経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

1-3月期GDP1次・コロナ禍4度目のマイナス成長

2022年05月29日 | 経済
 年明けからコロナ感染が拡大し、3/21までマンボウが続いたこともあって、1-3月期の実質GDPは前期比-0.25、年率換算で-1.0と、コロナ禍で4度目のマイナス成長となった。低水準で上下を繰り返す状況に変わりはないが、今期は、外需のマイナス寄与が-0.4もあり、民需は+0.2のプラスだったので、意外とコロナ蔓延の影響は小さく済んでいる。そんな中、公共事業が-0.2と足を引っ張る側になっていて、マクロ政策はまるでなっていない。

………
 消費は、家計消費(除く帰属家賃)が前期比-0.1わずかなマイナスで済んだ。1,2月のマイナスを3月に大きく取り戻したことになる。マイナスではあるが、10-12月期に前期比+3.0と、大きく上げた反動の範囲内とも言えるような堅調ぶりだ。内容は、サービスだけでなく、耐久財、半耐久財も落ちていて、物価高の非耐久財の伸びが下支えした形である。CTIマクロ、日銀消費活動といった他の指標からすると、出来過ぎの感がある。

 設備投資は、10-12月期の+0.4に続き、前期比+0.5と2期連続の増加となった。輸出が+0.9、+1.1と推移してきたから、それに沿うような自然な動きである。鉱工業指数の資本財(除く輸送機械)や資本財輸送用はマイナス続きで冴えないものの、企業による建設投資は上向いており、資本財の輸入が大きく伸びているので、こうした結果になったようだ。もっとも、輸出の水準の割には物足りなさもある。

 その理由の一端は、住宅と公共の不振にある。これらの低下は、設備投資に悪影響を及ぼすからだ。民間住宅は、前期比-1.1と、3期連続の低下である。名目ではプラスであり、資材高が響いている。公共事業は、前期比-3.6と、実に5期連続のマイナスになり、前年同期より-15.2も少ない。金融緩和が最も効果を及ぼす部門がこのありさまでは、日銀が円安を覚悟の上でがんばっても何にもならない。

 次の4-6月期のGDPは、コロナの収束に伴い、消費の伸びが成長を支えるだろう。消費者態度は、4月にようやくプラスに転じた。景気ウォッチャーも、家計動向関連の水準がコロナ後の最高まで、もう一歩である。他方、企業動向関連は、動きが鈍い。ロックダウンの中国の停滞で、4月の輸出が落ちたこともあろう。また、内需の増で、雇用も締まっており、今期、実質では低下した雇用者報酬がどのくらい伸びるかも注目される。

(図)


………
 5月中にも補正予算が成立し、経済対策が実行に移されるが、日本のマクロ政策は、目先に引きずられてばかりである。原油高への対処は、日本がガソリン補助金なのに対し、英国は所得に応じた補填だ。再分配の制度インフラのなさが、またも露呈した。場当たりぶりは、マクロ政策の基本である需要管理がなっておらず、公共事業が疎かなことにも、如実に表れている。まるで政治的不満を宥めることが目的のような対処になっているのである。


(今日までの日経)
 持続可能な成長追求 「新しい資本主義」原案。こども家庭庁発足へ 遅れる財源確保。IT人材難、低賃金が拍車。女性、仕事・育児を両立「M字」解消進む。英、石油・ガス会社に追加課税 物価高対策に2.4兆円。


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5/25の日経

2022年05月25日 | 今日の日経
 4月の日銀・実質輸出は、前月比-6.9と大きく下げた。中国のコロナ蔓延に伴うロックダウンによる生産停滞の影響を受けた。既に、輸出は昨年後半から頭打ちになっていたが、それが崩れた形である。こうした中、3月の機械受注は、民需(除く船電)が前月比+7.1%になったものの、1,2月の低下が大きく、1-3月期は前期比-3.6%に終わった。4-6月期の見通しでは、製造業がほぼ横ばい、非製造業は大きな低下となっている。景気の牽引役は、しばらく足踏みのようである。

(図)



(今日までの日経)
 出生数、最少を更新 昨年度84.2万人 足元でも上向かず。賃上げ、4年ぶり高水準。4月物価、7年ぶり2%上昇。米経済の軟着陸 今や困難・Mウルフ。世界景気、物価高で1~3月減速。ガソリン受益者負担崩れる 補正予算案、補助1.2兆円。「コロナ貯蓄」50兆円に膨張。中国ゼロコロナ、景気直撃 マイナス成長懸念も。沖縄復帰50年 首相「強い経済を実現」。厚生年金義務、業種を拡大。米消費者物価8.3%上昇 4月、8カ月ぶり鈍化も高水準。ロシア産禁輸、ガスも。給付型奨学金、理系・多子世帯に拡大。TDK、EV部品新工場 岩手、500億円 経済安保で国内生産。中国、上海封鎖で縮む内需。税収、過去最高ペース。米金利「上限」突破の衝撃。


※1-3月期の出生数は、コロナ影響前の2020年の同期より-9.5%も少なく、危機的な様相だ。

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長期停滞論はどこに行った

2022年05月08日 | 経済
 長期停滞論は、リーマンショック後の長い停滞にかんがみて、ローレンス・サマーズが2013年から14年にかけて提唱し、大いに注目を浴びた。その後、予言のように停滞は続き、一時的な回復は見せつつも、2020年のコロナ禍へと至る。ところが、ポストコロナにおいて、米国が積極財政を採ってみると、インフレへと打って変わり、FRBを急速な金融引き締めに走らせることになった。

