経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

2/28の日経

2024年02月28日 | 今日の日経
 2023年の出生数は75.8万人で4.1万人、-5.1%の減となった。合計特殊出生率も1.21まで大きく落ちたと思われ、減少に歯止めがかかっていない。婚姻も-5.9%の減少になっており、今後の見通しも暗い。2019年10月に、消費増税とともに、子育て支援として、教育保育の無償化で1.5兆円を投入したが、コロナ禍もあって、効き目が見えない。今度は、社会保険料を1兆円引き上げ、3.6兆円規模で子育て支援が強化されるが、果たしてどうか。

 日経の記事でも言及されるように、結婚できるだけの所得を若者に与えることが出生率回復のカギになるが、そこで民間での雇用の問題に逃げてしまう。所得の半分を税と保険料で召し上げている時代なのに、結婚前後の若者の負担と給付は、今のままで良いのか。重い負担をしているのに、有期雇用の女性は、育児休業給付を受けられない。これで結婚しろって無理だろう。「課題が見えたら、半分は解決」とは、よく言ったものだ。それとも、男性の育児参加や外国人の移民でもがんばりますか。

(図)



(今日までの日経)
 出生数最少75.8万人 適齢期人口「2030年の崖」迫る 昨年5.1%減 雇用・所得の抜本改革を。出生数急減、識者の見方 教育格差是正へ公費支援。東京都内出生数、4.3%減8.8万人。マンション家賃、最高更新。年金の主婦優遇は女性差別。AI規制「生成」と「学習」区別し対応を。非正規の手当格差、指導急増。

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いまだ消費はデフレ後とはならず

2024年02月25日 | 経済
 日経平均がバブル以来の最高値を更新して、日経は「もはやバブル後ではない」としたが、本当に日本経済がマズくなったのは、バブル崩壊後ではなくて、デフレが始まった1997年以降だ。株価が大幅に下落した後のジュリアナ東京の隆盛をバブルの頃と思ってしまうのは、1997年までは、まだ余裕があり、実際、バブル崩壊後も、消費は伸び続け、豊かさは増していた。挫折したのは、1997年からなのである。

………
 10-12月期のGDP速報では、実質の消費が3期連続で減少し、2019年の消費増税以降の伸び率の平均が、2014年増税以降のそれを下回ってしまった。日本経済は、バブルの1989年の消費税の導入時は別として、増税のたびに、消費の水準と伸び率を下げてきたが、2019年増税も、その例に漏れずである。特に、今のような物価上昇局面では、値上がり分にも課税されるので、なおさら重荷になってしまう。 

 バブル崩壊が日本経済の転機とされることは多いが、それ以降も、消費が年率2.0%で伸びていたと聞けば、驚かれるのではないか。1997年以降は、年率0.8%に下がり、2014年以降は0.26%であり、そして、2019年以降はコロナ禍を挟んで0.16%になった。アベノミクスでの低下は、意外かもしれないが、名目では加速していて、それは、2019年以降も同じだ。名目では加速し、実質では減速なのである。

 足下で消費が伸びないのは、賃金は増えていても、可処分所得が増えていないという、実もフタもない理由であり、アベノミクスのときと変わらない。税・保険料の還元が必要で、春に定額減税がなされるが、効果はどうか。日々月々かかる税・保険料と違い、一度にもらうので、貯蓄に回りがちだ。使い途も偏りやすく、コロナ禍の10万円給付のように、輸入の電子機器などに向って逼迫を起こしたりと、上手く循環しない。

(図) 


………
 今週は、人口動態速報の公表があり、2023年の出生数の激減が報じられるだろう。3.5兆円を使って新たな少子化対策も講じられるが、結婚できた人への子育て支援ばかりで、目玉の児童手当は今年の12月だ。そうこうしているうちに最後のチャンスは過ぎてしまう。思えば、1997年以降、若年雇用が悪化し、第3次ベビーブームは幻となった。2019年以降の出生率の低下は、若年男子の就業率の低下とともに進んでいる。

 足下の雇用は改善し、就業率は上昇しているものの、女子によるもので、男子は停滞している。結婚の条件に、男子も女子の就業継続を求めるようになり、女子でも非正規だと結婚に苦労している。非正規には育児休業給付を出さないのだから、当然の成り行きだ。若い低所得層に保険料を還元して皆保険にしたり、育児休業給付をしたりに行き着くのはいつなのか。失われた30年は、失った出生の年月でもある。


