経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

11/27の日経

2019年11月27日 | 今日の日経
 景気は、すごく危い状況になっているのに、全然、分かってもらえないのだよ。就職難にでもならないと、不況だとは思わないのかな。アベノミクス前の悲惨な状況を思えば、増税による消費の落ち込みくらい平気なのかもしれない。ただ、9月の全産業活動指数で分かるのは、輸出とともに、建設投資も完全に下を向き、製造業、非製造業とも設備投資の失速が免れなくなっていること。これでは、需要は総崩れになるね。

(図)



(今日までの日経)
 75歳以上の医療費、2割負担を検討。厚生年金パート適用、2段階で拡大。自公、ひとり親支援の拡大検討。今年の出生数急減 1~9月、5.6%減。年金減額基準、働く65歳以上は「月収47万円超」維持。常勝オービック貫く3原則 売り上げ二の次/客が来訪/自前主義。

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年金不安の正体は「少子化」

2019年11月24日 | 社会保障
 「高齢社会で必要な負担から目をそらすから不安なる」という主張は間違っていないが、若干、キレイごとのようにも聞こえる。団塊ジュニア世代は40歳代に入り、その子世代は7割の人数で親世代を支えなければならないことがほぼ確定した。耐えがたい負担ではないにせよ、重いことは否めない。これが逃れられない現実である。海老原嗣生さんの『年金不安の正体』を眺めつつ、その意味を少し考えてみたい。

………
 団塊ジュニア世代は、子世代を3割減にする少子化を起こしてしまった、あるいは、少子化に陥れられてしまった。子供を3人以上持つ人もいるから、子供ゼロの人は半数近くに上る計算になる。原因は、価値観の変化もなしとはしないが、最大は、就職氷河期に直面し、経済的苦境に立ち、結婚がままならなかったことであろう。自己責任と言って切り捨てるには、忍びない事情がある。

 7割の人数で支えると言うと、厳しく感じる人もいると思うが、1世代30年間で、毎年、1%ずつ生産力を高めていけば、経済力は3割増になるから、支えられないほどではない。そうした経済成長は、前世代の貢献もあるので、増えた生産力を支えに充てることは許されよう。もっとも、前世代が経済運営に失敗し、1%未満の成長しか実現できなかったとなると、事態は、なかなか深刻となる。

 また、年金財政に関しては、団塊世代が積立金を残してくれたお陰で、給付の十数%を賄えるため、その分、負担は軽く済む。もし、少子化が次世代の人数を15%減らす程度にとどまっていたら、損だの何だのの世知辛い議論は不要だった。さらに、国庫負担により、保険料での負担は7割に圧縮してあるので、基本的に、払った保険料は給付で戻ってくる形になっている。制度は、そう作られているのだ。

 万一、「国庫負担も次世代による負担だろう」と責められ、15%強の給付削減を強いられた場合でも、より長く働くことで解決する道もある。リタイヤを3年ほど遅らせて、給付期間を短くすれば、月額の維持ができる。団塊ジュニア世代が60歳代後半を迎える25年後は、健康状態の改善もあり、景気さえ良ければ、70歳までの就労は可能と考えられる。楽はできないにせよ、対処できる範囲内にある。

(図)


………
 海老原さんが指摘するように、2004年に年金の抜本改革がなされたにもかかわらず、破綻の不安を煽るような醜い論争が長く続いた。その背景には、2000年代前半の就職氷河期を生んだ極端な経済不振と、2005年には出生率が1.26まで落ちるという激しい少子化があった。その後、論争が次第に収束していったのは、今に至る経済の修復によって、就労の容易化と少子化の緩和が進んだことがある。

 高齢社会の対応に負担増は不可欠ではあるが、それが成長を壊してしまっては、かえって社会保障を危うくする。負担の基礎は雇用であって、出生を支えるのも、年金の補完をするのも就労だからだ。負担増を焦るのは禁物であり、景気を失速させ、若者や高齢者の雇用を脅かしてしまえば、社会保障に対する安心が増す以上に、結婚と年金への不安がぶり返すことになりかねない。

