経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

定額減税と総選挙の看板

2023年10月29日 | 経済
 定額減税が4万円で、5兆円規模とは予想外だった。減税の効果が現れるのは夏くらいになるが、その頃に総選挙なら十分なのだろう。内容はともかく、再分配自体は必要なことで、マクロ運営としても適切だと思う。景気回復時に緊縮をして失速というデフレ期のパターンから脱する形である。「減税」は、やめた時点で一気に5兆円の緊縮になるから、1回限りでは済まず、縮小しつつ着地するプランが必要だ。それは総選挙時の看板施策になる。

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 「減税」は、2年分の増収を「還元」するものだという。2022年度の税収増は4.1兆円、2023年度の予想額は3.5兆円で計7.6兆円だから、5兆円はかなりの大きさだ。もっとも、地方税でも、2022年度は1.9兆円、2023年度は2.1兆円で計4兆円ある。加えて、厚生年金が2022年度に0.7兆円、2023年度に1.0兆円で計1.7兆円だ。「還元」すべき増収の対象を拡げると、総計13.3兆円になるから、4割弱の還元になる。

 定額減税が4万円ともなると、住民税は払っているが納税額が減税額に満たない者が900万人くらい出てしまう。給付で対応するようだが、市町村の事務負担は大きい。納税額が4万円以上の者も、源泉徴収者が複数月に渡って徴収しないなどの面倒な事務が発生する。このあたりは、定額を給付する制度的インフラがないから致し方ない。欧米に倣って、恒久的な制度が本当は必要なのである。

 来年は、年金改革が政策課題になるが、厚労省は、目減り抑制には、 納付5年延長や厚生年金の拠出増で対応するようだ。2019年の財政検証では、適用拡大というオプションがあったが、もう十分ということかもしない。50人未満に拡げるには、重い負担を軽減する「還元」が必要になるが、捨て置かれるだろう。適用差別があって、正規と非正規の分断が少子化を始め様々な問題を起こしているが、日の目を見ないことになる。

(図)


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 岸田政権は、やりたいことが分からないと言われるが、来年は、少子化が止まらない数字が出る中で、厚生年金の財政検証かあり、年金改革が焦点になる。合理的に考えれば、恒久的な給付制度を足がかりに、勤労者皆保険を実現し、年金水準の低下を防ぐという選択になる。十分に選挙の看板になるものだが、また的を外したようなことになるのだろうか。「お手元に税金が還元されましたよ」と訴えるだけでは、人気は上がらないと思うがね。 


(今日までの日経)
 減税や給付1回で終わらず 公明・山口氏。地価バブル超え 85市町村。防衛増税、来年度は開始見送り。自民税調、所得制限を検討 定額減税。

コメント (1)
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