経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *小論、基本内容もご覧ください

5/31の日経

2012年05月31日 | 経済
 第一生命研の熊野英生さんの「金融政策は限界? 自然利子率を考える」は、的を射た論考だったね。北野一さんの「収益8%へのこだわり説」にも通じる内容だ。ゼロ金利下の投資抑制を、厚くなったリスクプレミアムに求めるのは、筆者も、まったく同感だ。

 この論考では、どうすれば良いかまでは書かれていないが、それは、本コラムの読者なら、もう分かるだろう。リスクは、需要に対するものなのだから、その安定が大切である。少なくとも、政府が早々に需要を抜くことばかりするようでは、投資は出てこない。

 この6月から、年少扶養控除の廃止によって、年間ベースで5000億円の所得の吸い上げが行われるが、その代わりに、金融緩和で5000億円分の投資増を図るのが、どれほど難しいか。こうした全体を見回した、戦略的な思考が必要なのである。

(今日の日経)
 大飯原発再稼動へ。首相が問責閣僚の交代探る。市場の動揺が企業に波及。円高が加速。欧州委・スペイン財政改善を。EVから家庭に電力、月4400円節約、33万円。鉄道総研が超伝導ケーブル。電ガス一斉値上げ。LED天井灯4割増産。経済教室・次点価格方式・安田洋祐。

※EVからの電力がこれほど経済的とは。※久々におもしろい経済教室だった。
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5/28の日経

2012年05月28日 | 経済
 ※再生エネに「異業種参入」というニュースを聞くとバブルを思ってしまう。慣れない企業でも採算が取れると踏むのは異常な事態だ。商売が甘くはないのは、競合がいるからで、固定価格での買い取りは、競争がない市場なのだ。これでは参入規制も避けられなくなる。「自由で健全な市場経済」を掲げる日経は批判して然るべきだろう。

 ※日経は、解雇しにくいことがデフレの犯人というわけかい。リーマン後に非正規が大量に切られたけど、不足だったのかね。米国で物価上昇が見られるのは、日本で言えば、まだ1997年以前の段階だから。ハシモトデフレ並みに「財政の崖」をやらかせば、同じことになる。日本のデフレは、需要が輸出頼みで、少し良くなると緊縮に走って円高にし、回復を潰しているだけのこと。

(今日の日経)
 再生エネに異業種参入。ギリシャ銀の資本不足1兆円。社説・重み増す太平洋諸国との絆。エコノ・需要不足がデフレの犯人?。核心・二院制のあり方・土谷英夫。エイサー・開発の外部依存が弱点に。選択と集中のウソ・大西康之。経済教室・ものづくり再生・延岡健太郎。

※太平洋諸国の最大の価値は文化。政治や経済や軍事で覇を競うのではなく、文化に共感することで、深い絆が生まれる。カバには慣れないがね。※二院制の問題は、3/20の「日本に合った選挙制度の構築」に書いたとおり。憲法改正なしに解決できる。※集中してから選択なんだよ、本当は。
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5/25の日経

2012年05月25日 | 経済

(今日の日経)
 GSが日本で再び不動産投資。ミャンマー・日本の技術で火力。シャープ・もう抜かれとるやないか。福井県が再稼動へ圧力。規制庁法案審へ自民容認。サークルKがヤマトに。日本型ATMを中国で。太陽光発電の素材が下落。経済教室・減速も緩やかな成長・愛宕信康。

※GSも目敏いね。※ホンハイの技術も高いのか。※WSJの社説はケインズ批判。これで一本書こうと思ったが、時間がなくてね。
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5/24の日経

2012年05月24日 | 経済
 今日の日経の一面特集は、投資判断の遅れは機会損失としているのだが、これは成長経済での感覚。だから、成長しない日本では手元資金が積み上がる。収益も、そうでね。2012年3月期は小売業の業績が良かったが、震災で需給が引き締まり「バーゲン」を減らせたから。少しの需要増加が利益を増やし、設備投資を変えるということなのだよ。

