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経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

3/31の日経

2015年03月31日 | 今日の日経
 予想どおり、2月の鉱工業生産には反動減が出たね。1,2月の平均は100.7と、前期より+2.4だけれど、1年以上前になる2013年10-12月期との比較では、わずか+1.1しかない。消費財の-2.3が大きく足を引っ張っている。円安によって外需と企業収益が順調だから、これで済んでいるが、そうでなければ、1997年の二の舞だったよ。アベノミクスが底割れを防いだと言うか、消費増税に加わるマイナス要因がなくてラッキーだったと言うか。

 日曜の読売一面トップは、財政再建目標の変更だった。また、3/30のロイターによると、官邸は想定を超えて増税の後遺症が長期化しているという認識のようだ。表向き、消費増税は失敗だったとは言わないまでも、それなりに反省してはいるのだろう。反省は正しいが、高齢化に伴う歳出の自然増もあるから、小刻みな消費増税は必要でもある。羹に懲りるのではなく、経済に合わせて増税をするという基本に立ち返らなければならない。

(今日の日経)
 介護大手が相次ぎ賃上げ。鉱工業生産・回復川上から。4月から年金抑制を初発動。中国4大銀の不良債権36%増。

※原油安は言われても、年金の緊縮財政の緊縮は存在しないかのような扱いなんだよね。
コメント (3)
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アベノミクス・消費は停滞中

2015年03月29日 | 経済(主なもの)
 底入れと言うと安心感があるが、これが続くと底バイになってしまう。2月の家計調査の結果は伸び悩んでおり、こんな調子では、1-3月期のGDPは、前期に続いて年率2%を割りかねない。今年1年かかって、消費増税前の水準に戻せるかどうかというペースである。原油安や賃上げの効果が言われるが、まだ期待が先行しているように思えるね。

………
 消費は1月がマイナスだったことから、2月にどれだけ取り戻せるかが焦点だった。結果は、家計調査の二人以上世帯の実質消費支出の1,2月の平均は96.3にとどまり、前期比+0.4であった。GDPの消費の見通しは、いつものごとく、消費総合指数の2月分の発表を待ちたいところだが、2,3月が0.8ずつという高めの伸びが実現して、ようやく年率2%成長になる。

 1-3月期のGDPは、前期に続き、外需が押し上げてくれそうだが、6割を占める消費がこのペースだと、1.5%成長だった10-12月GDPと同様に、2%を割りかねない。特に気になるのは、ニッセイの斎藤太郎さんも指摘するように、消費の基調を示す「除く住居等」の前期比が-0.7とかなり低くなっていることだ。軽自動車の駆け込みにお金を取られている可能性があるにしても、それはそれで、あとで反動減が来る。

 収入面では、勤労者世帯の実質実収入の前月比が1月-0.1、2月+0.2となり、それまでの回復基調が鈍ったように見える。労働力調査の就業者数の季調値は横ばいであるし、新規求人数の季調値も低下していることとも整合的だ。大手企業の春闘結果は昨年を上回ったが、労働需要の高まりがないと、中小への浸透が心配である。

 実質消費支出の96.3は、縮まってきたとは言え、消費増税前の2013年の水準100.0から3.7も離れている。ここに来て、回復ペースが鈍りだしたのは痛い。この水準を超えなければ、アベノミクスによって恩恵を受けたという感じにはなり難いし、内需向けに供給を強めようともならないのではないか。再加速が必要な局面となっている。

(図)


………
 商業動態統計も似たような印象である。1月に大きく落ちた小売業は、2月の季調済前期比は+0.7と、若干、戻した程度である。また、卸売業は-3.7となって、昨年8月以来のかなり低い水準となった。足を引っ張っているのは鉱物や燃料であり、原油安の反映ではあるが、他の伸びで補い切れていない状況だ。ちなみに、東大売上高指数は、3月に入って大きく下げている。まだ年度末の追い込みが残るものの、留意しておきたい。