 海老原さんは、「子供保険」が潰えたことを嘆いておられるけれど、「企業主導型保育」という別の形で成就している。雇用保険料を引き下げるタイミングで、年金保険料に上乗せして拠出金を徴収し、保育定員を飛躍的に拡大したもので、ある種の「保険」である。次の手としては、雇用保険の積立金を一時的に取り崩し、非正規への育児休業給付を実現することが考えられる。同時に長期的な保険料引上げも決めておけば、財政問題もクリアできる。

 本当は、幼児教育の無償化より、0-2歳児の保育定員増と、保育士の処遇改善による人手確保の方が少子化対策のためには優先課題だったと思うが、「希望の党」への対抗で、選挙前に、急転直下、決まった。負担増は、もう少し精緻な検討が必要だし、社会保障のためと称して、消費増税で景気を悪くし、後手で公共投資などの少子化対策以外のバラまきをするのでは、何のための負担増か分からなくなる。安心には、統合的な戦略が欠かせない。

………
 国民が負担増をなかなか受け入れないのは、財政再建を最優先にし、早すぎる緊縮を繰り返したために、成長が高まらず、受け入れる余裕が乏しかったことも理由だ。余裕がないから、徒な改革に幻想を抱いてしまったりもする。需要不足で物価が低迷する昨今は、乳幼児期に的を絞った少子化対策を構築する好機のはずなのに、あとで歳出を絞りやすいというだけで、一時的なバラまきが選ばれる。人口より、成長より、財政に対する不安が優先される。それが不安の根源的な正体である。


(今日までの日経)
 年金 マクロスライド2年連続発動へ。物価の伸び低く 経済停滞を反映。工作機械受注額42%減 10月内需 車・産業機械低迷響く。スーパー売上高4%減 増税前駆け込みの反動 10月。10月の訪日外国人5.5%減、韓国からの訪日客数が大幅減。

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11/21の日経

2019年11月21日 | 今日の日経
 10月の貿易統計が公表された。輸出は底バイ状態が続く。底打ちかなと思っていたら、また下げたというところだ。中国は、相変わらず低調であるのに加えて、米国も、輸出数量の前年同月比が3か月続けてマイナスと、陰りが見える。輸出の失速が始まって、早1年である。ひと頃は、中国の景気対策が進めば回復するなどと言われて来たが、そういうことを言う人はいなくなったね。

(図)



(今日までの日経)
 幼保無償化、予算追加へ 400億円規模の補正検討。中南米、揺らぐ経済基盤 資源下落→双子の赤字→通貨安→インフレ。円高で今年度下期、2700億円。営業減益地銀、不良債権処理費2倍。為替と日本経済・「円安で訪日」いつまで 消費額3倍。時短ドミノが始まった。
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7-9月期GDP1次・やはり実態はマイナス成長

2019年11月17日 | 経済
 わずかな違いでマイナス成長になっていないだけで、世間の受け取り方は、随分と変わる。消費と設備投資に駆け込み需要があり、これを勘案すれば、7-9月期GDPの実態は、明らかにマイナス成長なのに、世間の危機感は薄い。次の10-12月期は、駆け込みの反動減によって、マイナス基調が隠されるだろうし、その後の1-3月期は、反動減の戻りに紛れることになる。景気は「死んだ猫」なっているのに、それに気づかないという奇妙な展開になりそうだ。

………
 7-9月期の実質GDPの前期比は、下二桁まで見ると+0.06であり、二次速報でマイナス成長に転んでもおかしくない低さだった。しかも、これには、増税前の駆け込み需要が含まれているわけだから、実態は、明らかにマイナス成長である。GDPの家計消費(除く帰属家賃)は+0.36であるが、消費総合指数の7,8月平均の前期比はマイナスだったので、9月の跳ね上がりだけでプラスへ持ってきたことになる。

 同様に、設備投資も+0.87だったけれど、鉱工業出荷の資本財(除く輸送機械)の7,8月平均の前期比は、ほぼゼロであり、9月の前月比が+8.9にもなったことで、今期の設備投資を引っ張り上げている。こうした月次統計の動きを見れば、消費と設備投資のマイナス基調は、容易に推測できるし、GDPの各項目の動きを見ても、景気を先導する3需要が停滞する中、緊縮財政に関わらず、消費や設備投資が伸びるのは、やはり不自然なのである。

