昨日、10月分の家計調査が公表された。最近は、内閣府の消費総合指数という便利なものがあり、GDPを占うには、そちらが有効だから、各調査機関の注目度は下がっているのかもしれないが、筆者好みの統計である。今回は、ロイターの記事がおもしろかったので、紹介することにしよう。
それは、住居の設備材料が大きく伸びているというものだ。総務省統計局は、太陽光発電設備への需要が寄与している可能性があると分析しているらしい。太陽光は、次世代の成長産業として注目されているが、消費を押し上げている事実は、考えてみれば当然とは言え、新鮮な驚きだった。
今回の家計調査は、対前年同月比が全体で-0.4であり、その内容は、地デジ化需要の反動で教養娯楽費が-0.84の寄与度だったの対し、設備修繕が+1.80の寄与度であり、全体を押し上げた。季節調整済の実質指数でみると、対前月の変化率は+0.3であり、震災以来の回復基調を維持していて、これに貢献したとも言える。
太陽光は、パネルの値下がりによって、ほぼグリッドパリティに到達しており、今後、原発賠償や化石燃料の発電比率増大などによって、電気代が上昇することを考えると、更に地位は高まるだろう。太陽光は、補助金も勘案すると、10年ほどで元が取れるとされる。その設置は、10年分の電気代をまとめて払うようなものであり、消費の押し上げに貢献するというのもうなずける。
太陽光を導入するコストのうち、パネルの割合は半分程度にまで下がっており、設置工事や付属装置のコスト割合が大きくなっている。その点から言えば、まとめて設置できるマンションなどが今後は有望なはずだが、普及させたくない電力会社の意向が働き、戸別に分電しなければならないという不効率を強いる規制がかかってる。すなわち、太陽光は、家計調査に表れるほど、消費の押し上げ効果を持つ、有力な規制緩和の項目になったということである。
ところが、新成長戦略を標榜する経産省は、そしらぬ顔であり、うるさく規制緩和を唱える日経も、ダンマリを決め込んでいる。原発事故があって、新エネルギーが求められており、電力会社の社会的な影響力も弱まっているはずなのに、日本経済のリーダーたちは、チャンスを前に動こうとせず、法人減税・消費増税を唱えるのみなのだ。
消費支出は、季節調整済の実質指数で見ると、2010年8月の101.4が直近のピークであった。その後、リーマンショック対応の経済対策が一気に打ち切られ、震災前の今年2月には、98.6まで、2.8ポイントも落ち込んだ。2月から3月への震災ショックの落ち込みが2.8ポイントであるから、その打撃がいかに大きいか分かろう。日本経済は、財政デフレと震災ショックのダブルパンチを受けたのである。
そして、前回9月に98.8と震災前水準を取り戻し、今回10月は99.1と、その水準の維持が確認された。消費支出は、ようやく、震災ショックが癒えたばかりであり、今後は、財政デフレのショックからの回復過程に入る。成長というより、無謀な財政運営による傷を癒している途中なのだが、緊縮や増税を唱える人たちは、それを分かっているのだろうか。
家計調査は、「民のかまど」を示すものである。その数字は、日本の経済エリートがやっていることの意味を浮かび上がらせてくれる。そういうことが、新しい加工統計が開発されるようになっても、いまだに筆者が好むゆえんである。
(今日の日経)
イタリア国債7.4%。社説・欧州発の金融収縮。消費税・給付効率化ひるむ政治。沖縄防衛局長を更迭。新規国債44兆円以下に。立地補助は高シェア企業に。年金減額を容認の報告案。中国経済・本土からマネー流出。ASEANの成長率伸び悩み懸念。英、成長急減速、財政目標先送り。プラグインHV1月発売。住宅大手が開発を強化。経済教室・企業改革・山口一男。
※社説が遅れを取り戻しつつあるね。※ひるむのは有権者の家計の苦しさの反映でもある。※税の自然増収隠しをまたするってことか。※下げるにしても0.5%、マクロ的感覚がゼロだね。※PHVは電力ピークカットにも有効。料金体系次第だが、今の経産省は動かんだろう。
※明日は休載します。
それは、住居の設備材料が大きく伸びているというものだ。総務省統計局は、太陽光発電設備への需要が寄与している可能性があると分析しているらしい。太陽光は、次世代の成長産業として注目されているが、消費を押し上げている事実は、考えてみれば当然とは言え、新鮮な驚きだった。
今回の家計調査は、対前年同月比が全体で-0.4であり、その内容は、地デジ化需要の反動で教養娯楽費が-0.84の寄与度だったの対し、設備修繕が+1.80の寄与度であり、全体を押し上げた。季節調整済の実質指数でみると、対前月の変化率は+0.3であり、震災以来の回復基調を維持していて、これに貢献したとも言える。
太陽光は、パネルの値下がりによって、ほぼグリッドパリティに到達しており、今後、原発賠償や化石燃料の発電比率増大などによって、電気代が上昇することを考えると、更に地位は高まるだろう。太陽光は、補助金も勘案すると、10年ほどで元が取れるとされる。その設置は、10年分の電気代をまとめて払うようなものであり、消費の押し上げに貢献するというのもうなずける。
太陽光を導入するコストのうち、パネルの割合は半分程度にまで下がっており、設置工事や付属装置のコスト割合が大きくなっている。その点から言えば、まとめて設置できるマンションなどが今後は有望なはずだが、普及させたくない電力会社の意向が働き、戸別に分電しなければならないという不効率を強いる規制がかかってる。すなわち、太陽光は、家計調査に表れるほど、消費の押し上げ効果を持つ、有力な規制緩和の項目になったということである。
ところが、新成長戦略を標榜する経産省は、そしらぬ顔であり、うるさく規制緩和を唱える日経も、ダンマリを決め込んでいる。原発事故があって、新エネルギーが求められており、電力会社の社会的な影響力も弱まっているはずなのに、日本経済のリーダーたちは、チャンスを前に動こうとせず、法人減税・消費増税を唱えるのみなのだ。
消費支出は、季節調整済の実質指数で見ると、2010年8月の101.4が直近のピークであった。その後、リーマンショック対応の経済対策が一気に打ち切られ、震災前の今年2月には、98.6まで、2.8ポイントも落ち込んだ。2月から3月への震災ショックの落ち込みが2.8ポイントであるから、その打撃がいかに大きいか分かろう。日本経済は、財政デフレと震災ショックのダブルパンチを受けたのである。
そして、前回9月に98.8と震災前水準を取り戻し、今回10月は99.1と、その水準の維持が確認された。消費支出は、ようやく、震災ショックが癒えたばかりであり、今後は、財政デフレのショックからの回復過程に入る。成長というより、無謀な財政運営による傷を癒している途中なのだが、緊縮や増税を唱える人たちは、それを分かっているのだろうか。
家計調査は、「民のかまど」を示すものである。その数字は、日本の経済エリートがやっていることの意味を浮かび上がらせてくれる。そういうことが、新しい加工統計が開発されるようになっても、いまだに筆者が好むゆえんである。
(今日の日経)
イタリア国債7.4%。社説・欧州発の金融収縮。消費税・給付効率化ひるむ政治。沖縄防衛局長を更迭。新規国債44兆円以下に。立地補助は高シェア企業に。年金減額を容認の報告案。中国経済・本土からマネー流出。ASEANの成長率伸び悩み懸念。英、成長急減速、財政目標先送り。プラグインHV1月発売。住宅大手が開発を強化。経済教室・企業改革・山口一男。
※社説が遅れを取り戻しつつあるね。※ひるむのは有権者の家計の苦しさの反映でもある。※税の自然増収隠しをまたするってことか。※下げるにしても0.5%、マクロ的感覚がゼロだね。※PHVは電力ピークカットにも有効。料金体系次第だが、今の経産省は動かんだろう。
※明日は休載します。