とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

書評『演技と演出』(平田オリザ著)

2017-11-01 18:01:01 | 書評
 平田オリザさんの演劇論。平田さんの方法論を紹介するとともに、最終章ではスタニフラフスキーとブレヒトの演技論について触れ、演技論は常にこのふたつの揺れのなかにあるという目から鱗の論まで紹介している。

 平田さんの主張はわからなくはないのだが、私にとっての演劇の醍醐味は人間の関係性がもっと象徴的に表れるところにある。明確なストーリーの中に人間のドラマがうまれその表現に感動するのである。だから平田さんの主張は私にはあまりすっとは入ってこない。むしろ平田さんの主張は演劇論というよりも教育論であるように思われるのだ。学校の中でどのように人間関係を構築していくのかという点に彼の興味はあるのではないか。あるいは人間関係の複雑性を認知させ、その中でどのようにふるまうべきかを問うているように思われる。

 平田さんの主張は賛同するにしても批判するにしても、理論としておもしろく考えるべき点がたくさんある。演劇関係者や、教育関係者は読むべき本だと思う。
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書評『知ってはいけない』(矢部宏冶著)

2017-10-29 08:39:52 | 書評
 沖縄の基地問題でアメリカに対する必要以上の配慮がなされてきたこと、あるいは東日本大震災後すぐに原発再稼働に動くことなど、日本にはなんらかの隠された外圧があるのではないかという疑念が常にあった。先日池上彰さんの番組でも日本では横田基地の上空は民間機が飛行できないということを解説していた。日本は本当に主権国家なのか疑問に感じる場面に多く出くわすようになった。

 この本ではアメリカと何らかの外圧があるのではないかという疑念に対して解りやすく解答が示されている。外圧というよりも密約だったのだ。日本人の問題先送り体質が西洋では通用しないのにもかかわらず、その場しのぎで密約を交わし、それが今になって大きくのしかかってきている。しかしそれを表ざたにすることはできない。だから釈然としない思いだけが残る。

 この本を読むと沖縄の問題、原発の問題すべての謎が解けていく。もちろんそれを単なるアメリカ批判、現政権批判にしてはいけないが、事実をしっかりと見つめて、それを隠すことをまずやめさせなければならない。日本はいつまでもアメリカの属国であってはいけない。
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書評『「国語」入試の近現代史』(石川巧著)

2017-09-27 07:27:35 | 書評
 入試に「国語」の問題が取り入れられるようになったのが、大正時代である、そこから現在のマークシート型の問題まで「国語」の入試問題を振り返っている本である。現在私は入試問題に国語教育が振り回されているのではないかと思っており、そのことについての考察をしている。この本は私に大きな示唆を与えてくれた。

 大学入試問題が高校国語教育と大きな関連がある。大学入試に国語教育がコントロールされてきたと考えられるのだ。大学入試の作成者がそれを意識していたわけではない。高校側が意識してきたのである。生徒にしても教師にしても大学入試に突破することが最大の目的となるので当然そうなるであろう。

 しかし近年の大学入試問題は暴走している。もはや国語教育の範囲を逸脱しているといってもよい。本来の国語教育とは何なのか。もっとしっかりと考えなければいけないし、そのために大学入試がどうなっていけばいいのかをみんなでよく考えなければならない。

 高校国語教師にとって非常に参考になる本である。

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書評『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』(川添愛著)

2017-09-24 06:33:47 | 書評
 理論言語学をもとに言語を理解するロボットを作ろうとするとどのような困難が伴うかを説明してくれる本です。

 現在自動翻訳機や、会話をするロボットなど、IT技術が言葉分野にまでどんどん進出しています。Siriなどスマホで音声で聞くと音声で答えてくれる機能などもあり、よくこんなことまでできるようになったと感心します。まだまだ先だと思っていた技術が、いつの間にかできるようになっている。IT技術の進化は加速度的です。しかし現実には人間にはまだまだ程遠い。

 言語はITにとって大きな壁になっているとのことです。ロボットの「東ロボ君」が東大受験をするというプロジェクトが進められていました。をあきらめたのも、やはり国語の試験で点が取れないからだそうです。文脈理解ができない。もちろん今後克服していくかもしれませんが、言葉はロボットにとって大きな壁であることはあきらかです。

 この本はコンピューターが自然言語を処理するためにどのような方策をとっているのかを、イメージしやすく教えてくれます。そして今現在ぶち当たっている壁についても教えてくれます。言葉と人間は切っても切れない関係にあります。言葉とは何か。考えるべき大きなテーマだと思います。おもしろい本でした。
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書評『定年後 - 50歳からの生き方、終わり方 』(楠木新 著)

2017-09-14 08:09:29 | 書評
 先日仕事がらみの飲み会の後、そこの店主と少し話をした。その中で店主は「仕事をしている人は定年を迎えるともう来なくなる。しかし、農業をしている人はずっと来てくれる。いつまでも現役だからだ。」ということを言っていた。仕事が終わると「一杯飲みに行く」というのもなくなるのかと、淋しくなった。

 仕事が人生であり、その仕事が終わるときに人生も終わる。それがこれまでの日本の男性の生き方だったのだ。まだ生まれ差だった土地で生きているならばいい。古くからの友人もいるだろうし、そんな友達と遊ぶこともできよう。しかしそうもいかない人のほうが多い。

 私ももうすぐ定年である。ただあてもなく惰性で定年後を過ごすよりも、何か自分なりの生き方をしたいものだと最近特に思うようになってきた。今現在がまるでだめだというわけではないが、可能性はまだまだあるはずだ。

 定年後の自由を本当の意味の自由にしたい。そのためのヒントを与えてくれる本である。
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