 本コラムは、1-3月期に輸出が折れた段階で、自律的成長をあきらめた。この段階で、本当は、マクロ経済運営を景気配慮型に改めねばならない。春には、景気ウォッチャーの企業関連や雇用関連が大きく下げて低水準へと至った。しかし、そこで決ったのは、消費増税断行による逆噴射であった。いまや、雇用関連は、アベノミクスで最低に落ち、10月の先行きすらマイナスだ。今後、意識と実体の差は、実体の低下で調整されるおそれがある。

(図)


………
 次の10-12月期は、反動減と基調の弱さに増税圧力が合わさり、強烈なマイナス成長になるだろう。消費は、今期のプラスの反動分が-0.8、増税分が-1.0で、前期比-1.8というところか。設備投資も、今期の反動が効き、ソフトや研究開発が堅調としても、伸びはゼロに墜落してしまうだろう。どちらも、基調は、せいぜい横バイと見る。世間的には、「反動減が大きかった」で済まされようが、事態は深刻だ。

 基調を推測するには、景気を先導する、輸出、住宅、公共の3需要の動向をチェックするのが適当だ。まず、輸出は、小康を保つのがようやくであろう。次いで、住宅は、着工数が2四半期連続で減少しており、足を引っ張る側になる。そして、公共事業は、今後の増大が期待されるが、元々は消費増税の穴を埋めるものとして用意されたものであり、成長を牽引するための役割は限定的と見なければならない。

 結局、増税で消費水準が一段と下がった後、なかなか浮かび上がれない展開になると思われる。何のことはない、2014年増税後に輸出の牽引力を失って成長が低迷した2015年半ばの再現である。むろん、消費水準は、前回増税前を回復していない中で、更に切り下げられるわけであり、アベノミクスのスタート時の2013年1-3月期とほとんど変わらなくなる。これが7年間の成果なのだ。

………
 他方、税収は、日経によれば、2兆円規模の下方修正になるようだ。ただし、それは、予算上の話であり、前年度の税収実績と比べれば、ほぼ同じくらいになる。景気減速によって法人税や所得税が減っても、消費増税で補われるからだ。つまりは、不況下の増税であり、この国では、安全装置のビルトインスタビライザーが外されている。セオリーに反することをすれば、余程の幸運に恵まれるのでなければ、悲惨な目に遭う。日本経済は、政策どおりの結果を出しているのに対し、世間は、増税による狂騒で何が起こっているのかも分からない。今は、そうした状況にある。


(今日までの日経)
 景気 増税前後の動き弱く GDP7~9月0.2%増。 税収見通し 2兆円規模の下方修正へ 今年度、輸出不振で法人税失速。中国経済、減速止まらず 投資伸び最低、生産失速、消費鈍化。

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11/13の日経

2019年11月13日 | 今日の日経
 10月景気ウォッチャーは、前月比二桁マイナスの大幅悪化となった。むろん、消費増税と台風被害が影響しているのだが、2014年の前回増税時の水準を一気に突き破り、アベノミクスで最低を記録した。実は、増税や台風に直接影響される家計関連は前回より悪くなく、企業関連と雇用関連が足を引っ張っている。特に、雇用関連は、先行きさえも下がっており、事態は深刻だ。景気が下がり続けているのに、テコ入れするどころか、増税するのだから、当然なのだけれど。

(図)



(今日までの日経)
 企業の火災保険、21年にも再値上げ 大手4社、相次ぐ災害重荷。 パート厚生年金「従業員50人超」軸。最低賃金増 130万円の壁 パート 年収抑える動き、時短で人繰り苦しく。街角景気 減速感強く 10月指数急低下 増税・台風重荷に。 年金減額「月収51万円超で」 働く高齢者巡り厚労省、62万円案修正。
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統計分布を知れば、経済学が変わる

