とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

夏目漱石作『虞美人草』を読みました。

2023-08-31 08:47:04 | 夏目漱石
漱石の『虞美人草』を読みました。この本読んだつもりでいたのですが、実は初読でした。漱石の最初の新聞小説。おそらく夏目漱石の小説でなければこの小説は消えてなくなっていたはずです。それくらい小説としての出来はよくない。私も漱石の作品だから最後まで読みましたが、最後まで何がよかったのかわかりません。とは言え、これが書かれた時代はまだ小説の形式や文体が確立していなかった時代であり、試行錯誤の途上だったのだと思われます。

なにしろストーリーが雑すぎます。「藤尾」という女性、そしてその母は性格の悪い女です。自分の利益しか考えていません。ではそれ以外の人物はどうなのかと言われれば、やはりかなり打算的です。最後に正義の味方のように突如として「宗方君」が活躍しますが、そこまでの人物造型は曖昧であり、正義の味方が悪を退治するという勧善懲悪の小説と読むこともできません。つまり人物の描写が雑なのです。裏がないのです。人間そんなに単純ではありません。なんとなく下手な芝居の台本のような作品なのです。

ただし、登場人物を平等に描くという方法を実践しているという点で注目に値します。普通主人公らしい主人公がいるはずなのですが、この小説にはそれがいません。だれが主人公なのかもわかりません。だから読者は感情移入する人物が見つけられません。それぞれの人物を客観的な視点で見つめることになります。これこそ「自然主義」です。もしかしたら漱石は自分なりの「自然主義」を実践しようとしたのかもしれません。

漱石の初期作品は近代という時代との戦いの歴史です。
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林家木久扇師匠「笑点」卒業

2023-08-29 06:30:00 | 落語
昨日「24時間テレビ」で林家木久扇師匠が来年の3月で「笑点」を卒業することを発表した。私にとって木久扇師匠こそが「笑点」の顔だったので、大げさに聞こえるとは思うが、「ひとつの時代の終わり」のように感じられる。

木久扇師匠は今年85歳である。「笑点」を見ていても痛々しい感じがして、そろそろ潮時かなという気はしていた。とは言え、「笑点」に初期のころより出演して、「与太郎」を演じてきた。「落語家らしい」落語家ではなく、「落語らしい」落語家だった。それが人気だったのだと思う。

木久扇師匠の「卒業」はとても残念ではあるがしょうがない。しかし木久扇師匠の「卒業」をしょうがないと感じるように、自分の老いを実感せざるを得ない。終わりが近づいているという気持ちは、いいものではない。これからは終わりゆく時間を楽しむと思うしかない。

木久扇師匠の引退まであと半年もある。年齢も年齢なので健康には十分気をつけて、与太郎を演じてください。
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こまつ座『闇に咲く花』を見ました。

2023-08-27 08:18:26 | 演劇
東京・紀伊國屋サザンシアターでこまつ座『闇に咲く花』を見ました。何度も見た作品ですが、この年になってきてわかることも多く、しかも「今」の社会状況と重なることもあり、改めてこの作品のすごさがわかりました。すばらしい舞台でした。

この作品はは、井上ひさしによる「昭和庶民伝三部作」の2作目として1987年に初演された作品です。戦時中の庶民の不条理な現実を描いています。こんな時代は二度と作ってはいけないと感じながら、日本、あるいは世界の状況がどんどん「ものがいえない」状況になっている今を感じてしまいます。恐ろしさと怒りと、何とかしなければいけないと言う思いが強くなります。

劇中の「忘れちゃだめだ。忘れたふりはなおいけない。」というセリフは耳に残ります。人間はなんでもすぐに忘れてしまいます。そしていざとなれば忘れたふりをしてごまかしてしまいます。それが社会を崩壊させるのです。

神社の存在意義も強く訴えかけます。おそらく多くの神社関係者は不快に感じるはずです。しかし権力と結びついた宗教は本来の姿から変質します。それは伝統ある宗教でも新興宗教でも変わりはありません。人を救うのではなく、組織を救うものになってしまうのです。

