経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

6/29の日経

2022年06月30日 | 今日の日経
 6月の消費者態度指数は、コロナ禍からの正常化で、ますます改善すると思いきや、前月比-2.0の低下となった。特に、暮らし向きが-2.6と大きかったので、物価高が影響したと見るべきだろう。こういうインフレへの反応は久々に見たね。他方、5月の商業動態・小売業は、前月比+0.6と好調で、4,5月平均は前期比+2.1にもなっている。だだし、CPI・財で割り引くと、+0.6に縮んでしまう。このあたりが、消費回復の実相を表しているようだ。

 ところで、東洋経済(6/25)で、村井首相補佐官が 日本経済の最大の課題は「将来不安の軽減」としていたが、典型的な「大蔵省見解」かと思う。統計的には、家計の非食料消費の割合は超長期に渡り一定で、好不況で上下に微変動を繰り返す。ただし、アベノミクスは例外で、消費増税で将来に大きな安心感を与えたはずなのに、非食料消費が減っていく一方という単純な反応になった。要するに、消費不振の原因は財政再建である。

(図)



(今日までの日経)
 北朝鮮石炭、対中密輸疑い。円、一時127円台に下落。世界で長短金利逆転。飲食バイト、時給最高。世界の製造業、在庫急増。海外勢主導、夜に進む円安。綿花急落 9ヵ月ぶり安値。国債、日銀保有5割超す。デジタル人材、3割が別枠で採用。少子化対策、新味乏しく。上がらぬ若年層の給与 少子化に拍車も。電力逼迫、初の注意報。

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少子化に打つ手・育児休業給付の試算

2022年06月26日 | 社会保障
 非正規の女性は、育児休業給付を受けられない。なぜなら、育児休業給付は、出産支援ではなく、出産退職の防止を目的とするからだ。そのため、結婚・出産は、収入が途絶する中ですることを覚悟しなければならない。おまけに、非正規は保育を受けるのも困難だ。あとは、支えてくれる男性を探すしかないが、デフレ下の若年雇用が悪化し、なかなか見つからない。これでは、少子化にならない方がおかしいだろう。

………
 育児休業給付を、子が生まれて受け始める女性は、2020年度が37.3万人だった。この年の出生は85.3万人だから、受給者の比率は44%と半分以下でしかない。これでも、5年前の2015年度は29%に過ぎなかったので、上がってはいる。その要因は、受給者が+7.8万人増えた一方、出生が-18.1万人も減ったからだ。2020年度の平均受給月額は13.5万円、平均給付期間は12.1か月と推測される。給付総額は6,200億円であった。

 この際、すべての女性に育児休業給付を支給したとすると1兆4,200億円になるから、さしあたり、あと8,000億円あれば、実現できる。給付の拡大に効果があって、数年後、合計特殊出生率が2020年の1.33人から若者の希望を満たす1.80人まで回復するとしても、更に5,000億円あれば足りる。税収の急増によって、財政再建の目標を9.5兆円も過剰に達成しようという国が、これくらいのこともしないのか。

 少子化の緩和は、克服まで至らなくても効果は大きい。出生率が直近の2021年の1.30人だと2世代で人口が61%も減ってしまうが、1.80人だと25%の減にとどまる。年金などの世代間の負担比は、出生率が1.30人だと子世代は60%増しの負担になるが、1.80人だと16%増しで済む。「損」にはなるが、一世代の間の経済成長を踏まえれば、その範囲内で負担できる。少子化の緩和を諦めてはいけない。

 この国は、炭素税がなくても、脱炭素の成長戦略に財政を投入するのは熱心だが、このまま、人口が激減したら、おのずとCO2の排出は減る。「少子化対策は増税とセットで」という考え方に拘り、子ども保険の導入などの財源の問題で揉んでいる間にも、少子化は深まっていく。財政を「黒字」にして持続可能にしても、人口を激減させて社会は持続不能のまま放置というのは、何かが狂ってはいないか。

(図)


………
 2022年1-4月の出生数は、最低だった前年を更に-3.1%下回る危機的な状況だ。こうなると、参院選後、本当に問題になるのは公的年金だろう。前回の財政検証では、少子化の緩和で助けられたところがあったが、今度は逆向きなので、給付水準の所得代替率50%を調整期間後も維持できるかが焦点になる。割れても我慢するか、維持するのに保険料を上げるか、究極の選択が待っている。