2019年11月10日 | シリーズ経済思想
 こういう一冊を待っていた。松下貢著『統計分布を知れば世界が分かる』である。経済学ではリスクの扱いが要になる。経営者が利益を最大化すべく合理的に設備投資をするには、リスクを期待値として見積れなくてはならない。ところが、リスクは、分散が大きくなると対応が著しく困難になり、分散が無限大に発散するベキ分布では期待値の計算すら不能になる。それでは、実際の設備投資の変動はどういったものなのか。松下先生の手法を使いながら検証してみよう。

………
 設備投資のようなマクロ経済のデータは、せいぜい月次のため、分布を描けるほどの数を揃えるには無理がある。そこで役立つのが、松下先生の提唱する「ランキング・プロット」という手法である。これを使うと、鉱工業の接続指数(1978.1~2017.12)の480個という限られた数でも、滑らかな累積分布関数の曲線を描くことができる。この手法を用い、資本財生産(除く輸送機械)の変動の大きさを見て、設備投資のリスクを探るのが今回のテーマだ。

 ランキング・プロットでは、時系列データを変動の大きさ順にバラして並べ直すことになるため、データ分析のお作法として、まず、普通に時系列で眺め、「資本財」がどういう性質のデータか確認しておこう。下図で分かるのは、日本経済は、30年間で4回も大きなショックに見舞われたことである。1992年頃のバブル崩壊、1998年頃のハシモトデフレ、2001年頃のITバブル崩壊、2009年頃のリーマンショックだ。

 もう一つのポイントは、ハシモトデフレでデフレ経済に転落してからは、成長が止まったことである。橙色の補助線で分かるように、バフル崩壊は、成長トレンドの中での出来事で、ショックと言っても、過剰に投資した分が後で凹んだ形であり、長期的な成長の中で均されたものだ。ところが、ハシモトデフレを境として、トレンドが劇的にマイナスに屈曲し、大変動を繰り返しつつ、長期的な衰退の道を歩むようになる。

(図)


………
 「資本財」のランキング・プロットは、下落が連続する特徴を踏まえ、毎月の指数について、4か月前との変化率を計算し、2乗2根を取って、横軸に変化率、縦軸に順位で描いたものだ。そうすると、対数正規分布の累積関数に似た曲線が現れる。ポイントは、右方の裾の高順位の部分である。裾が右方に膨らむほど分散が大きいことが示され、上から14位までが外にはみ出し、1~5位になると完全に飛び出している。

 この1~5位がリーマンショックの時期であり、それらの標準偏差の倍率は、5.4~8.2倍に及ぶ。偶然の目安となる正規分布なら在り得ない巨大な変動が、いかに頻発していたかが分かる。これだけの大きさになると、対数正規分布からも外れ、ベキ分布を考えざるを得ない。これでは、合理的期待を形成して設備投資をするなど無理ではないか。ケインズやナイトが文学的に表現する「計算不能なリスク」とは、数理的には、こうした存在である。

 むろん、変動が大きくても対数正規分布に収まるならば、期待値を計算できなくはないが、もう一つ重要なのは、後になるに連れて、変動が拡がってきたことだ。時系列で言えば、1992年に変動率20位のバブル崩壊がかつてない下げとして現れ、1998年のハシモトデフレで大きく超える7位の下げが起こり、わずか3年後の2001年に、これに匹敵するITバブル崩壊による13位の下げに見舞われ、2009年には1位のリーマンショックに至る。

 この間、設備投資のリスクをどう見積れば良かったのか。経験値に頼ったところで、より大きな変動に遭遇し、見積りは塗り替えられてきた。今後、もっと分散が拡大して、リーマンショックを超える変動が起こらないとは、誰も言えまい。むしろ、十分に起こり得ると想定すべきだろう。すなわち、リスク対処への帰納的なアプローチ自体が成り立たず、その意味でも、将来に向けた合理的期待を形成するなど不可能なのである。

(図)


………
 合理的期待を基にする主流派経済学は、現実には、まったく通用しない。少なくとも、過去40年間の日本経済においては。それにしても、なぜ、大変動が頻発するようになったのか。それは、緊縮財政と金融緩和を組み合わせた経済運営による。これをすると内需が健全に育たず、バブル投資や円安輸出の需要が膨らみ、時として崩壊する。1998年の緊縮で成長トレンドがいきなり折れてからは、日本の設備投資は、為替に揺れる輸出次第となった。