 これに対して、東京都区部の4月の消費者物価指数の総合(季調値)は、前月比+0.4の101.6にとどまる。2020~21年のコロナ禍では100前後を推移していたものが、1月以来、+0.3,+0.5,+0.3,+0.4と高まってはきたものの、この4か月で、財は+3.1になったが、サービスは+0.4にとどまる。米国のような物価とともに賃金も高まるインフレの様相からは遠く、その意味で、日銀が動かないのにも理屈はある。

 日米の金融政策の差による円安に批判が集まっているが、金融緩和を多少変えたところで、どこまで円安が戻るかは、別問題である。そして、元はと言えば、財政運営の差が日米の違いになっているのだから、ここも改めるべきである。特に、米国が定額給付によって、低所得層に重点的な分配をしたことが要因になっている点を見逃すべきではない。GoToも、ガソリン補助金も、そうしたものでないことに注意が必要だ。

 黒田日銀総裁が言うように、円安が全体としてプラスなら、輸出企業の収益増から税収増にも結びつくわけで、円安のメリットをしっかり還元することがポイントになる。逆に、FRBのパウエル議長には、インフレを収めたければ、消費増税で一発だよと、アドバイスしてはどうか。当たり前だが、経済の調整は金融政策だけでは無理がある。それが未だ長期停滞にある家元たる日本の役割だろう。

(図)



(今日までの日経)
 世界企業減速、増益2%。外国人観光客、来月めど入国再開。インフレ率、10月ピーク2.2% 民間予測。米、0.5%連続利上げへ。EU、ロシア産石油禁輸 年内実施へ。「合格歴競争」格差を再生産。子ども41年連続減 25万人。

※都合により、2週間程、更新をお休みします。

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5/4の日経

2022年05月04日 | 今日の日経
 4月の消費者態度指数は前月比+0.2とわずかな上昇だった。3月に-2.4と大きく下げていたのは、調査時期の早さによるものかと思っていたが、これまでと異なり、コロナが収束に向っているにもかかわらず、あまり戻らないという結果になった。3,4月は物価高もあったので、こちらの影響が出たかもしれない。連休明けに、3月に大きく上昇した景気ウォッチャーが出るので、どうなるか注目だ。

(図)



(今日までの日経)
 米長期金利、一時3%台 3年5ヵ月ぶり。インフレ、高齢者ほど負担。米利上げ、新興国に圧力 債券ファンド1.8兆円流出超。「低学歴国」ニッポン。アジア新規感染9割減。

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キシノミクス・コロナで4度目のマイナス成長へ

2022年05月01日 | 経済(主なもの)
 この1-3月期のGDPは、またもマイナス成長になりそうである。コロナの感染拡大でマンボウがあったり、原油高で物価が上がったりしたから、仕方のないところはあるが、2年間で4度目のマイナス成長となり、ピークより20兆円も少ない水準をさまよい続ける。日本だけがコロナ前水準から遠く、10%消費増税前への回復となると、いつになるのか、まったく見通せないのであった。

………
 3月の鉱工業生産は、前月比+0.2となったものの、1月の下落を2か月かかって取り戻した程度である。内外の設備投資の動向を示す資本財(除く輸送機械)は横バイで、水準は増税前より高いものの、1-3月期は前期比-0.2となった。消費財の状況は深刻で、7-9月期の大きな落ち込みを10-12月期に取り戻せなかったのに、1-3月期には-0.4とダラ下がりである。建設財も情けなく、1-3月期は-0.8と、3期連続での低下となった。

 コロナ蔓延で消費が悪いと言われるが、財の消費のここまでの衰えを、コロナのせいだけにはできまい。まして、建設財の低下の背景には、公共事業の減少がある。感染にばかり気を取られ、感染に関わりなく使える景気対策なのに、完全に手抜かりになっている。また、財については供給要因が指摘されるが、鉱工業指数の在庫は上昇しており、需要の弱さも理由であると、考えざるを得ない。

 消費に関しては、3月の商業動態・小売業は前月比+2.0と、コロナが拡大した1,2月の低下を取り戻したものの、1-3月期は前期比-0.9にとどまった。しかも、これは名目の話であり、CPIの財で除すると、実質的には-2.7まで落ちてしまう。サービスを含むCTIマクロの1-3月期を予想すると、実質で前期比-0.9くらいか。GDPの消費は、デフレーターの影響で、もう少し浅く出るかもしれないが、深刻な状況だ。

 雇用を見ると、労働力調査では、1-3月期の就業者が前期比+6万人、雇用者が+9万人となった。しかし、10-12月期が、それぞれ、-27万人、-14万人であったことからすれば、弱い。3月こそ上向いたものの、2021年の1月をピークに、ズルズルと低下していて、消費の動向とも軌を一にする。景気は、感染拡大によって期ごとに上下しつつ、変動を均しても傾向的に悪化しているのである。 

(図)


………
 1-3月期は、日銀・実質輸出が3期ぶりにプラスとなったが、それ以上に輸入が伸びて、GDPにはマイナス寄与となる。あとは、消費はマイナス、公共事業がマイナス、住宅もマイナスだ。設備投資は、GDPでは、わずかにプラスになるかもしれないが、資本財(除く輸送機械)の出荷では3期連続の低下となっている。景気の状況は、コロナの拡大で今期は悪化というだけでなく、なかなかの惨状なのである。


(今日までの日経)
 中国経済減速、封鎖で拍車。肥料高が食料危機に波及。米消費支出物価6.6%上昇 コア指数が前月を下回る。指し値オペ毎日実施 円安加速、20年ぶり131円台。ロシア、東欧2国ガス停止。物価高対策6.2兆円、政府決定。北京、コロナ警戒 一段と。

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