2014/06/18 日本経済新聞
「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産構成と同じ比率になるよう日本株を買い増してください」。東日本プラスチック工業厚生年金基金(東京・台東)の常務理事、栗城靖(54)は10日、運用を委託する信託銀行に指示を出した。
市場の値動きから前月末時点のGPIFの資産構成を推測し、基金の資産を調整する。狙いはGPIFと同じ利回りを確保すること。運用の規模を大きくするため基金が国から預かっている「代行部分」はGPIFと同じ利回りが求められる。運用が成功し利回りを超過した分は基金の取り分になるが、不足分は基金が穴埋めする。資産構成をGPIFに合わせておけば「穴が開く心配はない」。
長引く低金利や過去の株安で財政難に陥った基金に解散を促す改正厚生年金保険法が2013年6月に成立。解散に向けて動き出した栗城が「最も大事な対策」として取り組んだのが、GPIFと運用を合わせることだった。
栗城は実は少数派ではない。厚生年金基金は全国に530程度あり、約9割が解散を選ぶとみられている。解散すれば代行部分は国に返上しなければならない。コンサルティング会社のタワーズワトソンの社長、大海太郎(50)は「代行返上を控える基金はほぼGPIFと運用を連動させている」と指摘する。
9~10月にGPIFが運用を見直し、日本株の比率を引き上げれば「我々も引き上げざるを得ない」と栗城は話す。
会社員と公務員の年金制度の一元化を15年10月に控え、共済年金の運用も急速に変わる。「モデルポートフォリオは運用を制約するものです」。厚生労働省大臣官房参事官の森浩太郎(50)は3月、国が開いた公的年金の運用方針を決める検討会で、公務員や私学職員が加入する共済年金の代表者に説明した。
共済はGPIFと共同で模範となるポートフォリオを設定し、これを基準に運用する。独立していた共済の資産構成は今後GPIFにさや寄せされる。例えば、国家公務員共済の日本株比率は13年3月末で7%弱。GPIFの昨年末の約17%より低く、買い増しが必要となる。
資産規模は共済が約50兆円、基金が約18兆円。約130兆円のGPIFが日本株比率を高めれば共済や基金も同じ方向に動く。市場は買いの連鎖をはやすが、年金が自主的な判断を捨て株式への傾斜を強める姿には危うさもつきまとう。(敬称略)
【図・写真】東日本プラスチック工業厚生年金基金の栗城常務理事は運用をGPIFにそろえる
「赤信号、皆で渡れば怖くない」じゃないの?
または、
「猿でも猫でも豚でもringoでも運用できる」