 日本の「財緊金緩」は、狭量で執拗な財政再建への情熱と、マクロ経済運営の日銀へのしわ寄せによるものである。他方、欧米では、金融業の隆盛に必要な低金利を実現する手段として追求される。動機は違えど、先行した日本と似たことをしたために、先進国にはジャパニゼーションが蔓延することになった。むろん、ここから脱する答えは、当然ながら、構造改革ではなく、安定的に増加させる需要管理になる。合理的期待論が主流となって、需要管理が捨てられたら、理論が通用しない事態に陥るとは、皮肉な話である。

 日本経済の停滞は、「経営者がカネを溜め込んで投資しないせい」とも言われるが、経営者は、激しく変動しつつ衰退するリスクにさらされてきた。これでは、怖くて積極的投資ができようはずもない。結局、需要を見極めて投資するという常識的戦略が採用され、大きなリスクを避けつつ、ある程度の利益をコスト削減で得ようとする。利益最大化に至らず、不況というマクロ的不都合も生じるものの、企業は、こうやって生き残りを果たすのである。

………
 松下先生の新著で学びたいのは、正規分布、対数正規分布、ベキ分布が「地続き」になっているイメージである。これらをつなぐのは、データ間の記憶性、成長性、歴史性だ。社会科学では、それらに特徴づけられる時系列の事実を扱うため、対数正規分布の意味の解釈が必須になる。そして、連鎖反応、帰還反応が考えられるなら、ベキ分布への発展を念頭に置かねばならない。ほとんどが対数正規分布にフィットしつつも、裾が膨らむデータについてこそ、その理由を考える価値がある。

 松下先生の新著は、コンパクトだし、すらすらと読め、実例が豊富にあってイメージしやすい。タイトルだけでは、必ずしも経済学の本には見えないし、経済の解釈や提言の部分は、やや付け足し的なところはあるものの、利益最大化の空論に酔いしれる人は別として、現実の経済の研究を望む学徒には、必読の書として推薦したい。マクロ経済学の実証と理論の構築に、新たな地平を開くよすがとなろう。


※対数正規分布、正規分布、ベキ分布の関係についての数学的説明は下記にある。
 『複雑系に潜む規則性-対数正規分布を軸にして-』物理学会誌vol.66 No,9 2011
  (國仲寛人 小林奈央樹、松下貢)
※ベキ分布の発散の条件については、下記のHPの記事が分かりやすい。
 『未来をきりひらく統計学』(べき乗分布)


(今日までの日経)
 資金循環 ゆがみ拡大 日米欧企業カネ余り 借金、政府に偏在。経済対策、五輪後も 景気リスクに備え。駆け込み「前回より小幅」 9月消費額9.5%増 家電など急増 天候要因も。上場企業、2期連続で減益へ 今期最終 車・設備投資が低迷。

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11/7の日経

2019年11月07日 | 今日の日経
 アベノミクスでは、政権発足当初、円高是正を受け、消費者態度指数の各指標が急上昇し、景気の回復を強く印象づけた。この10月の雇用環境の40.6という水準は、前回増税時の2014年4月の44.4や、消費増税再延期の表明前の2016年2月の42.2を下回り、アベノミクスでの最低記録を前月に続き更新するものである。前回増税時はV字で戻し、再延期の表明後は緩やかに回復したのであるが、さて、今回は、いかがか。

(図)



(今日までの日経)
 インフル大国 世界とずれ。厚生年金のパート適用、対象範囲巡り中小と攻防。駿台予備校に「AI先生」。世界経済、息吹き返す「長期停滞論」。
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アベノミクス・駆け込みなければマイナス成長

