内閣府は「政策コメンテーター委員会」の設置を決め、委員とコメンテーターを発表した。消費税率10%への引き上げについても活用すると報じられているが、委員会の議論はどのような方向に進むのだろうか。
政策コメンテーター委員会は、経済財政諮問会議の下の専門委員会として設置され、諮問会議における議論を深めるために各界有識者の意見を提供するものだ。伊藤元重・東京大学教授を会長として、12人(学者・エコノミスト7人、経済界4人、政治家1人)で構成されている。
委員会が決めたテーマについてコメントを出すのが、政策コメンテーターであり、47人(学者・エコノミスト22人、経済界22人、政治家3人)。前出の委員12人もコメントできるので、総勢59人(学者・エコノミスト29人、経済界26人、政治家4人)となる。
なぜ、今になって、このような政策コメンテーター委員会を作ったのだろうか。かつて筆者が経済財政諮問会議特命室で運営事務方を務めていた経験からも興味深い。
専門委員会を作るのは、新しい方向の政策を打ち出す場合が多く、諮問会議では時間がかかり間に合わない場合、専門調査会を作って対応したこともある。
しかし、今回の政策コメンテーター委員会は、学者やエコノミストからの意見を吸い上げて諮問会議の資料にするだけなので、本来であれば事務局がやれば十分だ。わざわざ専門調査会やその下のコメンテーター会合を設置するのは、その人たちの名前を使いたいためだ。しかも、その人数が多い場合には、個人の意見の「内容」より、「数」を役所側が欲しいということだ
ここで思い出すのが、昨年8月に行われた消費増税のための集中点検会合である。これは経済財政諮問会議の下で行われた会合で、総勢60人(学者・エコノミスト24人、経済32人、政治家4人)。その8割程度が増税に賛成したが、その多くは経済に対する影響が軽微だと予想していた。
今年の12月に、消費税率10%への再増税を決める際、再び集中点検会合をほぼ同じメンバーで行う予定である。
しかし、増税に賛成したメンバーの経済予測は外れていたわけで、その信頼性が揺らいでいる。役人的な感覚からいえば、集中点検会合の増税賛成有識者はもう使えない状況だ。
そこで、代わるものとして、政策コメンテーター委員会を作ったのだろう(集中点検会合との重複は5人)。しかし、政策コメンテーターの顔ぶれをみると、7割以上は増税賛成と思われる。したがって、集中点検会合と政策コメンテーター委員会の両方から意見を聞いても、ほとんどが増税賛成となるだろう。
両会合とも個人名が明らかになっているので、今回はすべての人が消費税増税した場合の経済影響について述べるべきだろう。これらの会合は個人資格なので、そのくらいの説明責任は必要だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)