(今日までの日経)
 半導体再興 熊本から TSMCが稼働。株最高値 さらばバブル後。日経平均最高値 終値3万9098円、34年ぶり。〈消えるサカナ〉漁獲量「2050年ほぼゼロに」。消費低迷、景気判断下げ 2月月例報告。ホンダが5%満額回答 早期妥結、賃上げに弾み。

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2/21の日経

2024年02月21日 | 今日の日経
 消費は何で決まるかと言うと、景気で決まる。景気が良いと消費を減らし、悪いと消費を増やす。消費の残りは貯蓄であり、貯蓄=投資なのだから、景気が良いと投資が増えるのは、当たり前と言えば当たり前だが、消費は選好やライフサイクルでは決まらない、すなわち、ミクロの集積ではないと言うと、意外に感じるだろう。コロナ禍では、消費が減っているように見えるが、政府消費を加えると増えている。2023年は少し下がり、景気の回復を示した。

(図)



(今日までの日経)
 「労働時間増やせる」280万人。売上高純利益率 6.4%の高水準 積極値上げで採算改善。高校生像、40年間の変化 「まじめ化」進み家計を意識。

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10-12月期GDP1次・株高のマイナス成長

2024年02月18日 | 経済
 2/15に公表された10-12月期GDP速報は、実質成長率が前期比-0.1%と2期連続のマイナス成長になった。次の1-3月期も、特殊要因のサービス輸出の剥落もあり、マイナスが濃厚だ。1月の景気ウォッチャーも下がっている。他方、株価は、年初から15%も上がり、バブルの最高値を更新する勢いである。10-12月期の名目GDPは、前期比+0.3%で順調だからと言えば、それまでだが、実質と名目は、かくも乖離している。

………
 成長には設備投資の促進が必要だと叫ばれるが、実は、足下の設備投資の水準は高い。名目GDPに占める設備投資の割合は16.7%で、アベノミクス、リーマンシッョク前、デフレ前の各ピークとほぼ同じである。デフレ前と何が違うのかと言えば、住宅投資と公共投資の割合が下がっていることで、投資全体を盛んにし、高投資の経済にしたければ、これらをテコ入れすべきだろう。

 もっとも、緊縮で、公共を減らし、可処分所得を削って住宅を持ちがたくしたのだから、政策どおりの結果になっているに過ぎない。失われた30年と言っても、リーマン前とアベノミクスの2度に渡って、設備投資が盛り上がった時期があり、長期停滞は、消費のことだという理解が重要である。そうであれば、成長のための処方箋が設備投資の促進や労働市場の改革にはなりようがない。

 本当の意味で高成長にしたければ、輸出急増で設備投資が伸びたら、生まれた所得を財政が削らずに消費に結びつけ、消費も伸びた結果、設備投資の比率があまり上がらないという形にしなければならない。設備投資は、需要を見込んで期待が形成されるので、設備投資だけを政策的に上げるのは無理があり、上げられるのは、輸出という外挿的な大需要が来た場合に限られる。財政需要でもできなくはないが、規模が大き過ぎて間尺に合わない。

 かつて日本が奇跡の高度成長を成し遂げたのは、輸出をテコに高投資の経済を構築できたからだし、停滞のアジアを脱したのは、日本をお手本にできた国々だった。反対に、緊縮で需要ショックを与えれば、低投資と低成長の経済に移行して、抜けられなくなる。設備投資は、現場の実感どおり、金利でなく、需要で決めるものだとすると、奇跡も、停滞も、必然的なものでしかない。

(図)


………
 今回のGDPでは、一時的な産業財産権等使用料の受取でサービス輸出が増加したとされ、それがなければ、モノの輸出は停滞していて、マイナス成長は、もっと深刻なものになっていた。今の日本は、「デジタル小作人」になっており、2023年には赤字が過去最高の5.6兆円前後になると試算されている。輸出で景気回復という御家芸を使える局面が果たして巡ってくるのか、ますます遠のいているように感じる。


