とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『オッペンハイマー』を見ました。

2024-04-27 05:43:28 | 映画
アカデミー賞7部門を獲得した映画『オッペンハイマー』を見ました。3時間もある作品でしかも難解だと聞いていたので見るべきか悩んでいたのですが、やはり見るべきすばらしい映画でした。

第2次世界大戦中、アメリカはドイツの核兵器開発に神経をとがらせていました。理論物理学者のオッペンハイマーは、原爆開発プロジェクトの委員長に任命されます。マンハッタン計画です。原子力爆弾の開発には成功しますが、実際に見るその威力は、想像をはるかに超えるものでした。そこから国家の混乱が始まり、オッペンハイマーの混乱が始まります。その時ドイツはすでに降伏しています。しかしいろいろな理屈をつけて、原爆をすでに敗戦が決定的な日本に投下してしまうのです。はたしてその必要があったのか。

この映画は見る人の立場によってさまざまな感情を喚起します。日本人からすれば、結局はアメリカ人の日本人差別によって、罪のない日本人が無差別に殺されたことに対しての怒りが沸き起こります。国家という巨大権力がどれだけの罪を犯しているのかという点も考えなければなりません。科学技術が人間存在の不安を生み出す事の哲学的な意味を考える必要もあります。アメリカ人から見れば、また違った点に注目するかもしれません。観客それぞれがそれぞれの混乱を抱えるのです。

切り取り方に監督の忖度はあるのでしょうが、できる限り、平等な眼で描こうとしているということは伺えます。見る人が冷静な目で見つめ直す必要があるのです。オッペンハイマーの苦悩は観客の苦悩であり、それぞれの登場人物の苦悩も観客の苦悩であるように作られています。

もはや、軍事力競争は止められない状況になってしまいました。さらにはITによって人類は凡てをコントロールされてしまいつつあります。しっかりと考えないといけません。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NTL『ディア・イングランド』を見ました。

2024-04-15 17:45:51 | 映画
NTLというのは、イギリスの国立劇場ロイヤル・ナショナル・シアターが厳選した名舞台を映像化して映画館のスクリーンで上映する「ナショナル・シアター・ライブ」のことです。毎年数本が上映されます。その最新作『ディア・イングランド』を見ました。サッカーを題材にしているので、試合の場面など処理をどうするのか心配だったのですが、見事に処理され、逆に演出の手際のよさが目立つ作品に仕上がっていました。映画ファンも、演劇ファンも必見です。

サッカーの実在のイングランドチームを描くドキュメンタリー的な要素ももつ作品です。長い間低迷していたイングランドチームに、ガレス・サウスゲートが代表監督に就任します。サウスゲートはかつてイングランド代表チームの選手でした。彼はワールドカップでPKを外し、戦犯のような存在となっていました。サウスゲートは、代表チームを大きく改革します。中でも大きな改革は選手の心理面を重視し、カウンセリングを導入します。順調に成績を上げていきますが、やはりすべてがうまくいくわけではありません。時には内部の衝突もあります。しかし進むしかない。成功と失敗を繰り返しながらイングランドチームは進んでいきます。

現在でもサウスゲートは代表監督ですし、ここに出ている選手も多くがまだ現役代表のようです。ですからイングランド代表の応援演劇ともなっているのです。しかしそれだけではありません。特に描かれるのはPKです。決めて当たり前のPKを外してしまうシーンが数多く出てきます。人間の心の弱さと、それを克服しようと努力する精神力のぶつかり合いが心を打ちます。

エンターテイメント要素の強い演劇ですが、しかし深い作品です。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『ブルックリンでオペラを』を見ました。

2024-04-10 07:33:55 | 映画
映画『ブルックリンでオペラを』を見ました。アメリカ映画の題材探しの苦悩を感じてしまいました。

アン・ハサウェイ、ピーター・ディンクレイジ、マリサ・トメイら私の様な特別な映画好きでないものでも何度か見た事のある有名俳優をそろえた映画です。登場するのは修道女にあこがれる精神科医、オペラを書けないオペラ作曲家、恋愛依存症に苦しむ船舶士、なんでも法律で解釈してしまう速記師など、一癖ありそうな人たちばかり。こんな人たちが困難を乗り越えていくというプロットの映画です。

