経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

4/27の日経

2022年04月27日 | 今日の日経
 2月の人口動態速報の出生は、下図のとおりで、過去最低だった。合計特殊出生率が1.42だった2018年との差は大きい。今後、数か月は、1年前の婚姻が少なかったため、低く推移するものと予想される。これでは、17年ぶりに出生率が1.2台に落ちることもあり得るのではないか。その数字が出るのは、かなり先になるので、あとで慌てないように、今から対策を用意したいものだ。

(図)



(今日までの日経)
 物価高に国費6.2兆円 中小企業対策1.3兆円。まだ臨時?借金先送り20年。

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過去最低の出生とガソリン補助金

2022年04月24日 | 経済
 2月の人口動態速報の出生は過去最低になった。2021年は前年同月比で-10.5%も減っていたので、2022年はさすがに上回ると思っていたが、前年同月比-0.7%にとどまった。円安は20年ぶりと騒がれ、急遽、補正予算を編成してガソリン補助金を注ぎ込むことに決まったが、出生減の方は、明らかにコロナによる大打撃なのに、予備費が使われるどころか、危機感もなく、報道すら見られないのであった。

………
 3月の消費者物価指数は、生鮮除く総合が前年同月比+0.8の上昇だが、エネルギーを除くと-0.7の下落に変わり、費目で分裂の様相である。上がっているのは、総合の寄与度0.38のガソリンだけでなく、0.70の電気代と0.26のガス代を合わせた光熱費の方が大きい。こうした中、所得を補うのでなく、ガソリンに的を絞った対策が取られる。目立つからと言われれば、それまでだが、助ける対象の偏りは免れない。

 ガソリン補助金は、現状でも月に2500億円。これが1リットル25円から35円に引き上げられ、更にそれ以上も補助することになる。100ドル前後の原油高は4年も続いたことがあるので、終わらせ方も考えておかなければならない。標準的な政策としては、低所得層への定額減税に切り替えることなのだが、制度インフラがない。コロナ禍以来、2年も苦闘してきたのに、デジタル庁ができただけで、構想すらないままだ。

 補正予算に関しては、2000億円程を充て、低所得の子育て世帯を対象に子ども1人あたり5万円を支給するようだ。コロナ禍では2020,21年度にも、低所得の子育て世帯に給付金が配られた。ただし、これらは、子育て支援ではあるにせよ、出生の支援ではない。そうした支援が来年もあるとは限らないわけで、これから、結婚をしたり、子供を持とうとする人の動機づけにならないからである。

 今年は、補正予算は秋にも編成されると言われる。月内にも、全世代型社会保障構築会議の中間とりまとめが行われ、非正規の育児休業、勤労者皆保険などが論点になるらしい。是非、カソリン補助金の乗り換え先を示してもらいたいものだ。いずれも、若い非正規の低所得層への給付が問題を解決するカギになる。ゴールの見えない現状の漸進策では、少子化のラチが明かないからね。

(図)


………
 米国では長期停滞論が言われていたが、景気回復期の緊縮を避け、積極財政に出たことで、ウソのように解消した。日本は、補正予算を打たないと緊縮になる構造にあり、特に、2022年度は、大幅な税収増のため、埋めるべきギャップは非常に大きくなっている。かつてのような所得税減税や公共事業は、もはや使えない。だからと言って、ガソリン補助金といった社会の持続性の確保とは無縁なものが代わりになってはいけない。


(今日までの日経)
 FT・出生数、先進国では回復 景気刺激策が回復の一翼。結婚増へ出会い促す 宮崎 鹿児島。ガソリン補助金、35円超過分は半額支援。脱炭素投資、年17兆円必要。今国会で補正予算。トウモロコシ、迫る最高値。

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4/21の日経

2022年04月21日 | 今日の日経
 3月の日銀・実質輸出は、前月比+0.8となり、1-3月期も前期比+2.5と3四半期ぶりの増加となった。景気を牽引するほどでなくとも高水準であり、日本の輸出能力は衰えていない。原油高で貿易赤字が拡大するのは仕方がなく、世界経済の成長に合わせて輸出を拡大する力はまだあるのだから、あまり悲観することはない。円安も、日米の景気の差、財政出動の違いという側面があり、内需をどう拡大させるのかも考えた方が良い。せっかく、日銀が指値で金利を抑えてくれるわけだし。

