駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『わたしの耳』

2020年09月12日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 新国立劇場、2020年9月11日19時。

 作/ピーター・シェーファー、演出・上演台本/マギー。85分の3人芝居、全1幕。

 劇場は検温に足拭きマット、手指消毒、物販はなくてプログラム替わりのリーフレットは入場後に自分でカウンターから取っていくスタイル。分散退場。席は市松売りで幕間もないので、客席は静かでした。ほぼひとり客に見えましたしね。ウエンツファンって若い女性の層もあるのかもしれないけれど、いかにも新国立の翻訳劇らしい男性客も多かったです。

 私は『エクウス』や『アマデウス』を観ていないので初シェーファーになるかと思います。
 1960年代のロンドン、のお話だそうです。ボブ(ウエンツ瑛士)が先日バッハのコンサートで偶然知り合ったドリーン(趣里)を自宅でのディナーに誘い、会社の同僚テッド(岩崎う大)がシェフとして助っ人する…というような状況の、ワン・シチュエーションの舞台です。3人のシーンももちろんありますが、3とおりの組み合わせのふたりのシーン、やりとりが印象的な舞台、かな。
 原題は「The Private Ear」で、再来週観る予定の『あなたの目』(「The Public Eye」)と対になる作品となっているようです。なので両方観てからでないと上手く語れない作品なのかもしれません。とりあえず今回に関して言うと、ナイーブでちょっとひとりよがりな青年ボブはドリーンに夢や理想を押しつけすぎていて、本当のドリーンはクラシック・ファンでもないごくふつうの今どきの女性で、何事にも如才ないタイプのテッドとの方がよほどウマが合うし、でもテッドは口先だけ優しくて誰とも真剣に交際しそうにないタイプでもあるので、まあ要するに誰も何も上手くいかないんだろうな…という、だけの、お話だったのかな、という印象でした。人は相手の話を自分が聞きたいようにしか聞かない、という、ね…
 ただ、ボブが泣きの1回でドリーンに聴かせた『蝶々夫人』は確かに彼女の心を一瞬動かしたようだったし、そういう音楽の力って絶対にあるんだと私は思うんだけれど、でもじゃあそれで流されてキスできたかとか恋が生まれたかというとそうでもないわけで、だからってレコードを傷つけるボブには私は本当に腹が立ちました。そんなひどいことをするなんて、おまえなんざ真のクラシック・ファンじゃないよ、「音楽がわかる自分」を好きなだけのただのナルシストの青二才だよ…!と思いました。
 傷つけられたレコードが何度も同じところを再生して、暗転になって終わる舞台です。でも私のこの感想が正しいのかはわかりません。

 役者は3人とも絶妙に上手く、会話はイライラさせられるところもあればユーモラスでつい笑っちゃうところもあり、楽しかったです。ドリーンの、モーブとワイン色のツートーンみたいな靴がすごくお洒落だったなあ…だからやっぱり彼女はボブとは合わなかったんだと思うのでした。










コメント
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