とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

立川志の輔独演会に行きました。

2022-08-25 10:00:53 | 落語
 山形市中央公民館ホールで開催された『立川志の輔独演会』に行きました。志の輔師匠はもはや人間国宝級と言ってもいいのではないかと思えます。すばらしい話芸でした。

 山形県の山辺町の「やまのべどんぶり亭」が主催の落語会です。山辺町の峯田さんという方が努力なさって山形にたくさんの落語家を呼んできます。峯田さんは明治大学の落研出身で、志の輔師匠の後輩にあたる方だそうです。その縁で志の輔師匠が毎年山形で独演会を開催しています。

 今回は「異議なし」と「唐茄子屋政談」の2席。

 「異議なし」は志の輔師匠による創作落語。マンションのエレベーターに監視カメラをつけるかつけないかでマンション住民がもめるという話。人間描写が見事です。そんなことありえないだろうと思いながら、でも実際の会議でありえるような会話です。

「唐茄子屋政談」は、親から勘当され、食うこともできない生活をしていたボンボンの若旦那の話。世をはかなんで身を投げようとしていたところを叔父に助けられる。叔父は若旦那に唐茄子を売るように命じるが、若旦那は売ることができない。重くて街中で倒れたところを町民が助けてほとんど売ってしまう。のこり二つになったところで自分で売ろうとしたところに、貧乏な母親が唐茄子を半分売ってくれと言ってくる。その貧乏さを哀れんだ若旦那が自分の稼いだお金を母親に渡してしまう。それが大事件を起こしてしまうのだが、そ結局は丸く収まるという話。厳しさと優しさそして、様々な身分の人間の描写が見事に演じ分けられます。

 小三治師匠が亡くなって、落語家の人間国宝がいなくなったという記事を読みました。確かに最近の落語ブームを考えても、落語家がもう少し優遇されてもいいのかなと思いますし、それだけの話芸を持っている落語家は多いと思います。ですからたくさんの人間国宝候補がいると思います。その中でも志の輔師匠はそれに値する落語家だと思います。立川流の落語家は人間国宝にはなりづらいのかなという気もしますが、これだけ客を呼べる落語家はほかにはいません。

 私が子供のころは落語は当たり前の芸能でした。しかし今は落語はたくさんの芸能のうちのひとつにすぎません。そんな落語が今輝いているのは、志の輔師匠をはじめとする優れた落語家さんが努力してきたからです。ぜひ落語家さんをもっと評価してほしいと思います。
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『立川志の輔独演会』に行きました。

2022-05-31 08:14:22 | 落語
 5月29日(日)に、仙台市電力ホールで開催された『立川志の輔独演会』に行きました。演目は以下の通り。

  二人癖   志の大
  たけのこ  志の輔
  犬の目   志のほん
  異議なし! 志の輔
  帯久    志の輔

 「帯久」というのは有名な噺なのでしょうか、私は初めてでしたす。本来は上方の落語だったものを、舞台を江戸日本橋に移して江戸の落語にしています。

(あらすじ)
 呉服屋の和泉屋は正直者で人情味が厚く、かつて商売は繁盛していた。しかし、家族を病気でなくし、それに加えて火事で店を失い、失意の中で生きていた。一方、呉服屋の帯屋の主人は、自分のことしか考えない強欲な人物で商売もうまくいかない。そんな帯屋だったが、和泉屋が繁盛していた時にから金を借りて、それを結果的にちょろまかしてしまった。和泉屋もそれに気が付いていたが、証拠もないし、自分の商売もうまくいっていたので、そのままにしておいた。帯屋はちょろまかしたお金をうまく使い、商売がうまくいくようになっていた。10年後、無一文になっていた和泉屋は店の番頭に、自分の店をもたせようと帯屋に借金を申し込むが、帯屋に冷たくあしらわれ茫然自失となる。帯屋の普請中の離れに、自分の吸っていたたばこの火が偶然燃え移り、火付けの罪に問われる。この事件を大岡越前が人情味のある名裁きをする。

 和泉屋は人情味があり、しかもきちんとしていることはきちんとしている。帳面に借りた金額と、それを返した印をしっかりと何度も書いていくところを、志の輔師匠はきちんと省略せずに語ります。客もそれをしっかりと心にとどめます。これがしっかりととどめているからこそ、のちの展開が腑に落ちるのです。噺の肝が見えているからこそできる技です。

 志の輔師匠の語りは、表現、間、テンポを自在に使い分け、くわしく描写すべきところは詳しく、省略してもいいところは思いっきり省略し、飽きさせない工夫をしています。客は自然に集中して噺に引き込まれていきます。

 「自在」と書きましたが、これは練習しなければできやしません。繰り返し稽古してきたことが、自然に自分のものとなっているのです。どっかのお話を語っているのではないく、志の輔師匠自身の語りとして、客に直接とどくのです。お弟子さんたちと明らかに違うのはそこです。これが芸の魅力というものです。