2019年11月03日 | 経済(主なもの)
 9月の経済指標が出て、7-9月期の成長率が展望できるようになったが、増税前の駆け込みを除けば、外需が弱いこともあって、基調はマイナス成長の様相を呈している。そこへ消費増税で内需圧殺に動き、天災も重なっており、10-12月期は、反動減だけでなく、深刻な事態になりそうだ。民需が崩れる中、外需は低迷、景気後退は雇用にまで及び、三度、やらずもがなの消費増税の災厄に見舞われる。そして、今回も経済対策がバラまかれ、「成長力」の強化が試みられることになる。

………
 9月鉱工業出荷の資本財(除く輸送機械)は、前月比+8.9の異様な増加を見せた。7,8月平均は前期を下回る水準にあったのに、9月が加わったことで、7-9月期の前期比は+3.0に伸びた。これは設備投資を示すものなので、おそらく、GDPの設備投資は4-6月期を超える好調ぶりを示すことになろう。もちろん、9月の異様な伸びは、前回の増税時にも見られた駆け込みと考えられ、これがなければ、前期を下回るマイナスの様相にある。

 設備投資については、もう一つの柱である企業の建設投資も、全産業活動指数を見る限り、既にピークアウトしていて、非製造業での設備投資も頼りにならず、ソフトウェアや研究・開発が堅調にあるとしても支え切れない。今後の資本財(除く輸送機械)は、生産予測は上振れしているものの、前回増税時と同様、2,3か月は反動減が出ると思われ、むしろ、成長の足を引っ張ることになろう。

 消費に関しては、9月に大きな駆け込みがあったことは、言うまでもない。そのため、7-9月期は、高い伸びになって、GDPを上ブレさせることになる。しかし、内閣府・消費総合指数、日銀・消費活動指数ともに、7,8月平均の前期比はマイナスであり、9月の高い伸びによって、7-9月期が大きめのプラスになったとしても、消費の基調は、増税前にして、マイナス圏内にあると考えるべきであろう。

 こうして、設備投資と消費という内需の柱がマイナスの様相にあり、7-9月期の外需が、韓国からのインバウンドの減少が響いて、ニッセイ研の斎藤太郎さん、第一生命研の新家義貴さんともに、マイナス寄与という予想になっていることを踏まえれば、駆け込みを除く日本経済の実態は、マイナス成長であると見ざるを得ない。そこへ消費増税をして、デフレ圧力を加えるのだから、深刻な事態になると考えるのが当然なのである。

 雇用については、9月の労働力調査で、とうとう失業率が上昇するに至った。+0.2の2.4%である。特に、男性の雇用者の-33万人が大きい。既に、男性の就業者は今年の初めから頭打ち状態になっていたが、雇用者も停滞に入ったようである。9月の新規求人倍率は2.28倍と、前月比-0.17となった。2.2倍台は2年ぶりの低水準である。これにより、7-9月期の新規求人倍率は、2四半期連続の低下となった。

 産業別の求人を見ると、多くの産業で求人増加数の前年比がマイナスなのだから、当然であり、とりわけ、製造業、卸・小売業、その他サービス業での減少が目立つ。増えているのは、医療・福祉と建設業であり、ある意味、財政の緊縮の緩い部分でのみ、雇用が増していることになる。10月の消費者態度指数では、雇用環境のみが下がり続けており、アベノミクスで初の40台割れが目前だ。ここまで悪化は放置されてきたのである。

(図)


………
 日本のいつもの経済運営ではあるが、緊縮で景気を悪くして対策を打つくらいなら、初めから緊縮をしなければ良い。消費を圧殺した上で、強化される「成長力」とは、一体、何のためにするものなのか。少なくとも、国民生活を豊かにするものではない。そもそも、投資だけを高めることはマクロ経済では不自然だし、無理に高めたところで、経済を不安定するだけだ。そんな賽の河原で石を積むようなことを、ミクロと同じと信じて、犠牲を払い続けてきた。緊縮を緩めて対策を避ける無難な道は、かくも取るべくもないのか。


(今日までの日経)
 製造業、下方修正相次ぐ。減税措置でも新車販売24%減 10月。成長強化・防災で経済対策 首相、策定指示へ。日本化しないドイツの幸運。

※9月労働力調査(長期 表1 a-1) 季節調整値 雇用者 前月差 男-33万人、女+8万人

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