 しかし、そうした選択そのものから脱し、少子化を緩和する具体策をもって展望を開く方がはるかに生産的である。育児休業給付を普遍化し、児童手当を合わせれば、月額15万円になる。「結婚しても何とかなる」と思える社会状況にしてあげなければ、子供が生まれるはずもない。かつては、「一つ口は食えぬが、二つ口は食える」と言って励ましたものだ。次の世代のために何をすべきかが問われる。場当たりでポイントを配るばかりが経済政策ではないよ。


(今日までの日経)
 節電参加の家庭にポイント2000円分 政府が検討表明。物価上昇、体感は2倍。欧米長期金利、景気不安で低下。TSMCに巨額支援、還元不透明。国民年金、免除・猶予は最多612万人。25年特需一巡か、国債消化に影。英、寿命に合わせ年金支給。

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6/22の日経

2022年06月22日 | 今日の日経
 5月の日銀・実質輸出入は、輸出が前月比+3.2だったが、4月の-7.0が大きすぎて、4,5月平均の前期比は-4.3にもなっている。生産の制約によるものだから、潜在力はあるし、設備投資の計画も高いので、景気は、まだ大丈夫だとは思うが、輸入の増加もあって、4-6月期の外需寄与度は、このままだと-0.7にもなってしまう。4-6月期は、消費の回復で高成長というのが一般的な見方だが、伸び悩むかもしれないね。

(図)



(今日までの日経)
 円安が進行、一時136円台。節電で料金割引 政府支援。設備投資回復、25%増。航空需要、コロナ前の8割。米個人消費の先行き コロナ下の「超過貯蓄」支え。「強すぎるドル」の混迷。生活保護世帯、大学などの進学率に地域差。少子化に打つ手はないか~仕事・生活の両立策 総動員を・脇坂明。出産・子育て リスクにするな・前田正子。幅広い支援と現金給付充実・松田茂樹。

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税収大幅増は「新しい資本主義」の大チャンス

2022年06月19日 | 経済
 日経は、「骨太から浮かぶ3つの負担増、参院選後の一大課題に」(6/12)としていて、なかなか良い分析の記事なんだけど、足下では、税収が急増していて、緊縮が強まっている状況であり、経済政策の喫緊の課題は、逆の「負担減」になっているんだよ。もっとも、ろくに状況を把握せず、経済政策を立てるのは、日本の得意技だから、日経の言うとおり的外れな流れになる可能性が高いけれどね。

………
 国の税収は、2021年度+7.6兆円、2022年度+3.4兆円となりそうで、計+11.0兆円だ、地方の税収は、計+6.1兆円くらいになる。他方、国の一般歳出は、予備費を除くと、2か年で+0.7兆円に過ぎず、地方は、ほぼ横ばいである。これで中長期の試算が上方へシフトする結果、財政再建の目標年次の2025年度には、国・地方の基礎的財政収支が9.5兆円もの「黒字」になる見込みだ。すなわち、目標のクリアはもちろん、過剰に達成することになる。

 ハッキリ言ってやり過ぎで、これだけ急速な緊縮をすると、成長に悪影響が出るし、それを避けるべく、黒字分だけ支出を増やしたとしても、財政再建とも両立する。特に、2023年度の緊縮幅は、GDPの4.9%と激しいため、2022年度補正と23年度本予算で、どれだけ支出を増やすかが焦点となる。既に、2022年度は、1次補正で、予備費を除き1.6兆円を措置しているけれども、まだ7.8兆円もある。

 この「余地」は、自然増収による財源だから、そのとき限りの支出に限る必要はなく、少子化対策などの恒久的な再分配に充てられる。例えば、非正規を含むすべての女性に育児休業給付を拡大しても7500億円だ。低所得者の年金保険料を軽減し、勤労者皆保険を一気に実現しても2兆円である。それでも「余地」は5兆円も残る。岸田首相が国会で答弁している子ども関連予算の「倍増」は、本人が思うより現実的で、教えてやりたいくらいだよ。コロナ禍で出生が激減し、「少子化非常事態」とさえ言える状況で、今、やらずしてどうする。

 キシノミクスの「新しい資本主義」は、成長と分配の循環が看板だ。その大きなチャンスが巡ってくる。アベノミクスの緊縮の悪癖を是正して、本来的な経済政策を取り戻せば良い。少子化対策は、「人への投資」の大本であり、社会の持続可能性の回復につながる。出生率の上昇は、年金収支を改善し、財政負担も軽減する。ひいては、経済成長も高める。若者・女性への再分配は、財政や経済の上でも誠に合理的である。