 いいものを聞かせてもらいました。
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小三治師匠のこと

2021-10-10 15:26:19 | 落語
 柳家小三治師匠が心不全のため亡くなっていたというニュースを見た。81歳だったという。本当に残念でならない。

 小三治師匠は近年毎年2月に山形市の東ソーアリーナ(元シベールアリーナ)で落語会をしていた。東ソーアリーナというのは井上ひさしさんが作った劇場で、落語家ならば小三治師匠を呼べという井上ひさしさんの生前の言葉を聞いて、小三治師匠が毎年来てくれることになったという。その話を毎年のように小三治師匠が言ってくれる。人のつながりを大切にしていた人だった。

 小三治師匠といえば「まくら」であった。とにかく長い。どこにどうつながっていくのかわからない。しかしその流れのなかで本題につながっていく。客の反応を見ながら話が毎回変わっていくのだ。そこが名人芸だった。

 芸人らしい反権力の庶民派であった。手厳しい政治批判をよく聞くことができた。

 近年、病気の話もよくしていた。心配はしていたのだが、座布団に座ればいつもの通りたのしい落語をしてくれる。来年の2月もきっと山形に来てくれるのだろうと思っていた。

 ご冥福をお祈りします。
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『春風亭一之輔独演会』に行きました。

2021-02-14 07:40:28 | 落語
 2月13日、山形県米沢市で開催された『春風亭一之輔独演会』に行きました。一之輔さんは、最近の漫才のような笑いを落語に持ち込んでいます。人物の描写が派手でどぎつい。その結果古典落語が今風の笑いを生みだしています。大いに笑わせていただきました。

 演目はお弟子さんの与いちさんの「道具や」、そして一之輔師匠の「加賀の千代」と「らくだ」。

 「加賀の千代」は、ちょっとおつむが足りない甚兵衛さんが、大家さんにお金を借りにいくという噺。大家さんとそのおかみさんが甚兵衛さんが来るのを喜んで待っていたという描写が一之輔さん独特のものでおもしろいものでした。

 「らくだ」は前半のみ。私は後半の不条理な世界が好きなのですが、あまりやることがないようです。この噺は誰が考えたのだろうと思うほど奇想天外です。タイトルになっている「らくだ」が死んでいるところから話が始まるのですから最初から面喰います。やくざっぽい「半次」と気弱な「屑屋」が、酒を飲み始めるところからの立場が逆転するところがおもしろい場面です。一之輔さんは凄みもありますし、一方では気弱な描写もうまく人物描写が見事です。それによって自然な笑いが生まれます。楽しませていただきました。

 米沢市は雪の多い都市です。本来ならば「雪灯籠祭り」が行われているはずでしたが、新型コロナのせいで今年は中止となってしまいました。そんな中でも、みなさんの努力でなんとか開催された落語会でした。はやく状況が改善してくれればと思います。

 
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東ソーアリーナ『柳家小三治落語会』(2021年2月11日)に行きました

2021-02-12 06:25:45 | 落語
 東ソーアリーナで開催された『柳家小三治落語会』に行きました。

 東ソーアリーナというのは去年まで「シベールアリーナ」と呼ばれていた劇場で、井上ひさしさんが生前シベールという企業の社長と一緒に山形市に作ったものです。この場所に井上さんの蔵書による図書館「遅筆堂文庫」が併設されています。この劇場で落語をするならば小三治師匠をという井上さんの遺志に感銘した小三治師匠が、毎年この時期に来てくれています。今年は9回目だそうです。私は6回目です。毎年楽しませてもらっています。

 今年は三之助さん、〆治さんのベテランのお弟子さん二人を連れての落語会です。小三治師匠は今年は一席だけでした。例年だともっと多いのですが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のためなのか、それとも高齢のためなのか少し短い出番となってしまいました。しかし短いと言っても1時間ほどの高座です。もちろん十分楽しませてもらいました。

 今年の演目は「猫の皿」です。一番弟子の〆治さんが、山形の新庄市の出身で、山形市の大沼デパートに当時珍しかったエスカレーターを見る修学旅行に来たというマクラから始まりました。その後木製のエスカレーターの話になり、宮城の疎開の話になります。そして自分を騙すように宮城に置いていった母親との確執に話が発展します。ちょっとしんみりします。しかし今年はあまり寄り道しません。その後テレビの『鑑定団』に出た話をマクラにして、骨董屋の噺につなげていきます。猫の描写が見事です。自然に猫がそこにいるように感じられます。

 最後に、自分に向けられた拍手を止め、新型コロナウイルスと闘っている医療関係者に拍手を送るように言って幕となりました。さすがです。


2016年
https://blog.goo.ne.jp/masasamm/e/53880939c9e3591344e5b391e2273da5
2017年
https://blog.goo.ne.jp/masasamm/e/480373eb8fa9424ec1b76f5295837118
2018年
https://blog.goo.ne.jp/masasamm/e/6087604b13fe6b3100b35304bde50dc5
2019年
https://blog.goo.ne.jp/masasamm/e/e4f8f28d19cf3bd13494eccb89e1c72b
2020年
https://blog.goo.ne.jp/masasamm/e/a257b915970fe901abccec91f45bd10e
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