(今日の日経)
 ギリシャの資本注入1.8兆円。投資判断の遅れは機会損失、企業の手元資金62兆円と過去最高水準。社説・大津波は想定外だったか。日本のLNGは割高。東電のいびつな収益構造。日銀・追加緩和見送りで円高・株安。米中・南太平洋巡り攻防。ミャンマー・電力不足。日本債買い揺るがず。国際商品、一段と下落。経済教室・関志雄。東大・国際化で遅れ。

※原発が科学を歪めたか。力のこもった良い社説だ。※この構造では、マンションの太陽光を邪魔し続けるわけだ。※このタイミングの格下げは欧州とのバランスか。※中国減速もあるね。※気位の高い東大は国際プログラム参加に消極的。
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企業悪玉論を超えて

2012年05月23日 | 経済
 悲劇は悪意のみによって起こるにあらずだ。最近、消費増税を批判し、法人減税に反対するものだから、「共産党みたいよ」と、からかわれたりするのだが、そうではないんだな。別に大企業が悪いというわけではない。投資せずに、内部留保を積み増すには、理由があるということなんだよ。

 今週のJMMで北野一さんは、持論の「企業が高収益の投資に絞るからデフレになる」という説を述べられているが、この謎を解くのは、それほど難しいことではないように思う。北野さんは、米国の「物価上昇率−2.2%」が日本の物価上昇率になっているとして、日米の物価の連動を指摘しているのだが、もし、日本が無茶苦茶な財政出動をしたとしたら、この連動を政策的に断ち切ることは可能だろう。(MF効果も除けると思う)

 逆に言えば、1997年のハシモトデフレで自分でデフレに突っ込み、ゼロ金利となって金融政策という手段を失ってしまった日本が、財政政策の自由まで捨てているなら、米国の経済に連動することになるのは、ある意味、当然である。そうであれば、日米で物価上昇率が連動するのに何の不思議さもない。

 実際、1993年に景気が底入れして以降、日本の景気は輸出に完全にパラレルになった。輸出と設備投資の相関は恐ろしいほどだ。これは、戦後の日本経済の歴史の中では異常な事態である。なぜなら、輸出から内需へと景気が波及していくパターンが通例だからだ。そうならなかったのは、輸出が増えると、財政を緊縮させ、波及を断ち切ることを、わざわざしていたからである。

 輸出に景気を委ねてしまえば、日米の景気は連動するし、輸出型企業がライバルの米国企業の収益率を意識するのも自然だろう。また、それに影響を受けないはずの内需型企業にしても、財政で内需が潰されているのだから、低収益の事業を膨らませて、量で収益を大きくするわけにもいかない。収益を増やすには合理化一辺倒になる。こうして、内部留保は積み上がっていく。

 企業が高収益を目指し、投資を絞っているのは、ミクロ的な志向の集積というより、マクロ政策への適応の結果なのである。したがって、共産党のように、課税によって大企業から内部留保を取り上げれば良いというのではなく、それが投資に向かうような経済環境を作ってやるべきだろう。少なくとも、政府がスキあらば緊縮を狙うような状況では、設備投資、特に低収益のそれは、とても怖くてできないのである。

(今日の日経)
 火力に新燃料・日揮。企業収益復活への条件・さらば体力勝負・買収と撤退、採算を向上。社説・生活保護。国債購入で欧州中銀に圧力。中国減速に市場が警戒。経済教室。防災計画の実効性・井上典之。
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5/22の日経

2012年05月22日 | 経済

(今日の日経)
 電力のピーク時割高広がる。不良債権化の恐れ地銀に官民でファンド。経済復調と節電疲れ。スペインから預金流出の動き。医療材料の内外価格差調査へ。TOPIXが年初来安値。FT・サムスンは中国の消費に懸念。経済教室・緊急時権限を内閣に・佐々木毅。日経・CSIS提言。

※機構やファンドが続出だ。※中国もいよいよだ。※市場往来にグラフが揃わないのは不便。※権限より体制ではないか。災害に慣れている自衛隊や国交省は機能し、経産省はダメだった。復興に必要な技術系OB公務員の期間採用は東京都任せ。国交省の現場は分権で解体されそうなのだが。※金融の提言ばかり。
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日本経済の実力を解き放て