 ここで鉱工業生産指数を見たいところであるが、残念ながら、今月は週明け30日の公表予定である。1月は生産が+3.7%と高い伸びとなって、政府の景気判断を上方修正させる要因の一つとなった。ただし、2,3月の予測は+0.2%、-3.2%となっている。これは、春節の影響を見ておく必要があろう。国内向けに「爆買い」分が含まれているようにも思われる。したがって、2月の反動減は十分あり得るところだろう。

………
 今年の景気の焦点は、原油安と賃金増がどれくらい効くかである。筆者は臆病者なので、二つを当然視できないと思っている。原油安メリットがあっても、企業段階で留まると、収益と税収が伸びるだけで、消費を押し上げることにはならないし、高めの春闘結果も、あくまで、大手企業の話である。設備投資のように、大企業は順調でも、中小企業が苦しく、全体が伸びずじまいのものもある。こういう展開も考えておかねばならない。

 筆者の思考法は独特で、「原油安と賃金増は効かなかったという現実を目の前にしたら、どんな要因があったと考えるか」というものである。そうやって、チェックポイントを探しておく。思ったような結果が現れるには、何段階かの経路がクリアされなければならないのに、得てして、それを忘れがちなのだ。まあ、それだけ失敗した経験が多いということでもあるがね。

(今日の日経)
 大手採用は来春14%増。サービスが映す脱デフレの芽・小栗太。
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3/26の日経

2015年03月26日 | 今日の日経
 第一生命の熊野英生さんの『賃金上昇率の目途』(3/23)が興味深かったね。物価(除く生鮮)と所定内給与は、よくフィットし、しかも、物価が先行しているように見えるというのは、重要なファクツ・ファインディングだと思うよ。このあたりの議論は、本コラムでも、「神の見えざる手」で取り上げたことがあった。

 消費増税後、渡辺努先生が作っている「日次物価指数」が面白くてね。値上げにチャレンジしては、売上げが落ちて調整するという繰り返しがされているように見えるんだな。チャレンジが成功し、収益が伸びて初めて賃金に還元できるわけで、「物価が上がると、賃金が上がる」というのは不思議なようで、案外、正しいかもしれない。

 そうすると、マクロ政策的には、最初の一押しが大切で、あとは好循環を、途切れさせずに、いかに回すかが重要ということになる。景気か上向きになると思うと、目端の利く経営者は、人手を早めに手当しておこうとするから、賃金増も自然な動きだ。緊縮好きの御当局さえ居なけりゃ、上手く回るんだがね。

(今日の日経)
 ハイブリット車を5割に。全米自動車労組が12年ぶり要求。リークアンユー・労働力逼迫後に20%賃上げ。太陽光で海外製品4割超へ。
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3/24の日経

2015年03月24日 | 今日の日経
 今週の日経ビジネスは「2000万人の貧困」ということで、なぜか、本コラムと同じテーマだったね。2000万人は大変なボリュームだが、社会全体から見れば小数派だ。彼らを支持基盤にするだけでは、政策は変えられない。いかに、貧困でない人にもメリットがある政策を生み出すかがポイントになる。

 田村俊一編集長は、「まずは企業の稼ぐ力の復活、必要なのは労働力の再配置」となるのだが、異次元緩和で景気が上向いたのに、消費増税で所得を吸い上げたら、稼ぐも何もない。縮んだパイの取り合いだ。低賃金もミスマッチばかりではあるまい。財政再建は大事でも、加減というものがある。

 高度成長期は、議論はあるが、総じて言えば、金融引締めと積極財政の組み合わせで、ドルショックに驚き、金融まで緩めたところに失敗があった。今は、真逆のマクロ政策をしているから、経済の舵取りは相当難しいよ。バブルにならないうちに、どう締めるか、それでいて、物価と賃金を上げるように財政を調整しなければならない。少なくとも、本コラムで示したような政策の道具立てはしておきたいね。一本槍ではとても無理だ。

(今日の日経)
 原発の電気を新電力へ。景気判断8か月ぶり上げ・月例。住宅・価格上昇、高値取引。経済教室・働き方改革の視点(下)・阿部正浩。
 ※昨日の濱口桂一郎さんの論考も良かったね。
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少数派のための戦後の奇跡

2015年03月22日 | 経済
 戦前の格差問題を読んだ後は、戦後、どうなったかを知りたくはないかね。それなら、橋本健二先生の『格差の戦後史』がお勧めだ。経済コラムなのに、政治学や社会学の本ばかりですまないけど、戦中に大きく平等化し、70年代まで格差は縮小したものの、80年代以降、再び格差が広がっているという事実を、「ピケティ前」に摘出し、実情を鮮やかに描いているわけだから、今読む甲斐はあるというものだ。

………
 『格差の戦後史』は2009年秋に出され、2013年末に増補新版となっている。出版の頃は、リーマンショック後でもあり、労働者階級にも及ばない「アンダークラス」という最貧階級の出現を強く印象づけるものだった。5年経って、階級の存在は常識となり、「格差拡大は資本主義の常態」とするピケティの主張もあって、どう解決すべきかに関心が及んできたように思う。

 直感でも分かるのは、景気が良ければ、格差は縮小するということだ。失業が減るのだから、当然にも思えるが、現在の中国は、高度成長を続けて来たにもかかわらず、大変な格差社会になっている。他方、日本の高度成長では、間違いなく、格差の縮小が進んだ。そこで何が起こっていたのかは、今後の経済運営を考える上で、大切な知見をもたらすはずである。

………
 『格差の戦後史』が描くように、1950年代、すなわち、神武・岩戸景気に沸いた当時は、むしろ、格差が拡大していた。格差が縮小するのは、物価上昇率が高まる60年代になってからである。1950年代は、高成長を果たすための経済構造が建設される途上であり、これが完成し、更に推し進められるようになってから、格差は縮小していく。

 経済構造とは、要するに、どの程度、投資するかである。高投資・低消費であるほど、成長率は高くなり、労働需要は強まる。それが賃金を底上げし、階級内や階級間、企業規模間、地域間、男女間といった格差を縮めるように働く。経済構造の変化は、本コラムの2013/12/7で説明した消費率を見れば一目瞭然だ。下図のように、1961年に完成し、踊り場の時期を過ごした後、1966年からのいざなぎ景気で、一段と強化され、最盛期の70年代前半を迎えるわけである。

 『格差の戦後史』では、企業間の賃金格差は1960~63年に顕著に縮小、男女間のそれは60年代に縮小傾向、農家と被雇用者間の格差は60年代後半に急速に縮小、臨時雇・日雇比率は70年までに低下、同じ頃に中小から大企業への移動が増加し、ブルーカラーとホワイトカラーの賃金格差や地域間格差は70年代に入ってから縮小といった指摘がなされている。それらは、経済構造の変化の中で生じた出来事である。

(図)



………
 端的に言って、格差の縮小には、相当に強い労働需要の圧力が必要である。当然ながら、それは物価高をもたらす。中国では、物価高は民衆の不満を増大させるとして、慎重に扱われたが、日本の高度成長では、生産性格差インフレは「人間の価値を高める」として、物価高批判を押しのけて成長を追求している。「物価以上に収入は増し、豊かになっている」と正面から信任を問える民主主義の強みである。 

 1960年代の5%を超える消費者物価上昇率は、今の目から見ると、「やり過ぎ」の感がある。現在の中央銀行が容認できる高さではなく、3%前後でブレーキをかけるのが常識的な対応だろう。しかし、「やり過ぎ」の成長圧力をかけたからこそ、格差は縮小した。すなわち、経済メカニズムによって、格差は縮小するのであるが、現在の経済運営上の常識を書き換えるような財政と金融の組み合わせが必要になろう。

 消費率の図を眺めると、かつて、高貯蓄=高投資の経済と言われた日本は、いまや、見る影もない。時代的な質の差はあるにせよ、もはや、戦後復興期並みの体たらくである。特に、1997年のハシモト・デフレで、安定していた消費率の構造「改革」をしたのは、栄光の時代に終止符を打つものだった。「改革なくして成長なし」の小泉政権期も、世界経済の好調に恵まれたにもかかわらず、成長力を強めるチャンスを逃している。

