセットされる以前をまったく忘れている者。自分がキルドレであることに疑いを持っている者。リセット以前をかすかに覚えている者。しかし、みんなの苦悩は深い。永遠に大人になれない。死ねない。永遠に同じことの繰り返し。映画の中での登場人物のセリフ「同じ道でも毎日違うように行く」絶望の中にかすかな希望を見出すセリフだ。
 永遠の平和と若さ。この夢を実現したために、果てしない戦争と、生きる苦悩。なんとも皮肉なテーマの映画だ。
 敵方のエースパイロットに「ティーチャー」と呼ばれるパイロットがいる。彼はただ一人大人のパイロット。「ティーチャー」は誰も撃墜できない。
 ちなみに主人たちが乗る戦闘機は先尾翼の推進式プロペラ。機の後尾にプロペラが付いている。このタイプの戦闘機は機首に大口径の機関砲を装備できるメリットがあるが、パイロットの後ろにプロペラがあるため、機が被弾して脱出する時、パイロットがプロペラの回転に巻き込まれる恐れがある。
「ティーチャー」の乗機は牽引式プロペラ。ゼロ戦や隼のような機首にプロペラがついている。これだと脱出してもパイロットはプロペラに巻き込まれない。
このように乗機のタイプを見ればキルドレが会社から、使い捨てと見られていることが判る。
 空中戦のシーンはダイナミックで、大変に迫力の有る映像。それ比較して、人物の会話シーンは静かで、各キャラの顔は簡略化された能面のよう。キルドレたちの憂鬱な雰囲気がよく出ている。
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3月30日(月) 伊藤計劃氏の訃報に接する

 伊藤計劃氏の訃報に接する。まだ34歳の若さ。死因は肺癌とのこと。作家デビューと時を同じくして、闘病生活にはいられたとか。
 3作を世にだしただけで早世された。小生は、デビュー作の「虐殺機関」を読んだ。その才能に驚き、無限の可能性を秘めた作家であるとの印象を受けた。ご本人の無念は想像するだに大きいとの推察するが、小生も、非常に楽しみにしていた、若手SF作家だけに、かえすがえすも残念でならない。
 伊藤計劃氏のご冥福をお祈り申し上げます。
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