米国の住宅価格は上昇を続けているが、政府は連邦政府機関が保証する住宅ローンの上限を維持しており、これが多くの高級住宅購入者にとって問題となっている。
米連邦住宅金融局(FHFA)は25日、連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマ
ック)が来年、大半の住宅市場について保証できる上限を41万7000ドル(約5100万円)で維持することを明らかにした。上限規制の実施はこれで11年目を迎える。
カリフォルニア州サンノゼやサンフランシスコ、ニューヨークといった高額住宅地域についての上限は62万5500ドルで維持される一方、39の郡では5750ドル~3万4500ドルの範囲で引き上げが実施される。
インサイド・モーゲージ・ファイナンスによると、こうした上限を超える「ジャンボ」ローンは今年1~9月、
市場全体の19%近くを占めた。落ち込みを見せた2009年の5.5%から拡大しており、政府が同上限引き上げを前回行った2006年以降最大の比率となった。
米国内の大半の地域(住宅価格の中央値が21万9600ドル)では、このローン保証上限が問題となることはない。ただ、不動産業者やエコノミストらによると、カリフォルニア州の一部都市など住宅価格が高騰している地域
では、この上限が市場の圧迫要因となりつつある。
金額ベースで最も大きな引き上げ対象はコロラド州デンバーで、S&P/ケース・シラー住宅価格指数によると
同地区の住宅価格は昨年11%上昇していた。また、テネシー州ナッシュビルについても引き上げられる。
活況が続くカリフォルニア州内の多くでは今年までに62万5500ドルの上限に収まらず、ジャンボローンに流れる借り手が増加している。
不動産情報サイトのジローがウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の依頼に基づき行った調査によると
、9月の時点ではサンノゼの販売リストにある半分以上の物件がジャンボローンを必要としており、この場合、
借り手が支払う頭金は25%が想定されている。この傾向は、サンフランシスコの物件の約44%、ロサンゼルスの36%、サンディエゴの35%でも見られる。
カリフォルニア州以外でも、マイアミ州からフロリダ州フォートローダーデールにかけての地域やデンバー市
街地で約28%の物件が、テキサス州オースティンでは23%の物件が同様の状況だ。
多くの買い手にとって政府保証ローンからジャンボローンへ移行したからといって、金利面で大きな負担が生
じるわけではない。例えば、ウエルズ・ファーゴの30年物固定住宅ローン金利は24日現在、政府保証ローンの場合4.125%かこれより多少高い水準だが、ジャンボローンの場合3.75%だ。
むしろ、借り手の多くにとってハードルは、ジャンボローンを借りる資格要件が厳しいことだ。ファニーメイ
やフレディマックでは場合によって頭金3%でも認められるが、多くのジャンボローンを提供する金融機関は10%あるいは15%を下回る頭金を認めていない。借り手のクレジットスコア(民間信用調査会社が信用度を点数にしたもの)も通常、ジャンボローンではより高得点が求められる。
住宅ローン会社ファースト・キャピタル・グループのマシュー・カーソン氏によると、同氏が手がけるローン
では8割近くの借り手にジャンボローンが必要だが、この割合は5年前、全体の半数に満たなかった。
同氏によると、自分の担当地域はIT業界の高所得層が中心で、ジャンボローンを利用するだけの収入を得ているが、多額の頭金が払えないか同ローンで必要な月額返済額6カ月~1年分相当の貯蓄がないケースが多い。
ジャンボローンの要件は通常、住宅ローン市場で政府の役割を制限するためのものだが、連邦保証上限が最後に引き上げられる前の05年、ジャンボローンの適用範囲は35万9650ドル超で、市場の2割超を占めていた。
住宅市場危機の際に民間資本が枯渇したため、議会と規制当局はファニーメイやフレディマックの役割を拡大し、暫定的に保証上限を73万ドル近くまで引き上げた。一方、住宅価格が急落する中でも全国基準の41万7000ドルは維持された。
FHFAは13年にこの引き下げを検討したが、議会や業界の強い反対を受け、これを取り下げた。ただ、借り手は、同上限の再引き上げが正当化されるには、住宅価格がさらに上昇するまで待たねばならない状況だ。
インサイド・モーゲージ・ファイナンスの発行者、ガイ・セカラ氏は、ジャンボローンの市場シェアについて
「過去の平均に極めて接近している」とし、「政府の役割拡大が必要だという意見は出ないだろう」と指摘する
。
-0-
Copyright (c) 2015 Dow Jones & Co. Inc. All Rights Reserved.