(図)



(今日までの日経)
 日銀、21~26日に連続指し値オペ 円安、一時129円台半ば。金利上昇、日本置き去り。低所得世帯へ物価高対策、子ども1人に5万円。日銀総裁「円安マイナス」 物価高の増幅で政治に危機感。中国景気、ゼロコロナで失速 1~3月GDP4.8%増どまり。増税の時期・選択肢 検討急げ・佐藤主光。迫る「債権取り崩し国」。

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目先の対策に追われ、深刻化する人口減少

2022年04月17日 | 社会保障
 2021年10月の推計人口は前年より64万人も減り、前年の41万人減から一気に加速した。鳥取、島根、高知の3県は人口60万人台なので、とうとう、毎年、県が一つずつ消えるレベルの人口減少が始まった。この事態は、かねてから予測されていたもので、そうならないよう、実効ある少子化対策が求められてきた。しかも、2021年は、コロナ禍があり、人口動態速報で出生数が3.4%も減った。米国は、今年に入って出生数が増加へと転じ、ベビーブームが言われるまでになった一方、日本が最優先で取り組むのは、ガソリン補助金である。

………
 人口動態速報で最新の出生の状況を確認すると、1月は、前年同月比+6.0%、3800人の増だったが、前年の2021年1月が極端に少なかったためで、水準はかなり低い。前年2021年1月の9か月前と言えば、2020年4月であり、初めての緊急事態宣言で経済社会が大きなショックを受けた頃だ。極端な少なさは、2021年2月も続き、3月になって、コロナ禍の影響が出る前の2020年に近い水準へ浮上した。

 そのため、2022年1月も、前々年の2020年に近い水準を期待していたが、差がついてしまった。4月下旬に2月分が公表されるので注目される。この数年の合計特殊出生率を振り返ると、1.45の2015年をピークに1.42の2018年までは毎年-0.01の緩い低下だったが、2019年に1.36と-0.06も落ち、2020年は1.34となり、未発表の2021年は1.34くらいに落ちていると思われる。今後、2022年が毎月の出生数で前年を上回り続けられるかが焦点だ。

 出生率の低下の理由としては、若年層の女性人口の縮小や出産先送りの年齢の限界への接近などが指摘されるが、経済状況も関係していると考えられる。もともと、理想子供数に足りない理由にお金が挙げられるし、出会いのなさは収入の高い人とのものだ。景気の拡大は、2018年の前半がピークであったから、2019年以降、出生が低下したことの一因になっていると思われる。

 若者、特に非正規の女性には、育児休業給付がないので、結婚して子供ができたら、生活に困ることになる。幼児教育が無償になっても、子育て世代に10万円が給付されても、未婚のままでは意味がない。これらは、ある意味、結婚に恵まれた人たちへの支援策である。財源で言えば、年に6000億円ほどで実現できるにもかかわらず、非正規の若者の政治的な声は小さく、差別的なのに、ついぞ日の目を見ずにいる。

(図)


………
 原油高と円安によって、国民生活は大きな打撃を受けているから、毎月2500億円を投じるガソリン補助金のような経済対策も必要とは思うが、主にクルマを持っている人の助けになるもので、クルマ離れの非正規の若者にとっては縁遠い。コロナ禍に限らず、目先の経済対策に、毎年、3~5兆円の補正予算がつぎ込まれて来たのだから、財源がないわけでもないのに、目先の対策に追われ、低所得の若者への施策は看過されているうち、少子化は深刻化して、毎年、県が消えていくことになったのである。


(今日までの日経)
 中国で広がる移動制限。総人口、64万人減 1億2550万人、減少率最大に。ガソリン補助引き上げ、与党提言 政府、月内に物価高対策。「雇用なき労働」に法の保護。

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4/14の日経

2022年04月14日 | 今日の日経
 2月の機械受注は、非製造業(除く船電)が前月比-14.4%となり、大震災前の2010年12月以来11年ぶりの低さとなった。製造業も前月比-1.8%であり、こちらは水準は高いものの伸びが止まった状況だ。実質輸出が頭打ちなのだから、当然ではある。ドル円は、昨年10月から一段安となり、3月に入って急落したが、輸出や設備投資に上昇の動きはない。そうとなれば、円安はデメリットばかりだが、日銀は金融緩和に拘るようだ。多少、方向を変えたところで、米国と金利差がついて円安になると腹を括っているのか、それとも、為替相場のために金融政策をしているのではないと本当に思っているのか。

