[短歌味体 Ⅲ] ああシリーズ・続
2990
遠目には「つまらないものですが」
「おお」「ああ」と
身を屈め身を起こしの奇妙な礼儀に見える
註.『ゴンチャローフ日本渡航記』P296「日本人の奇妙な挨拶」を読んで。
2991
時には騒々しいぞ
圏外の
方にも目や耳を向けている
2992
自然と重力に
付き従い
ああ今日はと自分に目や耳は下りていく
[短歌味体 Ⅲ] ああシリーズ・続
2990
遠目には「つまらないものですが」
「おお」「ああ」と
身を屈め身を起こしの奇妙な礼儀に見える
註.『ゴンチャローフ日本渡航記』P296「日本人の奇妙な挨拶」を読んで。
2991
時には騒々しいぞ
圏外の
方にも目や耳を向けている
2992
自然と重力に
付き従い
ああ今日はと自分に目や耳は下りていく
覚書2018.12.30
例えば、元号をいつ発表すべきかなんてささいなばかなことや日々のひどい政治・行政や日々生活苦であえいでいる人々や・・・何にも考えないわけではない。おそらく誰でも日々の自分やその周辺のことを重力の中心としているが、それだけでなく、ちらりとでも社会についても思い考えることはあるだろう。
人は生命力盛んな成年期ばかりではない。社会以前の赤ちゃん時代も社会から一歩退いた老年期もある。また、人は、目覚めて活動している昼間の時間ばかりではなく、夜の眠りの時間もある。(夜間の仕事の人々は、昼夜が逆になるかもしれない) 同様に、人は外に表出される言葉だけではない。
人は誰でも沈黙の中でも思い考えるものだ。その世界は、外に表現される言葉よりある意味重く深い。成年期中心、目覚めている時中心、外に表現される言葉中心で、―そのこと自体はいいとしても―その中にそれ以外のものが総体として意識されていないならば、それらから生まれる考えは人間総体を踏まえたものではなく部分的なものとならざるを得ない。
また、若い時は―わたしもそうだったが―自分はこの世界の根幹や全てをわかったと勘違いしたり、横着になりやすい。しかし、例えば、社会に出る以前でまだこの世界を十分経験していない少年が、この世界を十分にわかることは難しい。思い込みを含めて少年期なりのわかり方はあるだろう。
長く生きていればわかってくるが、この世界はわたしたちが年を重ねる毎にまた違った地平に違った顔つきで現れてくる。少しずつ世界は深みと表情を変えていくように見える。誰もがいくらかは見誤って、ああそれはまずかったなあと後から内省することがある。
少年でも大人でもあり得ることだが、また誰でも多少はそれはあることだが、無意識的に自分が今いる場所のみをすべて思い込む感じ考え方は、人間存在を本質的に見誤ると思う。それは、自分を、そして他人をも見誤るだろう。もちろん、見誤っても現実は推移するだろう。しかし、それは見誤りに沿ってではなく、人間の無意識的な主流に沿ってであると思われる。
「データベース・吉本隆明を読む」12月の更新情報
データベース・吉本隆明を読む
http://dbyoshimoto.web.fc2.com/
12月の更新の情報
「言葉の吉本隆明②」に、
2018.12.06 新規項目552 「歴史の動因 ①」を新たに追加。
2018.12.10 新規項目553 「戦時下の日本 ①」を新たに追加。
2018.12.13 新規項目554 「戦時下の日本 ②」を新たに追加。
2018.12.15 新規項目555 「戦争の本当のくぐり抜け方」を新たに追加。
2018.12.18 新規項目556 「吉本さんのこと ①」を新たに追加。
2018.12.22 新規項目557 「眼に見えない困難」を新たに追加。
2018.12.27 新規項目558 「吉本さんのこと ②」を新たに追加。
2018.12.30 新規項目559 「歴史理解」を新たに追加。
[短歌味体 Ⅲ] ああシリーズ・続
2987
〈あ〉は瞬時に起動するが
その間に
山越え川越え丘を越えて来る
2988
どこから来るかって?
もちろん
人の時間の海の深みからさ
2989
〈あ〉には樹木の響きや
川のせせらぎや
人声も溶け込んでいる
[短歌味体 Ⅲ] ああシリーズ・続
2984
無数の微小の〈あ〉が
飛び立って
ぶんぶんぶん〈ああ〉をかたち成す
2985
微小の〈あ〉には なぜか
ほのかに
遙かななつかしい匂いする
2986
極微小時間の洞(ほら)
を抜け出ると
〈ああ〉が呼吸し始める
[短歌味体 Ⅲ] ああシリーズ・続
2980
沈黙の内につぶやく
〈ああ〉ならば
外からの反作用はない
2981
無いと言うブラックホールでも
何かあるんだろう?
さあ、さあ、ざあざあざあああ
2982
沈黙の空洞に
ぶつかり
〈ああ〉が変色して決まった棚に落ちていく
2983
誰にもあるさあるある
沈黙の
内なる対話ちゅうもんだよね
[短歌味体 Ⅲ] ああシリーズ・続
2977
「ああ」という言葉の手前の
水路に
風が立ち水面が揺れている
2978
水面から飛び立つ鳥は
言葉の
形を成して飛んでくる
2979
水面には名残惜しげの
無言の
あいさつが漂っている
[短歌味体 Ⅲ] ああシリーズ・続
2973
「ああ」というつもりが
つまづいて
「あ ああ ああああ」と決壊する
2974
だいたいは「ああ」と言うつもりは
バリアーに
押し返されて黙っているなあ
2975
〈ああ〉の木の実を食べたから
〈ああ〉の森
じぐざぐ ざぐじぐ踏み進む
2976
〈ああ〉と〈おお〉顔は似てても
ビミョウに
性格ちがう双子のように分かれる
[短歌味体 Ⅲ] ああシリーズ・続
2970
「タンカミタイって、きさんなめとっとや?!」
(ああ ナメテハイナイケド
少しはなめてるのかもしれない)
2971
言葉軍ぐいぐいぐぐい
と刺さってくる
〈うっ〉とか〈ああ〉とか耐えるほかないことがある
2972
効果的に布陣して攻め来る
言葉軍
でも〈うっ〉とか〈ああ〉は本心のちからさ
[短歌味体 Ⅲ] ああシリーズ・続
2967
差し出す手に我が家のネコは
ある時は
なめある時はかすりかみつく
2968
血のにじむ指を見ては
つぶやくよ
ぱられるぱられるぱられるよ
2969
もうひとつ舞台を上がって
おだやかな
距離の内にネコと居る