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ひとり考え続けていることを公開しています。また、文学的な作品もあります。

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 645-648

2020年06月30日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ


645
初めての王は気さくだった?
出会えば
「おうよろしく」「ああはい」と応答する


646
おうが初代の〈おう〉になり
二代目が
勘違いして〈王〉座に座る 厳


647
タイムマシンに乗り込んで
初めての
〈おう〉に出会ってみたい


648
タイムマシンというのは
自分の足や手や目
時間旅する相棒さ

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 641-644

2020年06月29日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ


641
やわらいだ休日も終わり
今日も
蝶は韃靼海峡(だったんかいきょう)を渡っていく


642
字画の響きに背を押され
張り詰めた
一日の韃靼海峡 波高し


643
韃靼人のダンスはいつまで
生き残るか
いつかは演歌とともに消えていくのか


644
消えても消えても次々に
手を替え品を替え
ダンスも歌も韃靼海峡に湧く

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 637-640

2020年06月28日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ


637
言葉の滑り台は
快適さ
するするとーんと伝わっちゃうな


638
でもほら見てごらん
滑り台の下
イヤホンして音楽に身を揺すってるよ


639
猫さんはみゃんと鳴く
あるいは鳴かない
でもなんとか滑ってくるね


640
胸に手を当てると苦しい
もどかしい
沈黙坂が眼前に浮かぶ

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 633-636

2020年06月27日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ


633
イメージは気分次第の
〈わたし〉
が主人のようで背景は根深い


634
遠くても近くても
人の心の
姿を捉えるのは難しいね


635
育った時間と時代の空気
呼吸し
イメージを放つのは〈わたし〉なんだけど


636
ああ ここからは
山口さんの
〈いや違うよ〉という奥深い無言が見える

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 629-632

2020年06月26日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ


629
イメージは距離の関数
みたいに
変幻自在に現象する (ちょっとちがうような気がする)


630
距離は物理的と精神的
二重に
触手に関わってくる (暗黒物質の影響波もありそうだ)


631
もちろん近すぎても
見えない
情動・概念に逸れていくイメージもある


632
例えば山口さんが
どう見えるか
好悪のスペクトルが光り出す


覚書2020.6.25

2020年06月25日 | 覚書
覚書2020.6.25


1.人間の感じ考えることには無限の自由度があるように見える。

2.確かに、人間の感じ考えることの枝葉にはひとりひとり異なる多様性と固有性があるように見える。

3.しかし、人間の感じ考えることの根幹は、いくつかの型に分類できそうだ。

4.そして、その根幹は、一般に時代性に、時代性に見つからないように見える時は現在まで人類が生み出してきた感じ考えのいずれかに収束するように見える。

5.つまり、数千年、あるいはもっと下って数十万年、この時間の深みから湧いてくる人間の感じ考えることの型やその道行きには、〈人間性の有り様〉から来る必然のようなものがありそうに思われる。

6.そういう〈人間性の有り様〉に規定されて絶対性に近く見える人類の歩みの流れにも、例えば「人柱」という考え方や行動は迷妄であったじゃないかというような内省もあり得る。こうして人間は、戦争一つとっても容易には変わらない、数々の負の歴史遺産を受け継ぎながらも、それらに対抗して現在から絶えず目ざそうとする人類の理想のイメージの主流をも思い描いてきたことも確かである。

7.長らく毛沢東の専属医師だった李志綏(リチスイ)の『毛沢東の私生活 上』(文春文庫 1996年)を読み終え、今『毛沢東の私生活 下』の半分ほどまで読み進んだ。それで知り得たことを踏まえて言えば、例えば、共同性の悪と残虐の限りを尽くしたスターリンのソ連や毛沢東の中国やポル・ポトのカンボジアは、〈革命〉がどうしてそんなことになってしまったのかという人類史の負の遺産としてしかわたしたちには残されていない。皇帝政治や専制政治の亜種とも言えるそれら近代の〈革命〉が、始末の悪いことに「マルクス・レーニン主義」というイデオロギーの印籠を振り回しながら、共同性として組織化されると悪と残虐の限りを尽くすことがあり得ることを示した。装いは、「マルクス・レーニン主義」というイデオロギーにもとづく近代的な革命だが、内実は、最後で最悪の皇帝政治、専制政治であったと言えるだろう。毛沢東の中国は、誤った政策や権力闘争によって、数千万人もの人々を餓死や死に追い込んでいた。

 しかしそれでも、人間や人間社会の有り様として、現在から絶えず目ざそうとする人類の理想のイメージとしての〈革命〉が死滅することはないが、それら近代の負の〈革命〉とは絶対に違った道を踏むべきことを教えていることだけは確かである。

8.吉本さんは、晩年によく、お猿さんからぶっ通して人類をたどり直さないと現在や未来を読み間違うと言われていた。このことをわたし流に捉えれば、本質的にはこうでしかありえないという人間という存在の有り様とそれが織り成す歴史、それはなぜか表舞台ではなく歴史に底流するように存在してきている、しかし、それこそが人類や歴史の真の主流であり、それをはずしたら、人間の思考は無限の自由度の海を空想的に泳ぐほかないだろう、ということになる。

 このことは、大きな歴史の動向や社会の動向に限らず、ひとりの人間について、その有り様と心意を捉える場合にも同様に言えると思う。

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 623-628

2020年06月25日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ


623
人に関わりなく
雲仙岳は
悠久の時間の海に立つ



624
例えばいろんな角度と
距離の
雲仙岳の物語があり



625
非・雲仙岳の物語でも
避けようもなく
この列島の山の物語に収束する



626
今ではもう山山山と
ならされて
山々の神話は押し入れ深く



627
山の神話は死滅しても
姿形変え
深い遺伝子の奥から滲み出ている



628
言葉を今この耳目だけで
イメージする
幻の雲仙岳が煙る
 
註.坂口恭平のパステル画「雲仙普賢岳」を見て。


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 619-622

2020年06月24日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ


619
テレビドラマと違って
普通は
ひとり黙っているな


620
テレビドラマはそんなにも
間が恐いのか
言葉ベタベタ貼り付けている


621
ドラマの架空世界の
言葉たち
無数の間に沈黙の川が流れている


622
舞台上の合間に
演技者は
沈黙の川に足浸けてくつろぐ

詩『言葉の街から』 対話シリーズ 615-618

2020年06月23日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ


615
葉が一枚ふるえて落ちる
ただそれだけで
周りの言葉の色が変わっていく


616
記号の顔してても
情動の
暗い裏道通って矢が飛んでくる


617
たかが言葉でも群れなして
じんわりと
有刺鉄線で囲んでくる日々もあるよ


618
ジーンとくる通りの裏では
ずり落ちて
オレオレ詐欺に熱中する言葉たち


詩『言葉の街から』 対話シリーズ 610-614

2020年06月22日 | 詩『言葉の街から』
詩『言葉の街から』 対話シリーズ


610
ひとりだから弱者というわけではない
三階や
高層ビルの言葉たちに生身でぶつかっていくさ


611
ぶつかったぶつかってしまった
(ズズンズズズ)
幻の言葉壁はひと揺れもしない


612
放(はな)っても放っても
言葉は
突き刺さりはしない言葉壁の向こう


613
言葉壁の向こうとこちら
の現在は
黙する言葉川の主流に注いでいる


614
そうして言葉川は
主流の
秘密を抱いて静かに今を貫流している