経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

4-6月期GDP1次・消費低迷と投資好調の同居

2021年08月22日 | 経済
 月曜に公表された4-6月期GDPの1次速報は、実質成長率が前期比+0.3%、年率換算で+1.3%だった。事前には、マイナスは避けがたいと見られていた家計消費は、予想外の年率+4.2という高さだったが、それでも1-3月期の落ち込みを取り戻せなかった。他方、設備投資は、年率+7.0%もの高成長であり、基礎統計からは、もっと伸びて良いくらいの勢いだ。コロナだからと納得せず、家計消費を押し上げる策を用意しておく必要がある。

………
 4-6月期の家計消費(除く帰属家賃)は、前期比+1.0%という結果だったが、統計局・CTIマクロは+0.1に過ぎず、日銀・消費活動指数は-1.1にもなっていたので、良くてもゼロ近傍と思っていたら、意外な高さだった。半耐久財とサービスが伸びたことになっているが、商業動態からはうかがえない。消費が増加した反面、製品在庫が思ったより減る形となり、在庫の寄与度は-0.2だった。

 家計消費は伸びたと言っても、1-3月期が-1.3%だったので、その落ち込み分も取り戻せていない。コロナ前の2019年10-12月期の96.6%にとどまり、消費増税前の2019年4-6月期と比べると93.3%しかない。言わば、家計消費への打撃は、消費増税とコロナ禍が半々といったところだ。仮に、コロナ禍を抜けたとしても、消費増税で下げた分をどう戻すかが必要になってくる。

 他方、4-6月期の設備投資は前期比+1.7%となり、1-3月期の-1.3%を上回った。それでも、コロナ前の2019年10-12月期の97.5%であり、消費増税前の2019年4-6月期に対しては93.6%となっている。輸出は、コロナ前の2019年10-12月期の99.3%まで回復しているので、これを追う形で伸びている。4-6月期は、遅れていた輸入の増加により、外需のGDPへの寄与は-0.4ものマイナスとなったが、一時的なものだ。

 今後については、7月の貿易統計の輸出は高水準を維持しており、4-6月期の機械受注は、製造業が+12.1%、非製造業(除く船電)が-1.8%となったに続き、7-9月期の見通しは、製造業が+3.4%、非製造業(除く船電)が+16.9%と伸びが期待されている。GDPの設備投資の水準は、輸出等の需要に対して、まだ低いため、増加する余地がある。企業収益が急増していることも好材料である。

 一方、4-6月期の公需は、政府消費が前期比+0.5%とほぼトレンド並み、公共事業が-1.5%と、2期連続の減少となって息切れしている。2020年度の税収は、コロナ禍の増収となって驚かれたが、2021年度も、6月までの税収の立ち上がりは前年同月時を10%以上も多く、好調だ。前にも記した厚生年金ともども、緊縮が進んでいるということであり、消費の浮揚のためにも、どう還元するかが課題となる。

(図)


………
 先日、「独立財政機関」が話題になっていたが、足下で、緊縮をしているんだか、拡張をしているんだかも分からない国が、そんなものを持っても何の役に立つのかと思う。需要管理に無頓着で、産業政策だけで成長できると思っているうちは、再分配に財源を求められるだけの道具にしかなるまい。還元は、公共事業では限界があり、所得減税は低所得者に恩恵が薄い。逆進性の強い年金保険料を定額還付するのが一番良いのだが、議論の入り口にも立っていない。10年前、社会保険を需要管理に用い、再分配を果たして成長を遂げようと訴えたけれども、日本は置いて行かれただけであった。


(今日までの日経)
 米欧景気 楽観論に影。東南ア、車部品の減産拡大 感染増で。上場企業、純利益2.8倍。

※都合により、1か月ほど休載します。

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8/19の日経

2021年08月19日 | 今日の日経
 6月の機械受注は、民需(除く船電)が前月比-1.5%にとどまるが、前月の高い伸びの後からすると十分なものだ。製造業は更に水準を上げ、非製造業も底入れを見せる。同時に、7-9月期の見通しも公表され、前期比+11.0%と強いものとなっている。特に非製造業の高い伸びが見込まれている。海外経済の回復に伴う輸出も堅調だ。7月の貿易統計は、日銀・実質輸出で前月比+2.0と過去最高を更新した。景気は順調そのものだが、「消費を除けば」というところである。

(図)