2012年05月18日 | 経済
 今年の元旦、本コラムは「消費が伸び、日本は予想外に高成長を遂げる」としたが、4.1%成長という昨日のGDP速報の結果は、それが現実になったと言って良かろう。むろん、経済の動向については、複数のシナリオを用意するのが基本であり、その中で一番おもしろいものを、皆さんに披露しておいたということではある。

 さて、今回の高成長に対する一般的な見方は、日経にもあるように、「復興需要が下支え」というものである。たしかに、今回の4.1%は出来過ぎで、エコカー補助金や公共事業の増加に因る部分はある。しかし、あまりそれに引きずられると、消費の地力を見誤るように思う。政策要因を重視し過ぎると、高成長も一時的という判断に傾くからだ。

 まず、4.1%の中身だが、在庫投資の寄与が0.4もある。在庫投資は持続的なものではないので、これを差し引くと2.5%に下がる。公共事業の寄与の0.3も長くは続かない。これも引くなら1.3%となる。今後は、執行に難があるため、あまり伸びない代わり、大きくは減らず、安定的に推移することも考えられる。そもそも、公共事業は、前々期、前期とマイナスが続き、今回、ようやく伸びただけで、水準自体が決して高くないのである。

 続いて、消費に関するエコカー補助金の影響だが、消費の伸びに対する上乗せは、寄与度で0.2くらいではないか。そうすると、成長率は0.5%まで落ちることになるが、その一方、今回は、設備投資と民間住宅が寄与度で-0.5もあって、実勢を踏まえると、マイナスが続くとは考えられないので、結局、日本経済の実力は、3%程度というところだろう。

 こうしてみると、世間が思うより、日本経済の実力は高いように思う。問題は、それを発揮させようという発想がないことだ。「どうせ伸びないのだ」とばかり、6月には年少控除の廃止が行われ、秋には年金給付のカットも始まる。せっかく、消費が中心になって伸びようとしているのに、財政当局は、それを潰そうと躍起なっているかのようだ。

 成長を信じないから、成長させた上で果実を得ようという発想にならず、我慢できずに芽が出た段階で早々に喰ってしまう。日本のエリートの病は深い。成長を加速し、高投資の構造に持っていくには、本当は、果実をさらに成長に投じるほどの思い切りの良さが必要だ。そこまでいかなくても、成長より「公平」を優先する余計な「改革」だけでもなければと思う。日本経済は、実力を解き放つだけで高成長をする。それを示したのが今回の結果だと考えている。

(今日の日経)
 みなし節電で生産維持。社説・成長力強化へやることは多い。景気緩やかな回復軌道、12年度GDP2.2%増。東芝、テレビ国内生産停止。外国人の株売り越し加速。大機・財政破綻への備え・風都。経済教室・高齢者雇用・太田聡一。
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経済の二つの側面と現実

2012年05月17日 | 経済
 日経は社説を変えたようだね。欧州の緊縮財政を日本は見習えとしてきたのに、悲惨な状況を見て、軌道修正というわけだ。間違いは誰でもするもの。どうして読み違えたかを良く反省することが大切だ。「財政再建は、成長の範囲内でしかできない」という基本を改めて確認してほしい。では、消費税3%アップは、成長の範囲内かね?

 ギリシャについて、日経は、「財政の無駄を削りながら、成長分野に資金が回る仕組みをつくれ」とするのだが、こういうのは「ネコに鈴」の議論ではないか。もし、そういうノウハウをお持ちなら、ぜひ教えてほしい。日本でも応用できると思うしね。常識的には、成長の範囲内で、緊縮を進めるしかあるまい。稼がなければ、借金は返せないのだから。

 さて、KitaAlpsさんも、コメントしてくれたように、経済には、実物的側面と会計的側面がある。例えば、震災復興を、財政赤字でしようが、増税でしようが、日本が今持っている生産力でそれを賄うことに違いはない。財政赤字でした場合は、国債を引き受けた国民だけが労力を提供したという会計的な整理になるだけで、それを国民全体が負担した形に整理し直すため、清算をどうするかという宿題が残されるだけである。