 他方、いつもの補正のごとく、成長戦略と称して、産業政策に使うのも結構だが、肩代わりになるだけで、循環にならない場合があるため、精選が必要である。例えば、コロナの事業者への支援金は、火急の折に負った借入れの返済に充てられるのが常識的だ。設備投資や研究開発の補助は、需要に合わせて増やす以上の伸びが出ないと意味がない。むしろ、中小企業にとっては、社会保険料の軽減の方がありがたい。円滑にパートの労働時間も増やせるようにもなるしね。

(図)


………
 今後、財政再建の過剰達成が隠せなくなったとき、財政当局は、どういう主張を始めるのだろう。今の利払費の8.2兆円を賄うくらいまで黒字を出すべきとか、ゴールを更に先へと変えるのか。実は、一般政府で見れば、公的年金は既に4.5兆円の黒字になっていて、これを加えると、2025年度の過剰達成は、14兆円にもなる。どう見ても、家計が疲弊する一方で、財政の余裕は十分である。いつも言っていることだが、経済政策は、最新状況を把握し、全体を見て構想したいものだ。そうでないから、今の有様なのだがね。


(今日までの日経)
 急性期病床「名ばかり」3割。金融緩和、日銀は維持。スイス中銀0.5%利上げ NY株800ドル超下落 円は急騰2円超高。日本の家計、緩まぬ財布 エネルギー除き物価上昇0%台。

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6/16の日経

2022年06月16日 | 今日の日経
 4月の機械受注は、民需(除く船電)が前月比+10.8%と大きく伸びた。前月公表の4-6月期の見通しが-8.0%だったので、思いがけない高さだった。幅広い業種で伸びていることもあり、内閣府の基調判断も「持ち直しの動きが見られる」に上方修正となった。確かに、製造業は順調に伸びているが、非製造業は、まだ振れの範囲内で、低下傾向にあり、全体的にも横バイだ。今後に希望は持てるがね。

 そんな中、FRBは、5月のCPIを受け、0.75%の利上げを決定した。これで、また日銀批判が強まるだろうが、仮にYCCをやめても、円安がどれだけ戻るか。背景には、日米の物価差、成長差があるからね。これを是正できるのは財政ということになる。それで言ったら、米国も、住宅投資以外には効きの悪い金融の引き締めでなく、消費増税をすれば、一発でインフレを冷やせるわけで、お互い、金融政策に期待し過ぎの感はある。

(図)



(今日までの日経)
 FRB、0.75%利上げ決定。中国の情報網、学術界覆う。揺れる世界の国債市場 日銀、海外勢売りに防戦。欧州中銀、国債急落に抑止策 南欧など想定。中国経済の回復鈍く。ロシア、対独ガス主要ラインで4割減。社説・こども家庭庁で実効性ある政策進めよ。生活費、1年で1割上昇。若者、結婚や収入に不安 少子化白書。円安、98年危機以来の水準 一時135円台前半に。財務省が新会議 金利上昇に備え。百貨店・衣料の売上高復調。

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1-3月期GDP2次・ネガティブな上方修正

2022年06月12日 | 経済
 6月半ばともなると、2次速報で1-3月期GDPの結果を聞かされても、過去のものの感はある。この間に、コロナ感染の収束、ウクライナ戦争の長期化、急速に進んだ円安と、大きな環境の変化があっただけに、なおさらだ。上方修正ではあるが、内容が悪く、設備投資は前期比でマイナスへと符号が変わり、押し上げは在庫が大幅に積み上がったことが理由だ。過去ではあるが、今後に尾を引きそうである。

………
 設備投資は、実質で前期比-0.7%と下方修正となり、水準は1年前に逆戻りだ。遡れば、8年前の2014年1-3月期と同レベルと思うと、寂しい限りである。輸出は105兆円を回復して、最高水準にあるから、設備投資がもう少し高くても良さそうなのだが、輸出や消費の動きと逆行して減った。機械設備等は寄与度0.0だが、輸送用機械が-0.1になっていて、企業の建設投資もマイナスだったようだ。

 今後については、鉱工業生産の予測が異様なほど高く、前月比が5月+4.8、6月+8.9となっており、資本財(除く輸送機械)に至っては、5月+14.3、6月+0.6である。ただし、意欲が高いだけで、半導体不足や中国のロックダウンの制約を受け、実現せずじまいになっている。そうこうするうち、機械受注は、民需(除く船電)の4-6月期の見通しが-8.1と下がっており、先送りで終わる心配も出てきた。