この映画、私にはコメディなのか、シリアスドラマなのかわかりません。無理やりに筋を作ってしまったというような苦しさが感じられてしまいます。現代のアメリカの問題をつまみ食いのように取り上げ、とりあえず一本の映画を作ってみましたという感じしかないのです。

従来の映画を作れば当然ハラスメントが含まれてしまいます。かといって社会問題を真正面に扱うと重い映画になってしまいます。一般受けする映画をつくろうとしたらこうなってしまったという映画なのかと感じてしまいました。
 
劇中劇のオペラはけっこうおもしろそうでした。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『瞳をとじて』を見ました。

2024-04-04 17:43:16 | 映画
ビクトル・エリセの31年ぶりの長編映画『瞳をとじて』を見ました。静かな緊張感が胸を揺さぶる名作でした。

私が学生時代、「ミツバチのささやき」が公開されて大ヒットとなりました。六本木のシネヴィヴァン六本木という映画館で私も見ました。非常に衝撃的でした。内容は刺激的なものであったのにもかかわらず、抑えた演技で、淡々と描写していく映画でした。しばらくして『エル・スール』という映画も公開されました。こちらも衝撃を受けました。ところがエリセ監督はその後あまり映画を作っていません。『マルメロの陽光』というドキュメンタリー映画は公開されましたが、それ以外の映画は作っていなかったのです。おそらく引退したんだろうなと思っていました。ところが今回、本当に久しぶりに新作が公開されたのです。驚きました。同時に期待しました。さらに同時に期待を裏切られるのではないかと心配もしました。期待以上の作品でした。やはりエリセはすごい映画人です。

映画を製作中に役者が突然失踪し、その映画が未完成のままお蔵入りとなります。その役者がどうしていなくなったのか。映画監督のミゲルが探るという謎解きの映画です。その謎は半分は解けたと言っていいのですが、半分解けないまま終わってしまいます。解けない謎の部分が、登場人物の心の中で渦巻き交錯します。それぞれの人の思いが想像が聞こえてくるような気になります。この作りが絶妙です。

この映画、雑に思える暗転がたくさんあります。この暗転が不思議な奥行きを作っています。それこそ「瞳をとじて」なのかもしれません。観客は隙間を想像します。たくさんの可能性をさぐりながら見続けるのです。エリセはこれを計算して作り上げているように感じます。

もう一つのポイントは、主人公の監督が海のそばに住んでいるということです。『エルスール』では南へ行かずに終わってしまったのですが、この監督は南に住んでいるということなのでしょうか。スペインの歴史が背景にあるような気がしてなりません。

『ミツバチのささやき』の主人公アナ・トレントが出演しています。今やきれいなおばさんとして存在感を発揮しています。

この映画を見ることができたことは、ひとつ人生の落とし前をつけたような気になりました。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!』を見ました。

2024-03-29 16:01:33 | 映画
アメリカの株式投資を描いた映画『ダム・マネー ウォール街を狙え!』を見ました。巨大マネーに抵抗した個人投資家たちの夢を描いた気持ちのいい映画でした。

2020年の実話をもとにして作られた映画です。主人公はキースという平凡な会社員。キースはゲームストップ社というビデオゲームメーカーに投資しており、自身の投資する姿を動画配信もしています。キースの動画は多くの人に支持され、ゲームストップ社の株は徐々に上がっていきます。みんながキースの夢を支援し、それを自分の夢にしたのです。金融業界のヘッジファンドは、ゲームストップ社の株は絶対に下がると踏み、大量の空売りをします。ところがゲームストップ社の株は逆に急騰します。大富豪たちは大損してしまい、社会問題に広がります。

この映画は株式市場を舞台と下大金持ち対一般庶民の構図の物語です。日本においても大企業だけが儲けて、その他大勢は相対的に貧しくなっている状況です。しかしやはりこれはおかしいのです。庶民が夢を持てる国にならなければいけません。そういう夢を与えてくれる映画です。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする