経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・景気は順調、補正を着実に

2023年10月01日 | 経済(主なもの)
 8月の商業動態・小売業は、前月比+0.1とほぼ横ばいだったが、前月の+2.4の高伸の後とすれば十分であり、7,8月平均の前期比は+2.5と高い。物価高についていく形であるにせよ、順調な歩みだ。日本経済は消費主導で景気を回復した試しがないので、今後、どんな展開になるか楽しみである。もっとも、経済政策で自爆するようなことをしなければであり、やりそうなところが心配である。

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 消費に関しては、9月の消費者態度は、前月比-1.0と2か月連続のマイナスになり、陰りが見られる。物価高で「暮らし向き」が低下するのは分かるものの、雇用環境の低下も大きい。急速に改善してきたものが一服しただけなら良いが、値上げがしにくくなったとの声も聞かれており、少し気掛かりである。8月の景気ウォッチャーも低下しており、今後公表の9月の結果に注目したい。 

 雇用については、8月の労働力調査は、失業率は2.7%と横ばいだが、男性が上がり、女性が下がっている。就業者数は前月比+5万人であり、女性は着実に伸びているが、男性は停滞ぎみである。8月の新規求人倍率は、3か月ぶりのプラスで、2.33倍だったものの、いまだピークには届かない。産業別の求人数は、卸・小売業、飲食・宿泊は、昨年の水準を上回っているのに、製造業、建設業が下回っている。

 8月の鉱工業生産は、前月比0.0と横ばいだった。7,8月平均の前期比は-1.0で、プラスが続かない。。生産予測は、前月比が9月+5.8、10月+3.8だが、原指数の前年同月で見ると昨年並であり、急回復とはいかないようである。財別では、資本財(除く輸送機械)は、この2か月で急に下がり、消費財は、踏みとどまっているが、建設財は、永らく低下が続く。輸出が伸び悩む中では、生産は一進一退の状況が続きそうだ。

(図)


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 補正予算の議論が始まったが、気になるのは、「需給ギャップが解消されているから、必要性が乏しい」という主張だ。昨年は29兆円の補正予算を組み、それが使われているから、今の需給ギャップのない状態になっている。解消されているからと言って、やめてしまえば、埋められていた分の需給ギャップが現れる。つまり、現状を保つだけでも、昨年並みの補正予算が必要であり、先の主張は、財政運営の意味をまるで理解していないのである。

 むろん、昨年より景気が回復しているから、減らすのが妥当だろうし、既に15~20兆円という話が出ていて、一気にやめて需要シッョクを起こすようなマネはしないだろうが、基本的なことも分からず、補正予算を議論しているようでは、危なっかしい。これまで、景気回復時に補正予算を大きく減らし、成長にブレーキをかけてきただけに、失敗を繰り返さないことが大切である。

 補正予算の議論で大事なのは中身である。特に、今回は輸出の牽引力がないので、内需を着実に確保しなければならない。建設需要が鈍っているので、公共事業を抜かりなく措置するのは当然として、インフレによって、消費税に加え、社会保険料まで嵩んでいるのだから、これを特に低所得層に還元する必要がある。「年収の壁」向けとは言え、社会保険料にリンクして還元する政策の筋は良く、これを低所得層全般に拡げたいものだ。


(今日までの日経)
 物価高 追いつけぬ統計 2020年基準はや古く。年収の壁対策 対症療法の色彩濃く「皆保険」見据えた働きを・山本由里。個人所得、バブル超え3割。店頭物価上昇、鈍化の兆し。「バラマキ」継続か転換か 自民、経済対策の議論着手。

※山本さん、良記事だよ。まさに「3号問題」の先の「1号問題」を解くカギが社保料リンク型の給付なのさ。くわしくは、いつものここ

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