震災後の新しい日本が模索されているのに、昨年、何をしたかなんて、「今さら、どうして」というところかもしれない。しかし、それではダメなんだな。経済というのは、過去の延長線上にあるものだし、その運営には、何をしてきたかの反省が必要なのだ。
2010年度当初予算の歳出規模は92.3兆円だった。これは2009年度と比較して10.2兆円も少なかった。他方、2010年度の税収見込みは37.4兆円だったのであるが、一次補正で39.6兆円へ2.2兆円上方修正され、そして、今度の2011年度二次補正において、前年度の決算剰余金という形で、更に2兆円の上方修正がされるようである。
つまり、2010年度の財政は、10.2兆円の緊縮と4.2兆円の増収によって、GDPで3%近いデフレ圧力を経済にかけたということである。その結果は、どうだったかというと、年度後半における景気失速であり、2四半期連続のマイナス成長であった。政府は、景気の陰りに慌てて、11月末に補正で4.4兆円の歳出増をしたものの、「時、既に遅し」だった。執行には2~3か月かかるからだ。震災の発生は、そんな時だったのである。
日本には、「財政がどんなにデフレ圧力をかけても景気は悪くならない」と強弁する人がいるが、普通に見て、2010年度の経済運営は失敗だったと言えるだろう。財政再建が急激すぎて、デフレを脱することができなかったからだ。むろん、昨年秋に円高がなければ違っていたという反論もあろうが、多少の外的ショックには耐えられるよう運営するのが基本だ。余裕を持たずに「賭け」に失敗したケースである。
このケースが問題なのは、世間では、財政が大規模なデフレをかけていたという事実が知られていないことにある。財政当局は、歳出の説明を、前年度補正後ではなく、当初と比較することで、10.2兆円の緊縮が見えないよう「仮装」し、また、税収を意図的に低く見積もることで、4.4兆円もの増収を「隠蔽」したからである。したがって、世間では、なぜ、年度後半にマイナス成長になって、デフレが続いたかの理由が分からずにいる。
普通の人は、こういう反省に立って、2011年度の経済運営を考えていく。世間では、復興にかかる財政出動で需要が盛り上がるようなイメージがあるが、実際には、2011年度当初予算は、前年度補正後より4.3兆円少なかったので、一次補正の付け替え以外の財源で増加させた2.5兆円分と、今度の二次補正の2兆円で、ようやく、前年度並みになるだけだ。三次補正が遅れれば、財政の景気押し上げ効果はゼロである。
昨日、5月の鉱工業生産指数が発表されたが、日経は「58年ぶりの高い伸び」などとはやしているのに対して、筆者は、6、7月の生産予測が伸び悩んでいることが非常に気になる。震災による落ち込みからの急回復は結構だが、震災前の水準に戻るだけのことで、そのあたりで停滞するように思えるからだ。要は、震災前のマイナス成長の状態に復旧するということである。こういう状況なのに、増税論議が盛り上がっているのは、財政に無知なるがゆえであろう。反省がなければ、進歩もないのだ。
(今日の日経)
日立も合流、液晶統合、IPS技術流出を防止。国勢調査・社会保障、現役依存は限界。玄海原発再稼動を佐賀知事容認姿勢。消費増税時期、政府が大幅譲歩。あすから電力使用制限。二重ローンに770億円・2次補正予算。鉱工業生産5月5.7%上昇指数。中国・民間企業の資金確保困難に。ユニバースを子会社化。外食・LED照明導入加速。経済教室・3極通貨制度・河合正弘。
※国内投資には法人減税より産業革新機構の出資が有効ということだ。 ※少子化を放置すれば、こうなるのは目に見えていた。 ※佐賀が皮切りになったか。 ※経済好転の数値を示さないのは、デフレでも増税の証拠。 ※マックはまだ全店には入れないんだね。
2010年度当初予算の歳出規模は92.3兆円だった。これは2009年度と比較して10.2兆円も少なかった。他方、2010年度の税収見込みは37.4兆円だったのであるが、一次補正で39.6兆円へ2.2兆円上方修正され、そして、今度の2011年度二次補正において、前年度の決算剰余金という形で、更に2兆円の上方修正がされるようである。
つまり、2010年度の財政は、10.2兆円の緊縮と4.2兆円の増収によって、GDPで3%近いデフレ圧力を経済にかけたということである。その結果は、どうだったかというと、年度後半における景気失速であり、2四半期連続のマイナス成長であった。政府は、景気の陰りに慌てて、11月末に補正で4.4兆円の歳出増をしたものの、「時、既に遅し」だった。執行には2~3か月かかるからだ。震災の発生は、そんな時だったのである。
日本には、「財政がどんなにデフレ圧力をかけても景気は悪くならない」と強弁する人がいるが、普通に見て、2010年度の経済運営は失敗だったと言えるだろう。財政再建が急激すぎて、デフレを脱することができなかったからだ。むろん、昨年秋に円高がなければ違っていたという反論もあろうが、多少の外的ショックには耐えられるよう運営するのが基本だ。余裕を持たずに「賭け」に失敗したケースである。
このケースが問題なのは、世間では、財政が大規模なデフレをかけていたという事実が知られていないことにある。財政当局は、歳出の説明を、前年度補正後ではなく、当初と比較することで、10.2兆円の緊縮が見えないよう「仮装」し、また、税収を意図的に低く見積もることで、4.4兆円もの増収を「隠蔽」したからである。したがって、世間では、なぜ、年度後半にマイナス成長になって、デフレが続いたかの理由が分からずにいる。
普通の人は、こういう反省に立って、2011年度の経済運営を考えていく。世間では、復興にかかる財政出動で需要が盛り上がるようなイメージがあるが、実際には、2011年度当初予算は、前年度補正後より4.3兆円少なかったので、一次補正の付け替え以外の財源で増加させた2.5兆円分と、今度の二次補正の2兆円で、ようやく、前年度並みになるだけだ。三次補正が遅れれば、財政の景気押し上げ効果はゼロである。
昨日、5月の鉱工業生産指数が発表されたが、日経は「58年ぶりの高い伸び」などとはやしているのに対して、筆者は、6、7月の生産予測が伸び悩んでいることが非常に気になる。震災による落ち込みからの急回復は結構だが、震災前の水準に戻るだけのことで、そのあたりで停滞するように思えるからだ。要は、震災前のマイナス成長の状態に復旧するということである。こういう状況なのに、増税論議が盛り上がっているのは、財政に無知なるがゆえであろう。反省がなければ、進歩もないのだ。
(今日の日経)
日立も合流、液晶統合、IPS技術流出を防止。国勢調査・社会保障、現役依存は限界。玄海原発再稼動を佐賀知事容認姿勢。消費増税時期、政府が大幅譲歩。あすから電力使用制限。二重ローンに770億円・2次補正予算。鉱工業生産5月5.7%上昇指数。中国・民間企業の資金確保困難に。ユニバースを子会社化。外食・LED照明導入加速。経済教室・3極通貨制度・河合正弘。
※国内投資には法人減税より産業革新機構の出資が有効ということだ。 ※少子化を放置すれば、こうなるのは目に見えていた。 ※佐賀が皮切りになったか。 ※経済好転の数値を示さないのは、デフレでも増税の証拠。 ※マックはまだ全店には入れないんだね。