演出は栗山民也。この作品を初演の時から演出している。山西惇、松下洸平、浅利陽介、尾上寛之、田中茂弘、阿岐之将一、増子倭文江、枝元萌、占部房子、尾身美詞、伊藤安那、塚瀬香名子が出演する。水村直也さんは生のギター演奏で劇中の音楽を奏でます。山西惇と松下洸平は、こまつ座で『木の下の軍隊』で共演していました。

今こそ必要な演劇でした。
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山形県の学校教育は崩壊状態だ

2023-08-25 18:41:47 | 教育
 厳しいことを言わせていただく。山形の学校教育は崩壊状態である。

 先日、米沢市の中学生が熱中症で亡くなった。学校では部活動を早く終了させたあと、自転車で帰宅途中に熱中症になったのだ。学校を責めすぎるのも気が引ける部分もあるが、生徒ひとりの命を失ったのである。重大事案として受け止めなければならなかったはずだ。

 ところが昨日、山形の中学校で熱中症になり、10数人の生徒が救急搬送されたという。昨日は予報段階から厳重な注意を呼び掛けていた日である。それなのにグラウンドで練習をしていたのだ。しかも今日になって、救急搬送された後も練習を継続したという報道がなされた。なんなのだろうこの学校の教員たちは。

 山形は東北だから涼しい土地であり、今年の夏の暑さを甘く見ていたのではないかと思われる方もいるかもしれない。しかしそれは違う。山形の夏は暑いのだ。熱中症も頻繁になっている。今年の熱い夏の危険性は十分誰もが理解していたのだ。

 この事件に対して市教委では「予定されていた体育祭の練習を予定通り実施しなければならないという意識もあったのでは」と言っているようである。これは学校を擁護している発現であろう。組織ぐるみの無能さを露呈している。

 学校は常識が通用しない社会となっているのだ。特に山形県の組織はどこもかしこも「忖度」ばかりであり、まともなことを言うのが難しい雰囲気となっている。まともな意見を言う人間は「あがすけ野郎」と差別される。それが山形という土地柄なのだ。

 保護者のみなさん、十分気を付けてください。学校を信じているとどんなことが起きるかわかりません。それくらい山形県の教育は崩壊状態なのです。自分の身は自分で守ることも必要のようです。
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映画『ウィ・シェフ』を見ました。

2023-08-24 07:32:47 | 映画
映画『ウィ・シェフ』を見ました。典型的なお仕事映画ですが、孤独なフランスの難民の問題がきちんと描かれており、気持ちよく見終わることができる映画でした。こういうタイプの映画、大好きです。

カティは有名レストランでシェフとして働いています。ある日、オーナーシェフと大ゲンカをして店を辞めてしまいます。やっとのことで見つけた新しい職場は移民の少年たちが暮らす自立支援施設でした。カティはとまどいながらもプライドを捨てずに働き始めます。施設長ロレンゾはカティに、少年たちを調理アシスタントにすることを提案します。最初はあまり乗り気ではなかった少年たちも、自分たちの未来を夢見て意欲的に働き始めます。カティも前向きに働く意欲を取り戻し、自分の人生を変えようとします。

この映画で印象に残るのは移民の少年たちの表情です。言葉もうまく通じない社会で必死に生きています。祖国の親を助けるために、自分の生きる場所を見つけようとしているのです。国外退去になってしまうケースもきちんと描いています。厳しい現実と戦いながら前を向く子供たちの姿は印象に残ります。

日本は「移民」とは言わずに「技能実習生」という名前で、海外からの労働者を受け入れています。「技能実習生」をだますように雇用するケースも報道されています。日本は治安がいいと言われますが、それは海外からの移民をほとんど受け入れていないからです。もし受け入れれば今の治安を維持できなくなることが予想されます。経済的な格差は治安を悪化させるからです。

日本の虫のよすぎるこの政策が、日本の閉鎖性を加速させます。この閉塞感が社会を固定化させ、権力が制度化され、さらに格差を広げています。

この映画のように欧米の国は格差の拡大に反発する力があります。そういう力を日本は身に付けなければなりません。
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