 つまり、増税をするとは、請求書の送り先を事前に決めておくだけの意味しかない。むろん、請求先をどうするかは、政治的には非常に大切なことではあるが、だからといって、そのために被災者を待たせておくのは適当ではなかろう。しかも、日本は、生産力が余っていて、復興に振り向けても、何かを我慢せねばならぬ状態ではなかった。もし、生産力が逼迫していれば、直ちにインフレによって全国民が等しく負担することになったろう。

 時間軸で見てみると、今、国債を引き受けた人は、先々、それを引き出して消費するというのが、合理的行動になる。その際には、国債が投資的な内容で使われていないと、供給力が不足してインフレになる。このときに初めて、負担の公平な配分という見地から、増税が必要になる。もっとも、消費しないまま、亡くなるという不合理な行動も十分にあり得る。その場合、相続税によって政府に回収される分は、増税が不要になる。

 よく、「財政赤字は、次世代へのつけ回し」というようなことが言われるが、本当の意味で次世代に引き渡せるのは、蓄積された生産設備という実物だけである。先送りされた財政赤字は、どう分担するかという厄介な政治問題であるだけで、経済問題ではない。政治問題を避けるため、成長を犠牲にし、資本蓄積を少なくするという選択は、次世代に却って不利益なものになろう。

 日本には生産力があるのだから、節度ある財政赤字で、それを引き出せば良い。他方、ギリシャは生産力作りから始める必要があろう。消費的な使途に充てられる財政支出は削ると同時に、投資的な使途の財政支出は逆に増やす必要がある。これは公共事業を指しているのではない。直接、生産を増やし、外貨を稼げるようなものでなければならない。例えば、輸出特区を作って設備投資に補助金を出すとか、ギリシャ観光にポイントをつけるとかである。労働規制の緩和が必要なら、補助金やポイントの対象の事業所で実施するのなら、抵抗は少ないはずだ。

 いずれにせよ、経済を立て直すには、緊縮財政と金融緩和の組み合わせといった単純なものでは済まない。貯蓄を余らせることが、本当に、生産力の増強に結びつく設備投資に充てられるかどうか、その経路を具体的に把握しなければならない。間違っても、経済学の教科書にある「合理的経済人なら、投資するはず」という話を鵜呑みにしてはいけない。現実は、もっと複雑なのである。

(今日の日経)
 欧州不安がアジア波及、ギリシャ選挙後を意識。社説・欧州は成長と財政再建の両立めざせ。衛星・もうけは官需次第。海外マネーは日本国債に。3D館が普及、複製困難に。キャノン・無人化で世界に挑む。非製造業、経常益6%増。経済教室・高齢者雇用・安藤至大。
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成長こそ最大の国益

2012年05月16日 | 経済
 日本のように、国債のほとんど全部が国内で消化されている場合、財政赤字の問題は、国債を持たない人に課税して、国債を持っている人に返すという、再分配の問題になる。つまり、財政赤字を減らしたところで、国全体でみれば、豊かになるわけでも、貧乏になるわけでもない。

 他方、財政再建をやって、経済に需要ショックを与え、成長率を落としてしまうと、国全体が貧しくなるわけだから、すべての人にとって不幸なことになる。もっとも、国債を高値(低利)で保ち、確実に償還してもらうなら、国がどうなろうと関係ないという立場の人もいないわけではないが。

 言わずもがなのことだが、財政は、経済のサブシステムにしか過ぎないのだから、今日の大機小機のミストさんのように、「財政再建こそ最大の国益」というのは、明らかに誤りで、最大の国益は、「成長」でなければならない。いかに、財務官僚のお役目が財政再建であるとしても、国全体としての利益が頭にないのだとしたら、権力は与えられるべきではないだろう。

 戦前、軍部が「国防は我らの役目」とばかりに、権力を振るった結果がどうなったか、語るまでもあるまい。公式的な成長率の見通しが2%を割るというのに、成長のすべてを召し上げるほどの一気の消費増税をやって、経済が無事で済むと思っているのかね。インタゲで増税無用も極論なら、一気の増税に加え、「身を切る」改革と社会保険給付の削減までするというのも極論でしかない。