(今日までの日経)
 オンライン初診ほぼゼロ。タリバン、アフガンを制圧。緊急事態7府県追加へ。

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8/15の日経

2021年08月15日 | 今日の日経
 東京の感染確認数は、今週に入って増加速度が鈍化し、前週比1.1倍程になった。足下の数字は10日程前の感染状況を映すので、オリンピック期間中に静まってきたことを示す。とは言え、いまだ減少には至っていない。若者に感染が多いのは、全世代に共通する勤務や買物が要因ではなく、会食などの特有の行動が元と考えられる。同居家族以外との会食は、少人数であろうと厳に慎みたいところだ。昨年同様、お盆を機に減ってくれたらと思う。

(図)



(今日までの日経)
 7県14河川で反乱 大雨特別警報、九州3県・広島に。都内、人流、3割減どまり 繁華街、半減目標遠く。新規感染2万人超え。クラスター 職場・学校で感染拡大。

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8/11の日経

2021年08月11日 | 今日の日経
 7月の景気ウオッチャーは、現状(方向性)が+0.8とほぼ横バイ、現状(水準)が+3.8の着実な上昇となった。7月の上昇は、家計関連が低水準ながら、引き続き改善したことによるもので、企業関連や雇用関連は横バイであった。企業と雇用はコロナ前水準を回復しているが、家計は、戻しつつも、まだギャップがあり、当然ながら、特に飲食が低い。今後は、企業の回復の勢いが薄れる一方、家計が感染の全国への拡大で下押しされるため、停滞が予想される。

(図)



(今日までの日経)
 中国論文、質でも首位 材料科学や化学。気温1.5度上昇、10年早く。東京五輪閉幕。日銀の長短金利操作5年の功罪。

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緊縮速報・次に待つのは年金の緊縮

2021年08月08日 | 経済(主なもの)
 日銀の金融緩和は、デフレ脱却には失敗したが、金融資産を膨張させることには成功した。その恩恵は、厚生年金にも及んでいる。2020年度の厚生年金の決算では、積立金の時価は、34.8兆円もの増となった。日銀を味方にして資産運用ができたら、最強だよ。政府は、コロナ対策ために、国債を追加し、支出を46兆円伸ばし、借金を多くした一方、資産も大幅に増やしていたのだから、財政破綻の片鱗さえ見られないのも当然かもしれない。

……… 
 2020年度の厚生年金の決算から、フローの動きを見ると、保険料収入等が42.6兆円と前年度比-0.51兆円となった。被保険者数は微増、平均報酬月額は横バイであることから、コロナにより延納を認めたためと考えられる。他方、保険給付費等は42.9兆円と+0.14兆円の増にとどまり、+0.2%増の年金額改定と大差ないものだった。この結果、収支は、10年ぶりの拡張財政となり、-0.34兆円の赤字であった。

 ただし、積立金を運用するGPIFからの納付金が1.4兆円と前年度比+0.94兆円の増だったため、これらを加えると+0.5兆円の黒字になる。当然、その分、簿価ベースの積立金も増えて113.4兆円となり、アベノミクス前の2012年度から8年間では8.4兆円の増となった。時価では、株高などによって、前年度比+34.8兆円の184.2兆円となり、同じく8年間で66.3兆円の拡大となっている。

 問題は、足下の2021年度である。毎月勤労統計の常用雇用や給与総額の動きからすると、保険料収入等は、前々年度と比較して+1%程が見込め、保険給付費等は前年度比-0.1%減の改定幅並みとすると、収支は+0.6兆円の黒字まで回復し、1兆円近い緊縮財政になってしまう。会計的には、延納分の0.5兆円も加わり、その幅はもっと大きくなる。コロナ禍の疲弊の中で、次に待つのは、年金の緊縮なのである。

(図)


………
 厚生年金は、アベノミクスの下の緊縮によって、財政再建に成功し、黒字を記録するまでになった。加えて、異次元の金融緩和を背景に、積極的な積立金運用が多大な利益をもたらした。その反面、重い保険料は、多くの非正規を生む一因となり、少子化をもたらした。マクロでは、いかにカネを溜め込んでも、使おうとするときに、少子化で供給力が細っていると、得られるものが割に合わなくなる。