(今日までの日経)
 世界株4割、昨年来高値。インフレが呼ぶ「5%成長」 32年ぶりの恩恵と錯覚。「結婚氷河期」脱却見えず。好調な企業業績に死角 10~12月GDP0.4%減。米高圧経済、3つの注意点。

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2/14の日経

2024年02月14日 | 今日の日経
 いつも見ているCTIマクロだが、2020年を100とした四半期にすると、名目と実質の乖離ぶりが印象的だ。2022年は、乖離しているといっても、実質も増えていたが、2023年は、実質の増加が止まり、名目だけが増えるように変化した。この違いは大きく、政権支持にも影響しているかもしれない。実質の動きは、コロナ禍を挟み、2014年の消費増税後のような水準と増率の低下という嫌な形になっている。さて、春の賃上げと定額減税で少しは上向くのだろうか。

(図)



(今日までの日経)
 「割安日本」に投資マネー 終値3万7963円。定額減税、事務負担に苦慮。人手不足で上がる価格。
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日独逆転と成長のための負担の在り方

2024年02月11日 | 経済
 日本の名目GDPは、2000年には独仏英を足したくらいあったんだよ。それがドイツだけで逆転されてしまう。金融緩和の円安で輸入価格を上げ、緊縮財政で所得を圧迫し、徹底して消費を抑圧する政策を取り、物価上昇を阻み、サービスの生産性を抑えてきたのだから、名目GDPが膨らまないのも当然だ。凄いのは、そんな政策をしてきた意識がなく、消費増が望めない中では投資が無理な状況をよそに、労働改革が必要だと叫ぶあたりである。

………
 少子化対策の負担金が1人月500円弱というのが話題になっているが、これが負担増にならない理屈が何とも分かりにくい。健康保険に定率の上乗せがされるのだろうが、医療費の伸びを抑制して、差し引きで保険料率を上げないとまでは言えないのだろう。雇用増と賃上げで保険料収入が伸びても、医療に要する人件費も上がるし、成長とともに医療も高度化するからだ。

 他方、幸か不幸か、子供の数は激減するので、学校教育費が大きく減るのは必定で、スパンにもよるが、3兆円位は出る。抑制して財源を捻りだすなら、こちらだと思うが、財源の作り方が下手である。健康保険を財源にするのは、高齢者からも取りたいからだろうが、少子化対策の財源としては、少子化が緩和すれば、大きく助かるのは年金なのだから、厚生年金を使うべきだろう。

 それも、年金の前倒し給付にすれば、財源はいらない。半分の女性しかもらえていない育児休業給付を、非正規にも拡げて全員にするには、1人当たり84万円あれば良く、年金の3%を前倒して使うだけである。使いたくない人は選択しなくて構わない。これで少子化が緩和すれば、給付が増えて、減らない結果もあり得る。年金は歳を取ってからしかもらえないという常識さえ克服できれば、最も合理的だ。

 労働市場の最大の歪みは、社会保険の適用差別によって、正規と非正規で分断され、労働時間を柔軟に調整できないことにある。流動性を高めたければ、日経は雇用者皆保険を掲げて欲しいものだ。もっとも、適用拡大には、低所得者に重過ぎる保険料の軽減が必要だ。それなのに、わずかとは言え、少子化対策の負担金上乗せである。一時の定額減税でなく、低所得者の保険料に連動させた給付型の税額控除とすれば、IMFも褒めてくれたんじゃないか。

(図)


………
 12月の毎月勤労統計では、現金給与総額は横ばいながら、常用雇用は着実に増しており、雇用×給与が上向いている。これを税や保険料で堰き止めず、消費につなげることが名目GDPを高めるのに決定的に重要だ。成長を高めるには、投資加速と労働改革だという原理主義的な御題目を唱えるのではなく、現実のGDPの構成項目の動向を分析し、現実に目を向けた主張をすべきだろう。


(今日までの日経)
 社説・2000年にドイツの2.5倍だった日本の名目GDPは同等に。世界競争力の低さは 謙虚さから。スーパー、特売増える。少子化「支援金」負担に差。デジタル赤字5.5兆円に拡大。日米韓が貿易で中国離れ 米の輸入相手、17年ぶり首位転落。