(図)



(今日までの日経)
 円、20年ぶり安値 一時126円台。スリランカ、債務支払い停止。物価ギャップ拡大、日本は米の4倍。国内需要不足なお17兆円 10~12月。

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補正予算は原油高対策だけで良いのか

2022年04月10日 | 経済
 MMT学派のS・ケルトンが言うように「(懸念すべきは、日本が)過去の過ちを繰り返し、景気回復が本格化する前に、その勢いを挫くことだ。そうした事態は過去に何度も起きている。」というのは、まったく正しい。ただ、緊縮財政への戦いを始める前には、終わらせ方まで考えておかなければならない。自国通貨で借金できる国は財政破綻しないという理論があるだけでは、とても政策にならない。

………
 米国は、リーマンショック後の早すぎる財政撤退で景気を失速させたオバマ政権の蹉跌を教訓に、コロナショックの立ち直りのタイミングで積極財政を打ち、真っ先にコロナ前水準の回復を達成して、賃金増を伴うインフレまで懸念されるまでになった。金融緩和は平常化へと向い、資源高の中でドル高も享受できている。日本が円安で苦しむのは、黒田日銀の拘りもあるにせよ、財政を含めた政策協調の観点のなさにもある。

 日本では、「中長期の試算」で明らかなように、2022,23年度にかけGDP比で6.4%もの一気の緊縮をする見通しになっている。景気の勢いを挫くには十分な急激さだろう。原油高対策への必要性以前に、モデレートにする方策が必要とされている。しかも、税収は試算より大きく上ブレしていて、緊縮は強まっている。2021年度の税収は67.6兆円と予想され、過去最高だった前年度より+6.7兆円もの増加となる。

 これに対して、当初の一般歳出は予備費を除くと0.2兆円しか伸びていないので、コロナ明けで補正の歳出が剥落したあかつきには、6.5兆円の緊縮となる。加えて、2022年度の税収は、更に+3.3兆円増の70.9兆円と予想され、同様の歳出は+0.5兆円に過ぎないから、2年分の緊縮は、国だけで9.3兆円という大幅なものとなる。そのとき限りのはずの補正予算を打ち続けないと、これだけの緊縮になってしまう。

 コロナ対策で30兆円規模の補正を打った2021年度はともかく、2022年度はどうするのか。9.3兆円の補正を打っても財政中立であり、経済対策として需要を追加するには、それ以上が必要となる。そして、そもそも財政が景気の足を引っ張らないために、補正で大規模なバラマキを毎年やり続けるのかという問題がある。非正規の女性への育児休業給付すら実現せず、少子化に甘んじて経済社会の持続性を失っているのにである。

(図)


………
 米国は出生数の急減に歯止めをかけ、ベビーブームになるとの見方さえあるのに、日本は相変わらずだ。今度の経済対策では、原油高の対策として補助が行われるだろうが、いつまで続けるつもりか。100ドル前後の高騰は2011~2014年まで4年間も続いことがあり、終わらせ方も考えて置く必要がある。それよりは、終わらせなくても良い、少子化対策や低所得層への年金保険料の定額還付を選ぶべきである。

 むろん、出生や所得が増すに連れ、財政負担は減っていくことになる。年金受給者に5000円というプランが打ち出されたが、不公平感からの批判が出て撤回されるに至った。コロナ禍では、定額給付の制度インフラがなくて苦しんだのに、いまだに整備していないからこうなる。とりあえずは、事業主に指示して後で精算することにすれば、定額還付はできるから、要は戦いの戦略次第である。


(今日までの日経)
 食糧高騰、アジアに打撃。原油130ドルなら経常赤字16兆円試算。ウィズコロナ 上海の挫折。ロシア最大銀、取引禁止 米が追加経済制裁。限定正社員 普及へ一歩。ガソリン 年初比6%高、米欧は2割。