 最近、「財政当局に権力があるなら、こんなに財政赤字にならない」という説も流されているが、1997年のハシモトデフレで、大規模な緊縮財政の権力を振るい、日本をデフレ経済に叩き込んだために、財政赤字が深刻化したことを忘れてはならない。この反省から、財政を経済全体に位置づけるべく作られた経済財政諮問会議が、単なる「構造改革」の道具になり果てたのは誠に残念なことだった。

 結局、現実的な成長率を設定し、どの程度の緊縮なら適当かという、平凡な経済運営が論争の空白地帯になっているのである。世の中、極論と極論が対立して、ちょうど良いところに収まるとは、なかなかならないものだ。日本において良識の場を作るには、一体、どうしたら良いものだろうか。

(今日の日経)
 東電権益を官民で肩代わり。マネー変調、現金志向に。大手銀36%増益。三菱UFJは上場企業で最高益。ユーロ圏ゼロ成長、独の復調が下支え。大機小機・財政再建こそ最大の国益・ミスト。経済教室・高齢者雇用・八代尚宏。
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沖縄復帰40年を祝う

2012年05月15日 | 経済
 沖縄は暑いところだと思っていたら、東京より涼しいのだそうだ。海に囲まれた沖縄は、夏の最高気温が上がりにくく、東京はヒートアイランドで沖縄の上を行く。しかも、日が暮れると涼しくなる沖縄と違い、東京では真夜中でも暑さが続く。常識とは、かくも現実とはズレるものである。

 今日の日経社説は、記念日ということで、沖縄復帰40年である。これを読むと、東京の常識と沖縄の現実のズレを感じざるを得ない。まず、経済である。かつての沖縄の県民所得は、単に全国最下位というだけでなく、ブービーより更に1割も低いという惨憺たるものであった。それが最下位でさえなくなった。もっと上を目指さなければならないが、素直に「本土並み」と認めるべきではないか。

 30年前の沖縄は、その地に降り立てば、一目で貧しいことが分かったものである。今は、そうした見すぼらしさはない。確かに手厚い振興予算もあったろうが、その国の最貧地域を格差が目立たぬまでに底上げするのは、どれほど大変なことか。筆者は、途上国などの開発を考える上でのモデルケースになり得ると評価している。

 沖縄の公共事業に対する批判も定番だが、観光の二つの目玉である首里城と美ら島水族館は、国の公共事業で作られたものである。これが役立たずとは、誰も思うまい。また、昔の沖縄は、水不足の常襲地帯だったが、着々と進んだダム建設によって、そうした過去は忘れ去られようとしている。しかも、小泉政権以降の「本土並み」の公共事業費の削減で、地元の建設業者に倒産が頻発している有様だ。

 その一方、基地問題への取り組みは、まだまだ不十分である。日経は、「米軍基地の削減は日本の安全保障を損なう」とするが、国際情勢に変化がなくとも、基地を日本が管理するようにすることは可能なはずだ。沖縄の反発には、基地の治外法権な要素がある。荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、自国で管理し米軍に利用させるのは、欧州では普通のことである。敗戦で失った主権を取り戻すという課題は未だ終わっていない。

 今後、沖縄の自立にとって、最も必要になるのは教育の充実だと、筆者は考える。学力の全般的な向上もさることながら、特に成績トップ層の進学実績の悪さは、見過ごせない問題である。沖縄には、公共事業によって、世界最高水準の科学技術大学院(OIST)が創設されたが、沖縄の高校生には、是非、これを見て、勉学に目覚め、意欲を奮って欲しいと切に願う。

 OISTは、東大がこれからという国際化の課題をすべてクリアしている。そこで開催される国際会議は、間違いなく世界レベルである。正直、「沖縄に世界最高が必要か」という疑問もあったが、「東京にしか世界を目指す権利はないのか」と返された。沖縄が目指すべきは、もはや「日本並み」ではない。目標とビジョンは世界にある。自立するとは、そういうものなのである。

(今日の日経)
 ソニー、パナソニックが提携交渉。4電力が計画停電を準備。社説・復帰40年の沖縄は自立に向かえるか。南欧、国債利回り急上昇。国民年金納付率が最低に。特集・安保の要「不惑」の翻弄。経済教室・原子力規制組織・城山英明。
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