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2/7の日経

2024年02月07日 | 今日の日経
 12月の家計調査が公表になり、2023年の数字も定まった。実収入に対する非食料消費の比率は下がってしまい、2015年からの異様な低下傾向が続いている形となった。今年の特徴は、値上がりを背景に、食料消費の比率が上昇したことで、当然ながら、エンゲル係数も高まり、1983年以来の水準となって、40年前の「貧しさ」へ逆戻りである。もっとも、40年前とは貯蓄の水準が段違いであるが。

 こうして、消費の比率を眺めると、消費は、ライフサイクルではなく、中長期の景気で変動することが分かる。景気が上り坂だと、貯蓄の比率が増え、下り坂だと減るというのが基本パターンである。また、税・保険料の動向にも影響され、貯蓄や消費が減ったりする。食料消費は、どれだけ成長しているかを示す。消費は、ミクロ的な基礎ではなく、マクロ的に決まるのであり、心理学を極めても現実は見えてこない。

(図)



(今日までの日経)
 TSMC、熊本に第2工場。少子化支援金、首相「1人あたり月500円弱負担」。5大銀、9年ぶり最高益。GX債1.6兆円で脱炭素支援。

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キシノミクス・ゼロ成長と消費低迷

2024年02月04日 | 経済(主なもの)
 12月の経済指標が出て、10-12月期のGDPは、実質ではゼロ成長というところか。やはり、消費が伸びておらず、設備投資も横ばいだ。住宅や公共はマイナスである。それでも、足下のソフト指標は上向きで、人手不足も著しく、高めの賃上げも望めそうだ。名目では伸びているせいと思われるが、こうした実質と名目の食い違いが今回の景気の特徴で、本当に景気が良いと言えるのか、躊躇してしまう。

………
 10-12月期については、商業動態・小売業は、12月が大きく落ちて、前期比-3.2となってしまった。インバウンドやサービスは伸びているにせよ、消費は停滞している。10-12月期の設備投資は、資本財や輸送機械は増えているものの、建設投資が不調で、若干の増加にとどまりそうだ。住宅や公共は、資材高もあって低下傾向である。他方、景気ウォッチャーは、12月に前月比+1.2と5か月ぶりに上昇し、消費者態度は、雇用環境の改善もあって、12月が前月比+1.2、1月が+0.8と4か月続いての上昇となっている。

 消費の低迷は、昨年の4-6月期からであり、実質だと2期連続のマイナスだ。その理由は、可処分所得の動向にある。7-9月期までの4四半期における名目の増加率の平均は、雇用者報酬が+0.4%なのに対して、可処分所得は+0.1%にとどまる。その可処分所得と家計消費は、4-6月期から軌を一にしている。要するに、賃金は増えても、税・社会保険料で所得が抜かれるから、消費が増えないという、実もフタもない話である。別段、将来不安とかの心理学を持ち出すまでもない。

(図) 


………
 先日、『日本の経済政策 失われた30年をいかに克服するか』という本を読んだが、実体の分析より、財政金融政策の論評という内容のせいか、停滞の原因は、雇用のリスク、将来の財政不安、ゼロ金利の長期化にあり、不良債権処理の遅延や財政金融の緩和の副作用といった政策の失敗に帰するとしている。

 実体を見れば、失われた30年と言っても、設備投資が盛り上がった時期もあって、平坦ではない。問題は、消費が低迷を続けたことにある。バブル崩壊後、財政出動の下で、設備投資は減っても、消費が伸びて、ゼロ成長を支えたが、1997年に財政を一気に切って、デフレに転落し、小泉政権下では、輸出で設備投資が伸びても、緊縮財政を採り、消費は低迷した。

 アベノミクスでも、異次元緩和で輸出と設備投資は伸びたが、可処分所得を削ったために、消費は低迷した。これがなければ、成長率はマシになっていただろう。高成長の経済構造へ変革するには、需要を期待形成の導き手とし、設備投資を引き出さねばならない。結局、輸出頼りで、内需を削ったために、そこまで至らなかった。消費を伸ばすために財政再建という穿った政策思想があると、こうなるわけである。


(今日までの日経)
 NISA対象投信に1.3兆円流入。巨大IT、再点火 5社そろい増収増益。GPIF収益、昨年最高の34兆円。人手不足で滞る設備投資 計画未達、12年ぶり水準。「支援金」徴収、26年4月から 少子化対策。製造業生産、1月1割減 車の品質不正で停止響く。
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