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4/6の日経

2022年04月06日 | 今日の日経
 2月の毎月勤労統計は、コロナの蔓延下とは言え、かなり悪かったね。常用雇用は前月比-0.1と2か月連続のマイナスとなり、これは最初の緊急事態宣言時の2020年5月以来のことである。労働時間も前月比-3.4と大きく減った。他方、現金給与総額が前月比+0.7と上向いたものの、実質賃金は横バイで、物価上昇による低下傾向が続く。むろん、雇用×実賃も低下ということになる。消費の弱さは所得面にもある。

(図)



(今日までの日経)
 米出生数、急減に歯止め。年金制度に物価高の試練。ロシア軍、ウクライナ南部と東部に集中。中国、コロナ新規感染1万人超え。今年は島根県を失うのか。国内製造業全体は縮小していない・藤本隆宏。

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キシノミクス・ズルズルと景気後退

2022年04月03日 | 経済(主なもの)
 2月の鉱工業生産は前月比+0.1とほぼ横ばいで、昨年のオリンピック前のレベルにも戻せない状態である。コロナが蔓延しているから、クルマの供給制約があるからと言っているうちに、ズルズルと景気が後退してしまった。一時的な問題だから、そのうち戻ると思っていたら、今度は、ウクライナ戦争という更なる問題が勃発した。こちらも、なかなか終わらない様相を呈している。

………
 鉱工業生産は、1,2月の平均が前期比+0.7と、この1-3月期には2期連続の上昇になりそうだが、昨年4-6月期と比べると、まだ-2.0も低い。一応、3,4月の予測は前月比+3.6、+9.6と、かなり高いけれども、このところ、当月の実現率も翌月の予測修正率も低下が大きく、逃げ水のような感がある。4月は生産の少ない月なので、生産の多い3月からの先送りで、見た目が大きくなっているようにも思われる。

 財別では、資本財(除く輸送機械)は、3月の予測を含む1-3月期の前期比が+0.5であり、10-12月期が-2.3も落ちていたことを踏まえると戻りが弱い。4月には前月比+31.3という予測ではあるものの、現実味がない。消費財も、同じく前期比+0.9とまずまずだが、それでも昨春の4-6月期の水準に及ばない。情けないのは、建設財であり、公共事業の低落、住宅着工の弱さから、2月になっても低落傾向が続いている。

 2月の住宅着工については、7.2万戸、前月比+6.4%と、4か月ぶりにプラスとなった。秋に弱まっていた持ち家が底入れした形である。1月までの建設総合統計では、季節調整をかけると、企業の建設投資がほぼ横ばい状態にあり、公共は7か月連続の減となっている。とうとう景気の良かった2018年の水準まで低下し、公共事業で景気を牽引する時代ではないにせよ、足を引っ張ることもあるまい。

 他方、消費に関しては、2月の商業動態・小売業は、前月比-0.8と3か月連続の低下となった。しかも、消費者物価の財は、前月比+1.1と上昇しているので、実質的には-1.8もの低下になってしまう。これでは、コロナが収まってきた3月が相当高い伸びになっても、1-3月期の消費は前期比マイナスが避けられない。消費増税後のコロナ禍で、低水準で浮沈を繰り返す状況で、これを物価高が圧迫している。

(図)


………
 そうこうしているうちに、中国まで不調を訴えるようになった。前の問題が終わらないうちに、次の問題が現れる。こうした中、2022年度予算が成立し、経済対策の検討に入ったものの、年金減額の補填が撤回されたりと、再分配の軸は定まらない。4/1に公表された2月までの税収の累計は前年比+11%となり、2021年度の税収が前年度より6.7兆円も上回りそうなのにである。米国は、コロナからの立ち直り時に敢えて積極財政を打ち、物価のみならず賃金も上げることに成功し、金融緩和の正常化を進めている。円安は、日米の経済運営の差を表してもいる。そのうち戻ると対処療法で済ますうち、ズレが問題を増やしてしまったのである。


(今日までの日経)
 強権中国、戸惑うマネー 7400億円流出。ロシア経済急収縮 成長率、今年マイナス10%予測。建設業、3%賃上げ広がる。製造業、円安の恩恵薄く 大企業景況感7期ぶり悪化。中国不動産、進む信用収縮。食品値上げ、店頭波及9割。中国景気 「侵攻」が冷や水 3月、5カ月ぶり縮小。日銀、国債2.3兆円買い入れ。日銀総裁、首相と会談 一時121円台。

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