回覧板

ひとり考え続けていることを公開しています。また、文学的な作品もあります。

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4905-4908

2023年06月30日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4905
カボチャが小さな実を付けていた
黄色くなって枯れていくものもあり
日毎に大きくなっていくものもある



4906
人間世界にずいぶんなじんできたから
カボチャが小さな実を付け育っていく
のをふしぎに思わない場所にいる



4907
そんな場所から眺めていても
〈ふしぎだなあ〉
と止めようもなく言葉が湧いてくる



4908
人の世界と大自然とに
またがると
いつもの自然な光景がゆらゆらしてくる


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4901-4904

2023年06月29日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4901
身体に限らずことばのからだも
病むことがあり
飛び交う言葉が普通に見えても熱がある



4902
熱のあることばが
「昨日あの人に出会ったんだ」と言い出せば
無音の(キ、キキキ、キャア)を響かせている



4903
言葉は記号に収まりきらない
あふれる情感や
気配や匂いを放っている



4904
犬猫の泣き声も記号と捉えた瞬間に
モノクロの
マンガのひとこまになってしまう


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4897-4900

2023年06月28日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4897
まとまった言葉のない時代
長い長い時間の
〈あ〉〈え〉〈い〉〈う〉〈お〉の流れ



4898
電灯がぱあっと点(つ)く
以前には
同じような火や明かりの物語があった



4899
小さい子の〈ああ〉〈うーうー〉をくり返して
幼い人類は
ことばの人間を歩いて来た



4900
小さい子のことばの足音が
〈ぐっぱん ぐっぱん〉
今日も響いている


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4893-4896

2023年06月27日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4893
ことばの足が逃げる逃げる
どこまで逃げるか
世界はどこまでも追って来る



4894
世界の側の追跡する言葉は
有無を言わせぬ
徴税に似ている



4895
ことばの足は走る走る
世界の淵まで走る
姿の見えないことばの逃走と追跡の物語



4896
ことばは夢を見る
穏やかな時間の
流れの中にことばの足が浸かっている


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4889-4892

2023年06月26日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4889
言葉も権力とは無縁ではない
世界の渦中のことばのからだの
意志の物語を通して言葉は現れ出る



4890
言葉が心や人を揺さぶり
動かすように
言葉は権力網も忍ばせ世界に張り巡らせる



4891
どんなに無頼でも強固な意志を持っていても
道端の小さな花
をそっと避けていかないなら朝は来ない



4892
権力線のエスカレーターに乗り慣れて
朝の光も 支配恭順馴致の
ソフトな流れにしか見えないなら明日は来ない


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4885-4888

2023年06月25日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4885
人並みを超えていたら
ささいなことでも
押し押され推していく



4886
そう言えば遙か動物生でも
上に立つ
厳(きび)しい条件があったっけ



4887
ぼくらの現在(いま)でも
遙かはるかなところから
深みで押し押され推している



4888
自分にはどんなにいい人に見えても
上と下の配置を感じたら
やわらかな権力線が走っている


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4881-4884

2023年06月24日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4881
線を置き引きはじめる絵と同じく
言葉が選び置かれて
ひとつの世界が起き上がる



4882
鮮やかな色の流れの横に
薄い水溜まりがあり
言葉もまた喧噪(けんそう)に静かに佇むものもいる



4883
線や色が重なり分岐し
ひとつの絵が構成される
言葉たちもまたことばの意志に沿っていく



4884
絵でも言葉でも
作者の思い通りにはならない
無意識の線も引かれてある


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4877-4880

2023年06月23日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4877
ことばもからだのように自然だ
自らの振る舞いに
気づくことなく生きている



4878
そんなことばも夢は見る
事務的な文体の中にも
夢の匂いが微かにある



4879
現在の細々(こまごま)とした
言葉の流れ
の中には夢の破片も混じっている



4880
日々飛び交う言葉たちにも
深い 遙かな 時間の
濃くなった夢の刻印が微かにある


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4873-4876

2023年06月22日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4873
ことばのからだは泣く笑う飛び跳ねる
だからといって
放たれた言葉が泣く笑う飛び跳ねるとは限らない



4874
泣いた後にはどこかそんな気配がする
ことがあり
言葉も泣いた匂いを微かに放っている



4875
確かに言葉も複雑だ
にんげんの
心や振る舞いと同じく複雑系だ



4876
例えば放たれた言葉から
女の子の本心を ことばの姿を
追跡し突きとめるのは難しいな


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 4869-4872

2023年06月21日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ



4869
ふと鏡に映った姿を見つめている
ことがあり
そんな言葉を無言の内につぶやく



4870
まぼろしの鏡を意識した
ことばのからだも
鏡に触れてしまった言葉たちを放つ



4871
言葉って複雑怪奇だね
ひとりっきりでも
無数のものの関係網を生きている



4872
ひとりっきりと遠い他力と
そんな渦中に
ひとりひとり小さな火を点し続けている