 消費は、わずかな上方修正だが、ゼロを挟んで符号がプラスへと転じた。耐久財と半耐久財が減少する一方、非耐久財が伸びて補ったものの、物価高に引きずられた感がある。サービスは、コロナが拡大した割に、ほぼ横バイだった。鉱工業生産の消費財の予測は、耐久財は、全体の傾向と同様に、5月+7.7、6月+10.8と高い伸びになっているのに、非耐久消費財は、5月-0.6、6月+0.8と停滞が見込まれている。

 今回の上方修正の大きな要因となった在庫は、寄与度が+0.2から+0.5に変わった。1次速報で仮置きだった仕掛品の寄与度が+0.3にもなったためである。当然ながら、次の4-6月期では、反動減が出ることになり、-0.4にもなるだろう。コロナ感染の収束に伴い、消費が回復することによって、4-6月期は、高成長が期待されるところだが、在庫減で目減りした上に、設備投資も伸び悩む形かもしれない。

(図)


………
 日本は、物価が上がっていると言っても、米国はむろん、ユーロ圏より低い。ひとり通貨安に見舞われているにもかかわらず、今回も「物価の優等生」なのだ。コロナの行動規制の緩和の遅れもあるにせよ、サービスが未だマイナスで、東京都区部で、ようやくプラスになったくらいである。そもそも、2019年10月の10%消費増税で大きく消費水準を落としたために、需給ギャップが開いている。

 その反面として、消費税収は、2020、21年度に、国だけで計4.3兆円増えており、地方も合わせると、その4割増くらいになる。これだけ冷やしていれば、物価が上がりにくいのも当然だ。「物価対策」はスゴい効果を上げていて、「岸田インフレ」などと、そしられる筋合いではない。むろん、本当に必要なのは、「物価対策」の弊害を緩和すべく、21年度だけで7.6兆円にもなる国の大規模な税収増の一部を低所得層に再分配することだ。

 物価高が嫌だからと言って、直接、価格を弄ろうとする政策は、資源配分を歪めたり、財政を不効率にする。また、金融政策も思うように効かない。物価高に伴う生活苦を緩和すべく、低所得層に再分配するのが王道だ。ところが、再分配のインフラがないせいか、道を外れる政策ばかりが出てくる。たしか、成長と分配の循環が「新しい資本主義」のはずだが。それは野党も同様で、朝野を問わず、政策立案能力が衰えているのだろうね。


(今日までの日経)
 「新資本主義」市場に配慮、かすむ岸田色。円安進行、一時134円台 米2年債利回り14年ぶり3%台。米物価、強い消費がけん引。欧州中銀、11年ぶり利上げ 7月0.25%。車部品、棚卸し資産4割増。海外勢は長期国債を過去最大の売り越し 日銀の上限撤廃を見込む。定住外国人「正社員」に壁。先進国物価、今年8.5%上昇 OECD予測。国債管理で有識者会議 財務省。米小売り、在庫急増に苦慮。

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6/8の日経

2022年06月08日 | 今日の日経
 4月の毎月勤労統計は、常用雇用が前月比+0.1と2か月連続の増となり、コロナ禍では最高となった。また、現金給与総額も、前月比+0.2と4か月連続の増となって、こちらもコロナ禍での最高を更新した。物価上昇のために、実質賃金は、前月比-0.4と、コロナ禍の最高を抜けないでいるが、消費だけでなく、雇用と賃金でも景気が回復していることは確かである。日本は物価高が先行した形だが、米国のような雇用の逼迫と賃金の増進となるかが注目点である。

(図)



(今日までの日経)
 人への投資、世界水準遠く 骨太方針決定。円下落、133円台。電気代、世界で上昇続く 天然ガス高騰でEU4割高。超富裕層、海外隠し財産 数兆円?。

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キシノミクス・正常化へ向う消費と回復への課題

2022年06月05日 | 経済(主なもの)
 2月初めのピーク時には2万人を超えていた東京都のコロナ感染の確認数は、足下では2千人台まで下がり、行動制限がかからなくなったことで、消費の正常化が進んでいる。原油高・資源高に伴う物価高はあるものの、この勢いを保って、コロナ前水準を回復し、さらには、10%消費増税前の水準への回復に進みたいものである。それには、いかに税収増による緊縮を緩和するかという課題もある。

………
 4月の商業動態・小売業は、前月比+0.8の103.5と、前月の+1.7に続いての増加となった。この水準は、10%消費増税前の2019年前半を上回るものだ。もっとも、これは名目であり、CPIの財で除すと95.1となって、コロナ前水準を下回ってしまう。4月の中身を見ると、百貨店や衣服が伸びていて、コロナの収束に伴い、外出が活発になったことがうかがえる。他方、燃料は、若干ながら低下した。