 図は2013年度までだが、2014年度は増税の反動減で消費率が低下することは確実である。もし、2015年度がアベノミクスの宜しきを得て、投資が増え、成長が加速すれば、2年連続で消費率が低下することになり、久々に経済の転換点が出現するかもしれない。それは、より一層の賃金増、3%超の物価上昇、そして、ようやくの格差縮小へと通じる道である。もっとも、その勢いがつく前に、消費再増税が腰を折るのだろうが。

………
 日本の高度成長は「奇跡」と称されたが、輸出を起点に内需を起こして高成長を実現する戦略は、次々と途上国に取り入れられ、大きな成功を収めて、スタンダードなものになった。ただし、高成長の圧力を用いて、格差の是正にも成功し、「総中流化」にまで到達したのは、日本をおいてない。本当の奇跡は、成長ではなく、平等にあった。

 これが可能だったのは、日本の力を卑下する声もある中で、成長の可能性を信じ、福祉国家建設の目標に向って、ただ猛進していったからである。また、『格差の戦後史』にあるように、戦後の官僚は格差是正に並々ならぬ意欲を持っていたこともあろう。高度成長期は、そんな青くて熱い時代だったのである。

 今の我々は、成長を信じているだろうか。福祉国家を目指しているだろうか。エリートは貧困克服を自分の事としているだろうか。『格差の戦後史』が非正規・非婚を特徴とするアンダークラスは、就業人口割合が1997年から倍増したとは言え、全体の1/8である。窮乏の少数派を浮揚させ、いかに社会に統合していくかは、日本だけの課題ではない。世界は、再びの奇跡を待っている。

 
(昨日の日経)
 自衛隊が他国軍の防衛も。賃上げ率2.43%、昨年0.27上回る。AIIBに容認論。待機児童減で4.3万人、1,2歳児が1.93万人45%、0歳児1.97万人。東南ア賃上げ10%前後。

(今日の日経)
 景気拡大7割・社長100人アンケート。税収上振れバブル期並み、3月財政資金対民間収支の税収見込み22%増、2015年度は+5.1兆円か・滝田洋一。

 ※滝田さん、よく書いてくれた。5兆円上ブレは消費税2%に相当し、消費税10%でも財政再建目標を3年遅れなら達成できることを意味する。筆者も毎月上方修正をしているところで、多少低い57.9兆円までなら確度は高いと思うね。
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3/20の日経

2015年03月20日 | 今日の日経
 政府は景気判断を上げるようだね。1月の鉱工業生産は出来過ぎだろう。2月の貿易統計は輸出が思ったより大きく落ちた。国内向けも伸びてはいるが、2月に反動減が出るような気がする。春闘の感じからすると、1.5%成長はできるかな。米国の利上げに向け、中国が揺らいでいるのは気がかり。

(今日の日経)
 日生M&Aに1兆円。景気判断8か月ぶり上げ・3月月例。FRB・忍耐を削除。人民銀が元買い介入、資本流出を警戒。百貨店に春節で明るさ、地方欠く。長期金利・米国債の急低下が波及。
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リベラルと保守・歴史の偶然

2015年03月15日 | 経済
 坂野潤治先生の新著『階級の日本近代史』からは、戦争や占領がなかったとしても、自前のデモクラシーによって、社会民主主義に到達していたはずだという、熱い想いが伝わってくる。日本近代史の碩学が、階級という経済問題を中心に据え、改めて読み解いた一冊に、いろいろと思い巡らすことが多かった。

………
 筆者は経済でものを眺めるので、戦前、最も平和主義的、自由主義的だった浜口・若槻の民政党政権が、金解禁に伴う緊縮を断行し、国民に塗炭の苦しみを与え、政党への信用を失墜させたために、日本は道を踏み外したと考えている。経済は、高橋是清が「リフレ」で回復させたのだが、国民には、満州事変の戦争景気で救われたように映り、経済政策の失敗が悲劇的な権力移行に結びついてしまった。

 本コラムは、アベノミクスに対して辛口だが、今年10月に予定されていた消費再増税を延期したことは、大いに評価している。8%の消費税ですら、前回の景気後退の底を割る寸前まで行き、デフレスパイラルが勃発しかねなかったのに、その傷が癒え切らない中、もう一段のショックを与えることは、日本経済にとどめを刺す事態になりかねなかった。

 こうした無理な経済政策を置き土産にした民主党政権は、解散総選挙による方針変更という非常手段が打たれなれば、第二の民政党政権になっていただろう。リベラルなはずの政治勢力が、時代を越えて、国民生活を破壊するような緊縮に走ったことは、単なる偶然なのだろうか。そしてまた、リフレで救う立場になったのも、同じ保守政権なのである。

………
 政治の真髄は、いかに勢力をまとめ上げ、多数派を形成するかにある。保守の場合、現世利益によって統合を図っていく。戦前の政友会は、民力休養の単なる減税要求から脱し、増税を受け入れる代わり、地域開発に政府予算を利用することで、政党政治を確立していく。戦後の自民党であれば、財界を軸に、農協、商工会に支持を広げ、建設業界にも手を伸ばした。田中角栄が年金を充実させたように、福祉の取り込みにも貪欲であった。

 こうした政治は、腐敗やバブルとも隣り合わせになる。保守政権から権力を奪おうとするリベラル側は、自然と、利権構造を批判し、バブルを整理しようという立場になる。こうした構図が、本来は大衆に勢力を広げるべき立場のリベラルが、国民生活を危機にさらす緊縮に手を染めるという、意外な結果を招くのかもしれない。

 民主党政権の場合、リーマン・ショック後のデフレの局面にあったのだから、ある意味、「放漫財政」のチャンスであった。しかし、財源を気にして、子ども手当という看板施策も半分にとどめてしまう。2010年度は、前年度補正後と比較して10兆円もの緊縮財政にし、景気悪化を見て、慌てて補正を打つといった具合である。

 需要管理を知らないと言えば、それまでだが、東日本大震災に対しても、財源論に終始し、本格的な復興予算は、被災地に雪が降ってからになった。阪神大震災では、村山政権が、経済ショックを見越し、全国の景気対策も打って、翌年の力強い景気回復につなげたのとは対照的だった。もっとも、これが日本経済をデフレに突き落とす、1997年のハシモト・デフレの遠因ともなる。震災後の消費増税は共通するのである。

………
 日本経済は、保守のはずの自民党が「改革」を標榜するようになってから、上手く行かなくなったように思う。常に緊縮の立場にある財政当局と、景気回復を求める国民の声を背に拡張を図る政治との間のバランスが崩れたのではないか。昨今は、財政当局と、もはや内需に期待せず、負担さえ軽くしてくれれば良くなった経済界とが結託し、大きな勢力となっていた。

 これに対して、アベノミクスは、政治的にみると、まず環の弱い部分である日銀を攻略し、金融緩和による円安と株高で経済界に大きな恩恵を与え、強い支持を取り付けるとともに、賃上げの要請もして、大衆の人気も得ようとした。リベラルのお株を奪うような立ち回りである。こうして、経済界と財政当局とを分断し、解散総選挙で圧倒的信任を得て、再増税という災厄を阻止したのである。

………
 民主主義の良さは、生活を悪化させる者に、権力を与え続けたりしないところにある。それゆえ、権力者は、国民の支持をつなぎとめるため、経済を良くしようと必死になる。逆に、自由と平和の理想を抱いていても、生活向上への具体策を欠くようでは、とても政権を担うことはできない。ただ、このことには、生活を救ってくれるのなら、いかなる野望を持つ者にも、権力を渡しかねない一面も潜む。民主主義を志す政治家にとって、心すべき歴史だろう。


(昨日の日経)
 日経平均15年ぶり19,000円台。

(今日の日経)
 マイナンバーは戸籍も。
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3/13の日経

2015年03月13日 | 今日の日経
 今日の経済教室は社会保障改革。桑原進さんの案は興味深く読ませてもらったよ。改革で大事なのは、順番と組み合わせだ。そこを深めてはどうかな。例えば、医療介護の削減の後に、少子化対策をしようというのでは、とても抵抗が大きくて、おそらく手遅れになる。やりようは在るのであって、本コラムの「雪白の翼」の場合だと、少子化対策の財源を、少子化対策で恩恵を受ける若い夫婦が将来に受けることになる年金に求めている。目減りする年金は、子供を預けて働けば取り戻せるようにし、選択の自由を与える形にした。それから、法人減税で成長を加速できるかは、今回、実験の結果が出たのだから、よく観察することだね。

………
 昨日、1月の消費総合指数がオープンになって、10-12月期の平均より0.3低かった。2,3月に大きく伸びないと、また低成長になりそうだ。成長予測は、高めにして外すというパターンが続いている。同じことにならなければ良いが。景気ウォッチャー、消費動向調査とも上昇しているが、まだ戻した程度であり、スタートラインについたところだ。法人景気予測調査は、日経の見出しと様相が異なり、現状の景況感が低下していることに注意がいる。

(今日の日経)
 電気と携帯セット割引。2月消費者心理改善続く。法人景気予測調査の景況感1.9。送電もワイヤレス。経済教室・次世代支える社会保障に・桑原進。
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3/12の日経

2015年03月12日 | 今日の日経
 今日の日経はベア動向の記事だ。GDPの6割は消費で、その伸びは賃金に比例するから、成長は、ベア次第と言える。むろん、消費増税で抜くようなことをしなければである。これに関し、3/10の毎日エコノミストの「景気観測」で、日本総研の枩村秀樹さんが書いている分析は、とても良い内容だね。

 枩村さんの指摘は、従来の2%程度の名目所得の上昇率が続くと、2017年の消費再増税で、実質所得水準がアベノミクス開始時並に低下し、5年間も所得増なしでは、とうてい経済の好循環メカニズムは働かないとするものだ。したがって、3%程度は必要となるわけだが、そうでなければ、2%の消費再増税はやめるべきということになろう。

 消費増税については、ほとんどのエコノミストが腫れ物に触るような扱いをしているのに対して、枩村さんは、これまでも、率直に、その悪影響を「景気観測」で指摘してきた。実際、読みは的確で、見事に状況を切り取っており、筆者は高く評価している。月1回ペースのレポートがとても楽しみだよ。

………
 ところで、昨日、本コラムの人気記事の2位に「経済思想が変わるとき5」が入っていた。もう年なんで、2年前、何を書いていたんだっけと開いてみたら、そうそう、消費増税で失敗した後も、「もっと金融緩和や法人減税を」とやり続けているんだろうなと、予想して書いたものだった。やっぱり、世間は「率直」じゃない人ばかりなんだな。 


(今日の日経)
 トヨタのベア3700円軸に、率は3.1%に。損保・地銀は20年ぶりベア。ガソリン140円目前。人手不足感が最高に・労経動向。中国工業生産6年ぶり低い伸び。
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3/11の日経

2015年03月11日 | 今日の日経
 宮川努先生の今日の経済教室は読みごたえがあったね。異次元緩和が設備投資に効いていないというのは、普通の評価だと思う。宮川先生の説明は、需要の影響について、間接的な言い方で、締めは定番の「第3の矢」だが、需要が安定的に増えるという見通しを与えなければ、設備投資は出て来ないと、シンプルに理解すれば良いのでは。それを蔑ろにする経済運営が続けば、企業は、早稲田大学の広田真一先生が示す「存続確率の最大化を目指す行動」を取らざるを得ない。こういう不合理な行動が惹き起こしたのが失われた17年というわけだ。

(今日の日経)
 日本生命7年ぶり増配。震災4年、住宅停滞。円安再加速、122円台7年8か月ぶり。円安=株高崩れる。外国人消費は実質1.6兆円、31%増。長期金利が急上昇、乱高下が深刻。経済教室・設備投資増の緩和頼みに限界、企業の安全志向が障害・宮川努。

※円や金利を見ると、異次元第2弾は余計だったね。まあ、根源は消費増税だが。
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