とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『瞳をとじて』を見ました。

2024-04-04 17:43:16 | 映画
ビクトル・エリセの31年ぶりの長編映画『瞳をとじて』を見ました。静かな緊張感が胸を揺さぶる名作でした。

私が学生時代、「ミツバチのささやき」が公開されて大ヒットとなりました。六本木のシネヴィヴァン六本木という映画館で私も見ました。非常に衝撃的でした。内容は刺激的なものであったのにもかかわらず、抑えた演技で、淡々と描写していく映画でした。しばらくして『エル・スール』という映画も公開されました。こちらも衝撃を受けました。ところがエリセ監督はその後あまり映画を作っていません。『マルメロの陽光』というドキュメンタリー映画は公開されましたが、それ以外の映画は作っていなかったのです。おそらく引退したんだろうなと思っていました。ところが今回、本当に久しぶりに新作が公開されたのです。驚きました。同時に期待しました。さらに同時に期待を裏切られるのではないかと心配もしました。期待以上の作品でした。やはりエリセはすごい映画人です。

映画を製作中に役者が突然失踪し、その映画が未完成のままお蔵入りとなります。その役者がどうしていなくなったのか。映画監督のミゲルが探るという謎解きの映画です。その謎は半分は解けたと言っていいのですが、半分解けないまま終わってしまいます。解けない謎の部分が、登場人物の心の中で渦巻き交錯します。それぞれの人の思いが想像が聞こえてくるような気になります。この作りが絶妙です。

この映画、雑に思える暗転がたくさんあります。この暗転が不思議な奥行きを作っています。それこそ「瞳をとじて」なのかもしれません。観客は隙間を想像します。たくさんの可能性をさぐりながら見続けるのです。エリセはこれを計算して作り上げているように感じます。

もう一つのポイントは、主人公の監督が海のそばに住んでいるということです。『エルスール』では南へ行かずに終わってしまったのですが、この監督は南に住んでいるということなのでしょうか。スペインの歴史が背景にあるような気がしてなりません。

『ミツバチのささやき』の主人公アナ・トレントが出演しています。今やきれいなおばさんとして存在感を発揮しています。

この映画を見ることができたことは、ひとつ人生の落とし前をつけたような気になりました。

コメント
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