 消費者態度指数は、4月に前月比+0.2と6か月ぶりにプラスへ変わり、消費の復活を示唆していたが、5月に入って+1.1と加速した。とりわけ、雇用環境は、4月の+1.3に続き、5月が+2.9と、大きく伸長している。水準としても、コロナ前にもう一息のところまで来た。雇用環境が明るくなると、委縮していた消費性向の上昇にも結びつくので、5,6月での一段の消費回復に期待したい。

 雇用に関しては、4月の労働力調査の完全失業率は2.5%へと低下し、こちらもコロナ前の水準にあと一歩となった。雇用者は前月比+31万人と大きめの増加である。特に、女性の増加が多く、2782万人はコロナ前のピークを超えるレベルだ。新規求人倍率も、求職数の増加を求人数の増加が上回る形で、前月比+0.03の2.19倍へ上昇した。ただし、水準としては、コロナ前が2.39倍だったから、まだ開きがある。

 他方、鉱工業生産は、4月は前月比-1.3となり、停滞の様相である。資本財(除く輸送機械)は、前月比-0.9となり、1-3月期の水準から大きく下げた。消費財は、4月は+0.8となったものの、前月の減が大きく、1-3月期の水準を下回る。建設財だけは、低い水準からではあるが、前月比+4.3と2か月連続の伸びだった。5,6月の鉱工業生産の予測は、極端に高くなっているが、生産に制約があるため、実現性には乏しい。

(図)


………
 2021年度の税収は、7.5兆円もの大幅な増収が見込まれ、2022年度も、順調なら、更に3.3兆円の増収が予想される。2か年で10兆円も財政収支が改善されることになり、このデフレ圧力をいかにかわすかが財政運営上の重要な課題になる。なすがままに緊縮したり、需要に結びつきにくい産業政策で空回りするようでは、消費の回復にブレーキがかかってしまう。その意味で、実効ある再分配を行う新しい資本主義が本当に求められている。

 アベノミクスは、端的に言えば、金融緩和と緊縮財政の組合せで、財政出動はイメージに過ぎない。緊縮で消費を抑圧したために、成長が高まらず、売上げは鈍く、物価も低迷し、賃金も伸び悩んだ。景気回復の局面で急激になりがちな緊縮を、いかに緩めるかが経済戦略の要であり、そのための再分配の設計こそが肝となる。キシノミクスが目指す「成長と分配の循環」において、財政が堰き止めていては話にならない。かつての池田勇人は、その点を注意していたことも申し添えておこう。

 折しも、2021年の出生率は1.30まで低下してしまった。非正規の女性への育児休業給付もない現状では、少子化対策も、人への投資もあるまい。少子化は、若者を収奪した結果である。当面の利益のために社会を壊してしまうのが剥き出しの資本主義なら、新自由主義の処方箋にすがるのをやめ、社会への分配を、持続には不可欠な投資と捉え直すことが新しい資本主義ではないのかね。


(今日までの日経)
 出生率6年連続低下 昨年1.30、最低に迫る 少子化対策、空回り 出生数最少。社説・少子化の厳しい現実に目を背けるな。政府は少子化非常事態宣言を 若者支援急務。スマホ・PC在宅特需に陰り。老いる米国 働かない1億人。台湾での新卒エンジニアの年俸約6.8万米ドル。迫るスタグフレーション・M・ウルフ。

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6/2の日経

2022年06月02日 | 今日の日経
 「骨太の方針」の財政健全化目標の表現が後退したとか、まったく無意味な議論だね。なぜなら、2021年度の税収が前年度比+7.6兆円もの大幅な上ブレになる模様で、目標前の2023年度には、早くも達成してしまいそうだからだ。むしろ、これほど急激な緊縮をすると、強過ぎるデフレ圧力で成長を壊しかねない。もっとも、どれだけ緊縮しても、成長には悪影響とならないという机上の理論を信奉する人たちには、言うだけムダだが。EBPMでムダなくとか、高尚なことはいいから、せめて、基礎的データを踏まえて議論しようよ。

(図)



(今日までの日経)
 収益改善も投資鈍く 法人企業統計、経常益最高に。21年度の税収、過去最高ペースを維持。成長へ改革、投資促す 新資本主義案。デフレーターでみる日本経済。国債利払い費、補正の隠し財源。食品高、店頭じわり浸透。収支黒字化「堅持」から後退。雇調金特例を3カ月延長。

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