 コロナ禍で出生数がダメージを受けた今、年金を少子化に充てるべきではないか。少子化の緩和は、直接、年金財政を改善することにもなる。将来の年金を乳幼児育成期に前倒しで受給できるようにし、非正規、せめて母子家庭だけでも保険料を軽減して、厚生年金への加入を可能にしたら良い。それこそが活きたカネの使い方になる。カネは貯めるより、活かす方が難しいのである。


(今日までの日経)
 企業業績、回復一段と 今期35%増益。 米就業者94万人増 7月。年金積立金、過去最大に 昨年度194兆円。IT・部品、進む中国依存。トヨタ米販売、初の首位。

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8/4の日経

2021年08月04日 | 今日の日経
 7月の消費者態度は、6月に戻した水準をキープする形で、前月比+0.1と横バイだった。項目別では、暮らし向き、耐久財判断、資産価値はコロナ前水準にあるが、収入の増え方と雇用環境は、まだ落差がある。7月は感染が拡大し、緊急事態宣言となった割に、変化はなかったと言えよう。足下の東京の感染数は少し鈍って、五輪連休前のトレンドが続いていたレベルになっている。更なる鈍化を期待したい。

(図)



(今日までの日経)
 コロナ「原則自宅療養」に。英独仏、3回目接種へ。6月の税収15%増 所得税伸びる。

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スガノミクス・4-6月期は波及なき成長

2021年08月01日 | 経済(主なもの)
 4-6月期は、輸出が過去最高となり、これに促されて設備投資も絶好調であり、建設投資も拡がりつつある。通常なら、雇用が拡大し、消費が増加するところだが、こちらは、不調そのものである。コロナ対策でブレーキがかかっている部分はあるにせよ、モノの消費まで減退し、景気が波及していない。4-6月期は、設備投資の伸びでプラス成長になっても、消費はほぼゼロという結果になりそうだ。

………
 6月の鉱工業生産は前月比+5.8と、自動車の生産回復を反映して、前月の落ち込みを取り戻す形となった。この結果、4-6月期は前期比+1.0と着実に増え、7,8月平均の予測も前期比+1.5となるなど堅調である。その背景には、過去最高の輸出がある。4-6月期の日銀・実質輸出は、前期比+3.9の116.0となり、2018年4-6月期以来、3年ぶりの記録更新となった。これだけ伸びると、設備投資が強く促進される。 

 4-6月期の資本財出荷(除く輸送機械)は、前期比が+9.5と伸びて109.3となった。こちらも、2018年10-12月期を超えて過去最高だ。ただし、7,8月平均の生産予測は前期比-1.6にとどまる。もう一つの投資項目の建設財出荷は、4-6月期は前期比+3.6と水準を上げ、7,8月も前期比+2.6で、消費増税後コロナ前に至る勢いだ。住宅着工も前期比のプラスを拡大している。資本財出荷の輸出分を勘案しても、4-6月期の設備投資はかなり高いと見る。

 他方、消費は不調そのものである。コロナ禍でサービスが振るわないだけでなく、モノの消費も悪い。消費財生産は、4-6月期が前期比-2.3と低迷、7,8月平均の予測も-1.8と続く。商業動態・小売業は、6月は前月比+3.1と戻したものの、4,5月の低下が響いて、4-6月期は前期比-2.1と落ち込んだ。物価上昇で実質は更に下回る。コロナ禍で百貨店や衣料がひどいが、好調だった自動車と機械器具も息切れしている。これでは消費の増加は見込めない。

 消費のベースとなる雇用については、労働力調査の6月の雇用者数は+20万人と戻したものの、やはり、4-6月期で見ると前期比-34万人と大きく落ち込み、1年ぶりの低下となった。特に、男性が-25万人と減り方が著しい。新規求人倍率は、4-6月平均が前期より+0.03と横バイにあるが、新規求人数は、4,5月に例年とのギャップが開き、6月にようやく戻りを見せるという経過をたどった。

(図)


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 昨日、東京の感染確認数は4000人を超えた。昨夏も、8月第1週が第2波のピークだった。暑気払いの時期は飲み会が多く、感染者も増えやすい。コロナは飲み会病だから、どれだけ減らせるかで、蔓延の速度は変わってくる。緊急事態宣言から3週間が経つが、まだ効果が見えてこない。「もう我慢の限界だ」と言って、飲みに行けば感染する。感染力の強いデルタ株なら、なおさらだ。最後の忍耐の時期を迎えている。


(今日までの日経)
 緊急事態8都府県に拡大決定。感染、全国1万人超す。米GDPコロナ前回復。

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