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とつぜんリストラ風雪記 25

とつぜんリストラ風雪記 24

 2004年11月16日にMK産業の常務にクビをいいわたされた。悪い結果である。しかし最悪の結果ではない。「最悪の条件で最高の結果を出す」というのを小生は座右の銘としている。
 10月に仮採用となり、3ヶ月の試用期間を経て1月には正社員となる、と小生は最初は思っていた。ところが、結果はクビ。確かに、コーヒー焙煎器を日本で生産しないのなら、電子部品仕入れの専門家は不要。広告の仕事も、まとまった企画さえあれば、焙煎器程度の商品、マスコミ広告やらPOPなどのSPは不要だろう。焙煎器の部材の見積もりと、広告の企画書が出来さえすれば、小生に用はない。最初からそのつもりだったのだろう。
 時給800円のアルバイトでいいから雇ってくれといえば、小生はハンダ付けができるから、工作のアルバイトとして雇ってくれただろう。しかし、それでは家族を養っていけない。直ちにMK産業と縁を切って、求職活動に専念すべきなのだが、1月15日までは会社に置いてやるとのこと。置いてもらうことにした。
 時給800円につられてMK産業にいるよりも、1日でも早く次の就職先を見つけなければいけない状況だが、少し計算をした。もし、MK産業を辞めれば健康保険は、自己負担の国民健康保険に切り替えなくてはいけない。小生は、胃潰瘍持ちで血圧も高め。胃酸を抑える薬と、血圧降下剤を常用している。家族も生身の身体とて病気をすることもある。医療費に結構お金がかかる。1月15日までMK産業に籍を置いておけば、健康保険の会社負担分が、3ヶ月だけだが助かる。
 常務に交渉した結果、工作の仕事がある時は、それを優先するという条件で、会社の時間中に求職活動をしても良いとのお墨付きをもらった。クビという悪い結果が出たが、それなりに良いクビのされ方をしたのではないだろうか。
 K電気をリストラされて、H屋D堂に採用されるまで、半年間無職浪人を経験した。もうあのような経験は嫌だ。なんとしても1月15日までに就職しなければならない。完全失業状態を作ってはだめだ。ブランクは作りたくない。
 
 2004年11月16日から2005年1月15日までの、小生の1週間の行動は次のようにしていた。
 
 月曜 午前MK産業 午後 神戸ハローワーク、神戸人材銀行
 火曜 終日MK産業
 水曜 午前中MK産業 午後 西宮、尼崎 伊丹ハローワーク
 木曜 終日MK産業
 金曜 午前中MK産業 午後 梅田ハローワーク
 土曜 履歴書 職務経歴書などの書類作成
 日曜 求人折込、新聞広告チェック、インターネットで求人検索
 
 もちろん、面接、人材紹介会社の面談があれば、そちらを優先する。アルバイトをしながら、求職活動をしていることになる。クビをいわれた時点で辞めても、期間が短いから失業保険は出ない。また、失業保険が出たとしても、受給中はアルバイトは認められない。ということを考えると、MK産業に、上記のような勤務であっても、籍を置いておくというのは良い判断だった。MK産業にとっては、保険などの負担分が損だが。

 自席でインターネットで求人検索していると、課長が時間中は職務以外のことをするなという。工作の仕事はない。常務の席に連れて行く。小生のことを、常務は課長に話していないらしい。
「手が空いている時は、求職活動してもいい約束でしたでしょう」と、常務にいう。「現場の課長にも話を通じておかなければだめでしょう」と、常務を厳重に叱りおく。
 席にもどると、課長、なにか考えている様子。ふっと何か思いつきおった。
「ちょっと明石の外注先まで車を運転してくれないか」
「課長は免許持っているでしょう」
「持っているけど、足が痛くてペダルが踏めない」
 朝、出勤時、駅から会社まで、おっさんの後ろを歩いていたが、足を痛めている様子ではない。その外注先は電話すれば向こうから来るはず。
「何の用ですか」
「いや、ちょっと急いでいるから引き取りに行こうと思って」
「電話すりゃ納品にくるでしょう」
「たまにはこちらから出向いた方がいい」
 おっさんが何を考えて、小生に運転させたいのかよく判る。時間中に求職活動されるのが、気に食わないのだ。
 しかたがないので、運転した。阪神高速から第2神明を走る。小生はかなり飛ばす方だ。小ワザは上手ではない(車庫入れで時々こする)が、大ワザは上手い(大阪→出雲600キロ6時間で走破の記録あり)決して機嫌よく運転していたわけでない。助手席の課長とは、ひと言も口を聞かないドライブであった。
 二日前にクビをいいわたされた、きげんの悪い男が運転する。ブスと押し黙っている。130キロ、瞬間最大時速150キロ。おっさん、助手席で青い顔をしていた。さぞかし後悔していたろう。
 外注先に着いた。品物はできていた。車に積み込み、帰ろうとすると「あ、オレはここで今後の工程について打ち合わせをするから、雫石君は先に車で帰ってくれ」といった。よほど、さっきのドライブがこたえたらしい。
「課長はどうするんですか」
「オレはバスと電車で帰る」
 ここはJRの明石からかなり遠い。明石の田舎とて、神姫バスもあまりこない。車でないと不便である。
「課長の用がすむまで待ってますよ」
「君は午後からハローワークに行くんやろ」
「ハローワークは5時までに行けばいいんです」
 結局、小生は強引に待って、また課長とドライブ。おっさん往きよりも青い顔をしていた。
 この行為について小生は反省している。課長をいじめた事について反省しているのではない。課長も意地悪で小生にドライブさせたのだ。で、意地悪を仕返ししてやっただけ。
 こんな無謀運転したことについて反省しているのである。少し自慢するが、小生、少々スピードを出す運転をするが、他の違反はしない。駐車場所がなくて、しかたなく駐車違反をすることはごくたまにあるが、他の違反はしない。スピードは出すが、免許を取ってスピード違反で切符を切られた回数は片手になるかならないか。ずっと優良運転者でゴールデン免許だ。とはいえ、あんな運転はだめだ。反省している。以後安全運転を心がけている。意地悪をするのなら、別の意地悪を考えるべきだった。

 
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