駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『フラッシュダンス』

2020年09月19日 | 観劇記/タイトルは行
 日本青年館、2020年9月18日18時半。

 1983年、ペンシルバニア州ピッツバーグ。昼は製鉄所、夜はバーのフロアダンサーとして働くアレックス(愛希れいか)は、プロのダンサーになることを夢見ていた。そんなアレックスに製鉄所の御曹司ニック(廣瀬友祐)は一目惚れをする。一方、親友のグロリア(桜井玲香)からダンスの名門学校シプリー・アカデミーのオーディションを受けることを勧められるアレックス。ダンスの恩師であるハンナ(春風ひとみ)からも背中を押されるが…
 原作/トム・ヘドリー&ジョー・エスターハス作パラマウント・ピクチャーズ映画『フラッシュダンス』、日本語版脚本・訳詞・演出/岸谷五朗、音楽監督/大崎聖二、訳詞/長島祥。1983年に公開された映画の脚本・原案であるトム・ヘドリーを舞台版脚本に迎えてミュージカル化。全2幕。

 会場販売がなかったので、わざわざ通販してまでは…とプログラムを未入手なので、ざっと検索したり公式サイトを読んだだけなのですが、これは日本初演のオリジナルミュージカルで、海外初演のものの輸入版ではない…のかしらん? …と思っていたら、イギリス初演の輸入版だとご教示いただきました。わりと作りが、いかにも海外のミュージカルの、そっけないくらいに芝居パートがなくてダンスと歌でがさがさ進むタイプのものに見えたので、もっと丁寧に手を入れればいいのに…とか思っていたんですよね。もともと、むしろ狙って、こう作られたのでしょう。
 コンセブトとしては、悪くなかったと思います。なるべくシンプルにつなぎたかったのかな、と。でも、私の席が端だったからか、音響のせいか訳詞のせいか歌唱のせいか、歌詞が聴き取りづらいことが多くて、何を訴えている場面なのか今ひとつ伝わってこない気がしたので、台詞や演技でもっと補完してくれると楽だった気がするんだけどな…と思ってしまったのです。でも私は「考えるな、感じろ」が大の苦手で、たいていの作品に「台詞が足りない」とダメ出しするタイプの人間なので、まあ感じ方、考え方が合わないタイプの作品だったということでしょう…ちなみに役者はみんなとても達者だったと思いました。主人公やメインのストーリーと直接関係がないような大ナンバーも楽しいと思いました。だからこそ、もうちょっと歌詞が聞こえれば、知らない曲でももっとノレるし感動したと思うんだよなあ…
 ちなみに映画は未見。かの有名な主題歌…というか「What A Feeling」しか知りませんでした。働いている女の子がダンサーを目指す話、だとは認識していた気がします。そういう意味では、老婦人の存在といい、昨夜観た『ビリー・エリオット』と似ているな?とも思ったし、でもあれも決して台詞が丁寧な作品ではなかったけれど、もっとビンビンいろいろ伝わってきたんだよなあやはり歌詞の差かなあ…とかついつい考えながら観てしまいました。そんなに複雑なストーリーではないので、なおさらダンスと歌で押す構成は正解だと思うんですよね。そして何度も言いますがキャストもよかっただけに、ちょっともったいなく感じました。あと、美術(土屋茂昭)もよかったです。
 オペラでもバレエでもミュージカルでも主人公がヒロインのことは多くて、なので王子さま役というか相手役男性の求愛ソング、孔雀ソングが私は大好物なんですけれど、ザッツ王子さまスタイルの廣瀬くんも、グロリアの恋人ジミー(福田悠太)のラブソングもとてもよかったです。てかグロリアっていい役だなあ! 乃木坂の人なんですね、めっちゃよかった! 声とか、顔も遠目には私にはちょっとゆきちゃんにも見えて、こういうお役のOGも観たいよ、とか思いました。アンサンブルにはあちもいましたね、元気にバリバリ踊っていて嬉しいよ! 春風ひとみもさすがなんだけど、意外やソンちゃんがとてもよかったです。
 そしてもちろんちゃぴは圧巻でした。まさしく座長! なんせ顔が小さくて頭身バランスが異常にも見えるのは、もしかしたら鬘とかで補正した方がいいくらいなのかもしれません。でも冒頭、出てきて、ヘッドホンつけて、音楽に耳を傾けているらしき風情だけでもう、舞台が始まりました。素晴らしかったです。もちろんダンスも、歌もいい。
 ニックの口利きがどの程度オーディションに効いたのかはわからない。私だったら、今の作品だったら、オーディションのチャンスは生かして、ニックなんざフればいい、と思いました。そしてひとりではばたいていけアレックス!と思いました。よかれと思ってのことだろうけれど、ニックがしたことはあまりにも余計なことだし、要するにアレックスの才能を信じていないってことで、芸術に理解がないってことです。階級差もあるし、愛があっても多分この先上手くいかないよ、と冷静に考えれば判断できる。でもちょっと昔の作品だし、まあハッピーエンドでもいいかな、と許してあげよう。シンデレラストーリーってほどでもないしね。てかここまでの状況になって、リストラ以外に経営者ができることって何があるんですかね…
 赤い水着みたいな下着みたいなレオタードの場面が有名なんでしょうか? なんか今ひとつハイレグの位置が良くなかった気もしなくもなかったですが、こちらも圧巻でした。堪能しました。
 あと、昨夜の『ビリー~』はオケピの指揮台に明かりがついているのを見たときに「生オケなんだ!」と胸がきゅっとなりましたが、今回も舞台袖にバンドがいる形だったようで、開演前のチューニングの音にきゅっとなりました。宝塚歌劇も早くオケが戻ってきますように…!
 とにかくちゃぴの座長っぷりは素晴らしかったです。シシィよりクリスティーヌより、こういうタイプの作品をやってもらいたいと思っていたファンは多いことでしょう。演目として、公演としてヒットするといいな、と思います。次回作も楽しみです。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする