経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

3/30の日経

2022年03月30日 | 今日の日経
 2月の労働力調査は、就業者が前月比横バイで、底をはう状況だ。また、新規求人倍率は、前月比+0.02とはなったが、前月の低下を取り戻す程度である。コロナ感染のピークは2月上旬であったので、低迷はやむを得まい。3/22に全国的にマンボウが解除されたが、東京では足下で感染が増え始めている。先行した沖縄でも解除後に減らなくなったので、同様の傾向をたどりそうである。

(図)



(今日までの日経)
 円安悪循環 警戒強まる。東南アでもインフレ加速。円急落、一時125円台 1日に3円以上 日銀オペで拍車。超富裕層に最低税率20% バイデン氏、議会に提案へ。

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金融政策は物価を抑えられるのか

2022年03月27日 | 経済
 金曜に公表された3月の東京都区部の消費者物価は、前月比+0.3と続騰し、特にエネルギーの上昇があって、財の上昇は、2月の+1.1と同様、3月も+0.8と大幅だ。他方、サービスは、前月比+0.1と、ほぼ横バイである。金融政策の目標は物価の安定であり、物価が上がるようなら、金融を引き締め、沈静化を図るのがセオリーだが、今のように財とサービスが分かれていると、なかなか悩ましいことになる。

………
 教科書的には、金融政策の主な対象は設備投資であり、金利の上下によって、増減させることになっている。しかし、現実には、設備投資は、金利よりも、需要リスクに強く影響され、その動向に左右されるため、多少、動かしたくらいでは、なかなか効かない。よく言われるように、不況時に「ヒモ」で押せないのはもちろん、好況時の抑制だって容易でなく、なかなかブレーキが効かないのである。

 実際に金利が効くのは、住宅と為替に対してだ。住宅には、自分が住むという確実な需要があるからである。米国では足下の住宅建設が活発なので、金利の「正常化」を進め、その抑制を通じて需要を減らし、物価上昇の加速を防ぐことは理に適っている。もっとも、物価上昇には家賃の高騰が含まれており、家賃を抑えるには住宅の供給が必要という側面もあるから、問題は複雑である。

 為替については、資源高にあるから、米国が金利を引き上げ、強いドルにしようとするのは当然だ。むろん、ドル高に必要な金利差は相対的なものなので、ひとり日本が緩和のまま円安にしなければならない道理はない。日銀も、「持続的な金融緩和への期待を維持するには当面の調整も必要」とか理屈をつけて、米国の金融政策に同調すれば良いのである。異次元緩和の本音は円高是正にあったわけで、誰も非難したりしないだろう。

 住宅への波及は、日本では、あまりに超低金利が続き、先食いが過ぎて、金利への感応が鈍くなっている。本来とは異なり、金利より税制の影響が大きく、消費増税の駆け込みとその後の停滞、相続増税での貸家建設の増大と縮小いった動きを見せる。日銀が異次元緩和の調整に乗り出したとしても、それで住宅が低下するより、逆に、金利の先高感によって増加したりするかもしれない。

(図)


………
 東京都区部の物価は、サービスが停滞で済んでいるけれども、全国では、サービスは低下である。家賃が停滞し、他のサービスの低下幅が大きいのだ。資源高は、資源に対する消費増税みたいなものだから、金融緩和は調整しつつ、財政で所得を補うポリシーミックスが正解であり、金融が動かないなら、財政に負荷がかかる。金融政策が財政に悪影響を及ぼすとなれば、黒田総裁も調整に当たる気になると思うのだが、いかがだろうか。


(今日までの日経)
 高齢者、長引く受診控え。北朝鮮の新型ICBM、射程1.5万キロ超。物価判断、2年半ぶり「上昇」3月月例報告。米市場「大幅利上げ」見越す。コロナ下の地価回復。侵攻1カ月、ロシア戦況膠着。首相、物価対策29日にも指示。株式2万8000円台を回復。

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3/23の日経

2022年03月23日 | 今日の日経
 疫病、戦争、地震と災難が続き、資源高のところへ、日米の金利差から円安に振れている。民社党政権下での前回の原油高では、逆に円高が進んだけれども、助かった感じはなく、輸出が低下し、純輸出はマイナスに転落で、むしろ、悲惨だったね。貿易赤字で円安方向なのは自然な成り行きではある。もっとも、日米の金融政策がズレて為替が動き、余計な負担になっているところは共通している。円安なら財政で家計の実質所得減は補えるから、打ち手があるだけマシだ。

(図)




(今日までの日経)
 ロシア発、建設コスト急騰。円、6年ぶり121円。東電・東北電管内に逼迫警報。まん延防止を全面解除。業績予想の下方修正急増。CO2吸収の藻類、ホンダが外販検討。経済曇らすピンボケ政府試算。

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緊縮速報・財政収支は着実に緊縮

2022年03月20日 | 経済(主なもの)
 10-12月期の資金循環統計における一般政府の資金過不足は、前年同期比で+2.2兆円となり、前の7-9月期ほどではないにせよ、引き続き着実に改善、すなわち、緊縮となった。改善幅が小さめだったのは、12月中に補正予算が成立して、例年より早めに執行がなされたためと思われる。1-3月期でのコロナ蔓延や戦争勃発による原油高を思えば、補正予算を早く上げていたことは幸いだった。

………
 一般政府の内訳を見ると、中央政府と地方公共団体の改善幅は1,2千億円でしかなく、社会保障基金の寄与がほとんどである。主力の公的年金は、相変わらず黒字基調にあるので、医療や労働の赤字が縮小したことによる。10-12月期はコロナが収まっていたためだろう。今後は、コロナがまたも蔓延してしまった一方、高い税収が期待できるため、更に財政収支は改善すると思われる。

 部門別に移動平均で見ると、家計は、コロナ禍での高水準の過剰が続いており、平常化は一服して上昇となった。企業は低下してコロナ前水準へ近づいた。海外は輸入増によって不足が縮小している。家計が消費を増やす形で平常化してほしいものだが、1-3月期はコロナの再拡大で望み薄となった。むしろ、円安と資源高による輸入物価の上昇の転嫁によって、貯蓄が縮小することになりそうである。

 こうした中、1月までの国の税収は、一般会計の累計が前年比+11.2%と伸びている。このまま推移すれば、前年度より6.7兆円の増が見込まれ、これは補正後の予算額より3.7兆円多い。その最大の要因は法人税で、前年度比+3.2兆円だ。輸出が好調で円安もあって膨らんでいる。家計は円安の物価高で苦しんでいるのだから、恩恵を受けている税収からの還元も必要ではないだろうか。 

 法人税に関しては、証券2社の企業業績見通しの経常利益は2021年度が+34.2%、2022年度が+10.2%にもなっている。ただし、ウクライナ戦争の悪影響が及ぶおそれもあり、2022年度は変わる可能性が高い。高収益の背景には輸出があるが、足下では頭打ちの傾向が見られ、半年先の設備投資を占う機械受注についても、1月の製造業の前月比が-4.8%と3か月ぶりの減となっており、同様の状況だ。

(図)


………
 今年は、補正予算が前年のうちに成立し、子育て世帯への10万円給付がなされたりと、動きが早かった反面、剥落も早いわけで、3月の本予算成立後、2022年度予算の補正がさっそく組まれるのかどうかが焦点になる。あるいは、5兆円ものコロナ予備費があるので、これを活用する形かもしれない。いずれにせよ、2022年度の急速な緊縮を防ぐために、効果的で有意義な再分配が求められるところである。年金受給者には5000円が給付されるようだが、非課税世帯でない低所得層へはどうするのだろうか。


(今日までの日経)
 円安→株高、薄れる連動 輸入物価高が業績に影。世界で感染再拡大の兆し オミクロン派生型の割合増。米、ゼロ金利解除 0.25%利上げ。まん延防止全面解除。

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3/17の日経

2022年03月17日 | 今日の日経
 2月の日銀・実質輸出入は、前月比+4.2と3か月ぶりのプラスとなり、それまでのマイナスを取り戻す形となった。水準は高いものの、そこから更に伸びる感じにはない。輸出が過去最高を超えると、設備投資も本格化するのだが、抜け切らない状況にある。他方、2月の輸入は、実質でも過去最高に迫る高さになっている。1,2月の平均を見ると、輸入の伸びが輸出の伸びを上回っており、1-3月期GDPの外需はマイナス寄与になりそうである。

(図)



(今日までの日経)
 宮城・福島で震度6強 東北新幹線脱線。賃上げ率2%超、製造業で相次ぐ。ウクライナ難民290万人超。年金受給者に臨時給付。「有事の円」買いから売りへ 資源高、経常赤字招く「キャリー取引」も低調。円安進行、一時118円台に。


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10-12月期GDP2次・長期の消費率にみる衰退

2022年03月13日 | 経済
 3/9に公表された10-12月期GDPの2次速報は下方修正となり、名目の前期比は+0.3、年率換算で+1.2%だった。前期が年率-4.2%もの低下だったことを踏まえると戻りは小さい。またも1-3月期から4-6月期に見られた「大きく落ちて小さく戻すバターン」の繰り返しになった。その背景には、資源高に伴う外需の大きなマイナス寄与がある。実感に近いとされる名目値は、落ちても上回って戻す形の実質値とは違うトレンドにある。

………
 2次速報で2021年の数字が固まったので、今回は長期の消費率を見て行こう。消費率は、名目GDPに占める消費の割合で、景気の方向や量感をよく表す指標だ。好況時には投資が盛んになって消費率は下がり、不況時には逆に上がる。2021年は+0.5の上昇だった。前年よりコロナの悪影響はマシだったはずだが、景気は更に後退していた。実は、消費率の上昇はコロナ以前の2018年からで、ちょうど輸出がピークを過ぎた年である。

 景気の大きな転換点は、下図の青縦線で示した戦後4回しかなく、ニクソンショック前の1970年、対米輸出が急増する前の1983年、バブル崩壊の1991年、円安転換で輸出が復活したアベノミクスの2013年である。アベノミクスは、好況への転換という点で画期的であったものの、量的には小泉政権下の水準に戻した程度で、4年の短さで途切れてしまい、コロナ禍の今に至っている。

 日本の景気は、輸出が設備投資を引き出しており、金融緩和の効果があったとされる高度成長期においても同様だ。実際、昭和40年不況の際は、緩和しても、すぐには効かず、輸出拡大と財政出動に連れ、遅れて回復している。そして、1997年以降のデフレ期に入ると、緊縮で消費への波及を妨げるようになったため、設備投資は、輸出とパラレルに動くようになり、住宅と公共を合わせた追加的需要で完全に予測できるまでになった。

 この関係は、リーマンショックで一旦は乱れたものの、一服した後には、元へ戻っている。今、我々が目にしているのは、コロナの影響に紛れてはいるものの、輸出の推進力を失う中、資源高によって衰えている姿であり、名目GDPの動きは、これを端的に表しているように思える。こうした動きは、緊縮が波及を妨げるところまで含めて、しばらくは続きそうな情勢となっている。

(図)


………
 好況の期間に消費率が下がるということは、成長が加速する中で、投資の伸びが消費より高いことを意味しており、景気を動かすのは、投資であることが分かる。その投資を主導しているのが輸出だ。設備投資が、金利ではなしに、輸出などの追加的需要で決まるのは、正統派の経済学には合わない話になるが、日本経済はそうだったとしか言いようがなく、いわば、理論的に間違った現実が50年以上も続いてきたわけである。

 3月の証券各社の企業業績見通しは上方修正となり、ウクライナ戦争の影響で変わる可能性はあるにせよ、法人税の増収で緊縮は一段と進み、巨大なコロナ対策の補正を打ったにもかかわらず、平時並みの財政出動の状況になっている。資源高による消費の抑制は確実で、春以降、コロナが収束しても、どれほどのリベンジ消費が出るか予断を許さない。次の輸出ブームまで耐える時期となるが、いつ終わるか分からないし、輸出という起動力を失う日もいずれやって来る。


(今日までの日経)
 主要商品4割が最高値 米インフレ率8%台も。米、労働参加率45年ぶり低さ 賃金・物価上げ加速。米、ロシア産品に高関税 IMF対ロ融資停止。企業物価2月9.3%上昇、41年ぶり水準。米でLNG6割増産。全世代型社会保障、「人への投資」優先。シェルを動かす「べき乗則」。

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3/9の日経

2022年03月09日 | 今日の日経
 2月の景気ウォッチャーは、前月差-0.2とほぼ横バイであり、前月の急減が維持された形だ。雇用が反動増を見せたものの、他は続落している。理由はコロナの蔓延だが、企業関連では原材料高の悪影響も現れている。これがウクライナ戦争で更に増すことになる。やや長い目で消費の状況を眺めると、堅調だった自動車や家電が水準を落とし、スーパーも低くなっていて、コロナの動向とは別に、消費レベルが下がっていることがうかがわれる。

(図)



(今日までの日経)
 経常赤字、原油高で常態化も。原油、供給不安で急騰 140ドル迫る。米国務長官「ロシア産原油の禁輸検討」。

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キシノミクス・コロナは拡大、外需は頭打ち

2022年03月06日 | 経済(主なもの)
 1月の経済指標は、オミクロン株による感染第6波のために、消費の落ち込みは避けられなかった。他方、コロナ禍で日本経済を支えてきた外需は、高水準ながらも頭打ちになっている。今後、ウクライナ戦争による欧州経済の減速、資源高に伴う世界的な消費への圧迫を踏まえると、できるだけ内需を確保したいところだが、むしろ緊縮の度合いが進んでいるというのは、痛いところである。

………
 1月の商業動態・小売業は、先月比-2.0と2か月連続の下落となった。物価は上昇しているので、実質だと-2.5くらいになる。コロナが蔓延し、先行する消費者態度も大きく下がっていたので、予想どおりであり、続く2月も続落していて、見通しは厳しい。特に、百貨店や衣服等の低下が激しく、自動車や機械器具はさほどでもないので、コロナによる外出の抑制が影響しているようだ。

 1月の鉱工業生産は、前月比-1.3と、こちらも連続で低下した。気になるのは、資本財(除く輸送機械)の動向で、予測を含む1-3月期は前期比+2.7ではあるが、前期が-2.3であったことを踏まえると、頭打ちの状況にある。2018年頃のピークには届かないレベルで、横バイに移っている。実質輸出も高水準ながら、ピークを更新するような勢いはなくなっており、成長の推進力は弱まっている。

 建設財の1-3月期は、やや上ブレしているものの、1月の住宅着工は、優遇策の終わりのせいか、3か月連続の低下となっており、公共事業も下がり続けているため、予測どおりに行きそうにない。このように、設備投資や建設投資の見通しが芳しくなければ、コロナが蔓延していなくても、景気は停滞する。加えて、ウクライナ戦争による欧州経済の減速、資源高に伴う世界的な消費への圧迫も心配される。

 雇用については、1月の労働力調査は、就業者の前月比が-19万人、雇用者が-30万人と、大きめの低下となった。前月の増加の反動があるにせよ、2021年を通じて低下傾向にあって、それが止まらない状況だ。特に、男性は減りが大きく、女性もこの半年ほどは低下するようになった。新規求人倍率は、前月比-0.03と、あまり動いていないけれども、雇用の低調さからは、消費の低迷もいたしかたない。

(図)


………
 3/1公表の1月の税収は前年比+17.9%で、前年差の累計は+4.2兆円に達した。順調に推移すれば、2021年度の税収は、補正後予算より3.4兆円多い67.3兆円と予想される。これが土台となる2022年度は70兆円を超えるだろう。門間一夫さんが指摘するように、財政赤字は様々なリスクの程度に応じて適切に制御される必要があるが、計器もブレーキもないのが実態だ。税収を見つつ、需要をコントロールするようになるのは、いつの日なのか。従来どおりの保守的運営とは、急速な緊縮を意味するだけに、問題は大きい。


(今日までの日経)
 物流まひ、ロシア痛撃。減税・還付45兆円 習氏、3期目へ布石。欧州最大級の原発 ロシア軍が制圧。米、3月利上げ堅持 動揺抑制へ0.25%予告。現実に即した財政健全化論を 門間一夫。人民元、4年ぶり高値圏 中国株・国債に買い。

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3/2の日経

2022年03月02日 | 今日の日経
 ニッセイ研の斎藤太郎さんが『経済正常化の鍵を握る個人消費』(2022.2.28)で極めて的確な分析を見せているね。要因分解によって、可処分所得の低い伸びが消費低迷の主因であることを解き明かし、消費低迷の理由として挙げられがちな、家計の将来不安や節約志向による過剰貯蓄の主因説を否定している。殊に、アベノミクスにおいて、雇用者報酬が伸びる中、税・社会保険の負担や物価高が相殺していた姿をきれいに描き出している。コロナ収束に伴う貯蓄率の低下による景気の加速から、賃上げによる消費増へと続いてほしいものだ。

(下図は引用)



(今日までの日経)
 開花待つ人工光合成。ロシア、信用危機に直面 債務不履行や銀行不安。世界経済、ロシア排除加速。国際決済網ロシア排除 数日中に。社会保障 次のビジョン・香取照幸。


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